ツイッターの青い鳥から「X」へ、マスク氏のリブランディングは正しいのか?
ナタリー・シャーマン・ビジネス記者(ニューヨーク)

画像提供, Getty Images
米シカゴ大学のジャン=ピエール・デュベ教授(マーケティング)は、富豪のイーロン・マスク氏がツイッターの青い鳥のロゴを廃止し、アールデコ調の白黒のアルファベット「X(エックス)」にするというニュースを見た時、冗談だと思ったという。
「なぜ認知度が高く、付随する社会的価値も沢山あるブランドを手に入れたのに、それを完全に捨てて、最初から始めるのか」
「短期的にみると不可解だ」と、デュベ教授は話した。では、長期的にはうまくいくのだろうか。
昨年のマスク氏による買収以来、ツイッターは難問山積だ。
マスク氏は今月、ツイッターの広告収入が半分に減ったことを明らかにした。マスク氏が認証マークの取り扱いやコンテンツ・モデレーション(監督・管理)などで行った変更を憂慮し、大手ブランドが撤退したためだ。突然の人員整理や未払いの経費なども、ネガティブな報道や訴訟につながった。
ツイッター株を保有する投資会社フィデリティーの推計では、現在のツイッターの価値は、昨年10月にマスク氏が買収した440億ドルの3分の1程度になっているという。
コンサルタント会社ブランド・ファイナンスの推計では、ツイッターのブランド価値は昨年から32%下がって39億ドル相当だった。同社は下落の原因を、マスク氏の「攻撃的なビジネスアプローチ」としている。
リブランディングの是非
米ネブラスカ大学オマハ校のジャオ・ヤンフイ教授(マーケティング)は、研究では、企業が問題を抱えていたり方針を変えたい場合、リブランディングが功を奏する場合もあると話す。
ジャオ教授が上場企業215社のリブランディング発表を調べた結果、半数以上が前向きな結果を手に入れているという。
マスク氏は、ツイッターを中国の「微信(ウィーチャット)」のような「スーパーアプリ」にしたいと考えている。微信はメッセージアプリとソーシャルメディアが組み合わさっており、さらに、送金やタクシーの配車、ホテルの予約、ゲームといった多様な機能が付いている。
マスク氏は同種のアプリを目指しているだけに、今回のブランド変更はそれに向けて、時宜にかなった施策だったという結果につながる可能性もあるとジャオ教授は言う。
教授はBBCの取材に対し、「これはツイッターの戦略的方向転換において必要なリブランディングだ」と、電子メールで回答した。
一方で、企業が混乱のさなかにある時にはリブランディングは成功しづらいと、米ボストン大学のシュバ・スリニヴァザン教授(マーケティング)は指摘する。
特に、フェイスブックやインスタグラムを運営するマーク・ザッカーバーグ氏の新たなSNS「Threads(スレッズ)」など、競合他社がツイッターの役割を果たそうと躍起になっていることを考えると、特にリスクの高い行動だという。
「多くのツイッター利用者は、自分たちにおなじみのツイッターは、マスク氏による買収で終わってしまったと恐れてきた。今回のリブランディングは、その懸念を確認するものになりそうだ」と、スリニヴァサン教授は述べた。
加えて、ツイッターが抱える諸問題が、リブランディングで解決できるのかもはっきりしない。問題の多くは、マスク氏が原因だからだと、デュベ教授は指摘する。
「ブランドやブランド・アイデンティティーにはそれほど問題はなく、むしろ経営トップの問題の方が大きかったと思う」と、デュベ教授は話す。
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マスク氏は5月、風刺サイト「The Babylon Bee」のインタビューで、ツイッターのブランド変更について予告していた。マスク氏はそこで、ツイッターを短文投稿サイト以上のものにするには、「ツイッターのブランディングを広げる」ことが必要だと思っていると語った。
しかし、このビジョンが成功する可能性は低いと考えているアナリストもいる。
コンサルタント会社フォーレスター・リサーチは6月、「スーパーアプリへの窓は閉ざされた」という報告書を発表。欧米ではグーグルやアップルといった大手が「スーパーアプリ」のような機能を数十億人のユーザーに提供しているほか、規制上の障壁や激しい競争により、他社の参入機会は制限されていると論じた。
報告書は、マスク氏も例として挙げた微信が、中国で独占的な地位を確立できたのは、中国で競合する決済アプリが出てくるまでにさサービスを開始したことや、たとえばスマートフォンのメモリー不足で利用者が複数アプリをダウンロードしないといった技術的な問題があったことなどが、その背景にあると指摘する。
フォーレスターのマイク・プルー調査主任は、マスク氏がリブランディングを発表した後、「マスク氏のビジョンはXを『すべてのアプリ』にすることだが、それには時間、資金、そして人材が必要だ。同社はすでに3つとも持っていない」と述べた。その上で、同社は今後1年以内に閉鎖されるか、買収されるだろうとの考えを示した。
米ハーヴァード・ビジネス・スクールのアンディー・ウー教授は、メディアや政財界のツイッター利用者がこれまで通りツイッターを使い続けたとしても、「X」の成功にはさらに広範囲なユーザーベースが必要になるため、簡単なことではないと話した。
一方で、ツイッターはマスク氏の買収以前からいくつもの難問を抱えていただけに、多少のリスクを取ることは奏功するだろうと述べた。
「一連の変化が正しい方向性のものかどうかには議論の余地があるが、ツイッターには確かに変化が必要だ」と、ウー教授は述べた。









