【解説】 なぜアメリカはイランを攻撃したのか、地上部隊を送るのか、米本土への反撃はあるのか――今わかっていること

ダークスーツ姿でUSAの文字が書かれた白い野球帽をかぶったトランプ氏が、大統領印領のついた演台に向かい、マイクを前に演説している。背後には米国旗などがある

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画像説明, イランへの攻撃実施を発表するトランプ氏。動画がトゥルース・ソーシャルに投稿された
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ナーディーン・サード、ブランドン・ドレノン

アメリカがイスラエルと共に2月28日、イランに対して「大規模な戦闘作戦」を実施した。イラン国民に対し、聖職者らによる支配体制を打ち倒すよう呼びかけている。アメリカはなぜ攻撃したのか。地上部隊を送り込むのか。イランによる米本土への逆襲はあるのか。主な疑問について、わかっていることを説明する。

今回の軍事行動を、アメリカは「エピック・フューリー(壮絶な怒り)」作戦と名付けている。一方、イスラエルは「ライオンズ・ロアー(獅子の雄たけび)」作戦と呼んでいる。

アメリカのドナルド・トランプ大統領は、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師が殺害されたと発表した

攻撃の2日前には、アメリカとイランは、イランの核開発計画をめぐって間接的に協議していた。合意には至らず、協議は終了していた。

攻撃を受け、イランは中東全域で反撃を実施した。イラン外相は、アメリカとイスラエルによる「一方的で違法な」攻撃への報復だとしている。

双方の軍事行動はまだ終わっていない。以下、いくつかの疑問点について解説する。

イラン攻撃にトランプ氏は連邦議会の承認を必要としたのか

トランプ氏はアメリカとイスラエルによるイラン攻撃を動画で発表した際、「大規模な戦闘作戦」という表現を使った。

アメリカで正式な宣戦布告の権限をもつのは連邦議会だ。憲法第1条でこれが定められている。今回、議会は宣戦布告をしていない。

一方で憲法は、軍事行動の実施に関して、大統領に幅広い権限を与えている。

このグレーゾーンは最近、ワシントンで繰り返し議論されている。

アメリカとイスラエルによるイラン攻撃に対する議会の反応は、ほぼ党派に沿って割れている。現在上下両院を掌握する与党・共和党は、おおむね支持の立場だ。

同党のマイク・ジョンソン下院議長は、トランプ政権が「8人のギャング」と呼ばれる超党派の議会指導者グループに、今回の攻撃について実施前に通知していたと述べている。

一方、野党・民主党はおおかた攻撃を非難している。議会の承認なしに戦争を始めたとして、トランプ氏の行為を問題視している。

上院軍事委員会の委員を務める同党のティム・ケイン上院議員は、今回の紛争を「トランプの違法な戦争」と呼んだ。

民主党は、戦争権限決議案を議会で審議するよう改めて求めている。同様の決議案は昨年も提出されたが、共和党の支持が足りず可決に至らなかった。

もし新たに戦争権限決議案が出されて可決されれば、大統領が議会の承認なしに単独で武力を行使するのを阻止できるようになる。

しかし、そうした決議案が可決される見込みは低いと、現時点ではみられている。

支持を表明している共和党議員は、トーマス・マッシー下院議員とランド・ポール上院議員くらいしかいない。

なぜアメリカはイランを攻撃したのか

イランの首都テヘランで2月28日朝に爆発が報告されてまもなく、トランプ氏はソーシャルメディアでイランについて、「アメリカを標的とした終わりのない流血と集団殺りく」を展開してきたと非難した。

トランプ氏はまた、イランが核計画を放棄するあらゆる機会を拒み、ヨーロッパや米軍の外国基地を脅かす長距離ミサイルの開発を進めていると主張。それらは「近いうちにアメリカ本土にも到達」し得るとした。

トランプ氏はさらに、1979年にテヘランの米大使館が占拠され、アメリカ人数十人が444日間人質に取られた事件や、1983年にイランの代理組織によってベイルートの米海兵隊兵舎が爆破され、米兵241人が殺害された事件に言及した。

トランプ氏は今年1月、経済危機に直面するイランで続いた抗議行動を同国の治安部隊が弾圧した際、アメリカが介入すると宣言していた。

アメリカは昨年6月にも、イランの核関連施設3カ所を爆撃している。トランプ氏は当時、アメリカによる「ミッドナイト・ハンマー(真夜中の鉄つい)作戦」が、イランの核計画を「完全に破壊した」と述べた。

この攻撃により、イランとイスラエルの「12日間戦争」は停戦へと向かった

イスラエルはこの軍事行動で、イランの核施設、軍事施設、インフラ施設に空爆を実施。イランは報復として、何百ものロケット弾とドローンをイスラエルに向けて発射した。

イランの政権幹部は何人殺されたのか

市街地の衛星写真、中央の建物群が黒く焼けている

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画像説明, 破壊されたイラン最高指導者の邸宅を捉えた人工衛星画像(1日、テヘラン)

トランプ氏はソーシャルメディアで、イランの最高指導者ハメネイ師が死亡したと発表。彼を「歴史上最も邪悪な人物の1人」と呼んだ。

イラン国営テレビもその後、ハメネイ師の死亡を報じた。そして、40日間の服喪期間に入ると告げた。イランを1989年から統治してきたハメネイ師は86歳だった。

トランプ氏は米FOXニュースに、今回の作戦でイランの政権幹部48人が殺害されたと話した。

BBCヴェリファイ(検証チーム)が入手したテヘラン上空から撮影された衛星画像では、テヘランにあるハメネイ師の事務所の一部が深刻な損傷を受けたことが見て取れる。

動画説明, イラン国営テレビの司会者、最高指導者ハメネイ師の死去を涙ながらに発表

米軍はイランに地上部隊を送り込むのか

アメリカは中東の13カ所ほどに軍事基地をもち、通常3万~4万人の兵士を配置している。

だが、イラン国内に米軍の戦闘部隊を展開する兆候は全くみられない。米国民の間で地上侵攻への支持が低いことが、その最たる理由となっている。

米軍はここ数週間、中東での存在感をいちだんと強めてきた。空母「ジェラルド・R・フォード」と「エイブラハム・リンカーン」の2隻を展開している。

BBCヴェリファイは、米軍の艦船12隻と、F-35およびF-22戦闘機、給油機、偵察機など多数の米軍機が中東海域に展開しているのを確認している。

しかし、米軍の軍事行動は、これまでのところ空爆にとどまっている。

イランにアメリカを攻撃する能力はあるのか

イラン政権はこれまでずっと、核兵器は望んでいないと主張してきた。たが、原子力発電の民生利用を超えるレベルまでウランを濃縮していると、BBCのジェレミー・ボウエン国際編集長は伝えている

ただ、イランが近いうちに核爆弾を製造するとの証拠は、イスラエルもアメリカも一切示していないと、同編集長は付け加えた。

アメリカ本土への攻撃が差し迫っているとする公の報告は出ていない。だが、地方自治体の当局は警戒態勢を強化している。

ニューヨーク市のゾーラン・マムダニ市長は、緊急事態管理当局が慎重を期して、「特別に注意が必要な場所」で「予防的措置」を取っていると述べた。

西海岸ロサンゼルス市のキャレン・バス市長も、「現時点で現実的な脅威は確認されていない」としつつ、警察によるパトロールを強化していると話している。