イランの抗議デモ、死者約650人に上ったと人権団体 「治安部隊は殺し続けた」と目撃者

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イランで続いている反政府デモをめぐり、人権団体は12日、当局の弾圧で殺害された人がこれまでに少なくとも 648 人に上っていると発表した。報道が規制されていることなどから現地の状況は不透明なままだが、BBCに寄せられた証言からも、死傷者が増えていることがうかがえる。
ノルウェーに拠点を置く人権団体「イラン・ヒューマン・ライツ」は、648人の中には18歳未満の9人も含まれていると説明した。実際の死者数はもっと多い可能性があるという。
イランでは通信が全国的に遮断されており、情報の確認が困難になっている。BBCを含む外国の報道機関は、イランで自由な取材が認められておらず、国外で活動するイランの人権団体の情報に頼っている。
イランの情報筋や目撃者の間では、各地の都市で極めて大勢が殺害されており、死者は計数百人から数千人に上るという声も出ている。
イラン当局はこれまでのところ、抗議行動の参加者の死者数について、公式発表も透明性のある情報提供もしていない。
治安当局側の死者については、イランのメディアは約100人と報じている。同国メディアは抗議者らを「暴徒」と呼び、さまざまな都市で数十のモスク(イスラム教礼拝所)や銀行に放火したと伝えている。
「残忍な政権と素手で戦っている」
BBCには、先週の全国的な抗議行動の後に行われた治安部隊による弾圧について、証言が寄せられている。
「私はこの目で見た。(治安部隊が)抗議者らの列に直接発砲し、立っていた人たちがその場で倒れた」
40代前半のオミドさん(仮名)は、身元が知られることの恐怖から、声を震わせて話した。
BBCは彼の身の安全のため、名前を変えている。南部の小都市で暮らす彼は、経済的な生活苦が悪化しているため、ここ数日、通りに出て抗議しているという。
オミドさんによると、武器を持たない抗議者らに向けて、治安部隊がカラシニコフ型の自動小銃で発砲したという。
「私たちは素手で残忍な政権と戦っている」
昨年末に始まった各地の抗議デモは、12日目の今月8日、これまでで最大規模のものに膨らんだ。首都で暮らす若い女性は、「テヘランの中心部から離れた地区でさえ抗議者でいっぱいだった」とし、この日を「審判の日」のように感じたと話した。
「金曜日(9日)になると、治安部隊が殺しまくった。私は自分の目でそれを見て、体調が悪くなり、完全にやる気を失った。金曜日は血まみれの一日だった」
この女性によると、この日以降、住民は外出を恐れ、大勢が路地や家の中で抗議のかけ声を唱えているという。
女性はまた、テヘランは戦場と化しており、抗議者らと治安部隊が通りで陣取ったり、身を隠したりしていると話した。
「戦争では双方が武器を持っている。ここでは人々がかけ声を上げるだけで殺されている。一方的な戦争だ」
テヘランのすぐ西の都市ファルディスの住民らによると、イスラム革命防衛隊(IRGC)傘下の準軍事組織バシジ部隊のメンバーらが9日、警察が街頭からいなくなってから突然、抗議者らを攻撃したという。
目撃者らによると、制服を着てオートバイに乗った戦闘員たちが、抗議者たちに実弾を発砲したという。所属不明の車が路地に入り込み、車内の複数人が抗議行動と無関係の住民たちに発砲することもあったという。
目撃者の1人は、「どの路地でも2、3人が殺された」と話した。
BBCペルシャ語に証言を寄せた人々は、イランの現実は外部からは想像しがたいものだと述べている。また、国際メディアが報じている死者数については、自分たちの推定と比べると一握りでしかないと話す。
現地の看護師や医療関係者らは、多数の死体や負傷者を見たとBBCに話した。それによると、多くの都市で病院は重傷者らに対応し切れていない。けが人は頭部や目を負傷した人が多いという。遺体は「積み重ねられ」、家族に引き渡されていないと話す人もいた。

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多数の遺体が映っている動画も
通信アプリのテレグラムの活動家らが運営するチャンネル「ヴァヒド・オンライン」には11日、生々しい動画が掲載された。
テヘランのカフリザク法医学診断研究所で撮影された動画では、施設内や外の道路に、黒い袋に入れられた多数の遺体が置かれ、多くの家族が嘆き悲しんだり、遺体の身元を確認しようとしている。
別の動画には、倉庫の中に数体の遺体が入っているのが映っている。人々がトラックから死体を運び出している場面の動画もある。
第2の都市マシュハドの墓地の職員によると、9日の夜明け前に、頭部が激しく損傷した遺体が180~200体運び込まれ、すぐに埋葬されたという。
北部の都市ラシュトの情報筋はBBCペルシャ語に、8日に抗議者70人の遺体が市内の病院の霊安室に移されたと話した。治安部隊は遺体を家族に引き渡す前に、「銃弾の代金」を要求したという。
テヘラン東部の病院の医療スタッフは、8日に約40人の遺体が運び込まれたとBBCペルシャ語に話した。医療関係者の安全のため、BBCは病院名を伏せている。

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国連のアントニオ・グテーレス事務総長は11日、「イラン当局がここ数日、抗議者らに対して暴力と過剰な武力行使を行い、死者や負傷者が出ているとの報告に衝撃を受けている」と述べた。
イランの人権状況に関する国連特別報告者の佐藤舞さんは、「死者の数にかかわらず、治安部隊による殺傷力の行使は問題だと強調したい」と、BBCペルシャ語に話した。
アメリカのドナルド・トランプ大統領は11日、イランに介入するための「非常に強力な選択肢」を検討していると述べた。同大統領はこれまでも、抗議者が殺害された場合は行動を起こすと警告している。
トランプ大統領の発言を受け、イラン最高指導者アリ・ハメネイ師は、アメリカが「偽り」に満ちているとし、「裏切り者の雇い兵」を頼りにしていると非難。同時に、国が組織した政府支持の集会をたたえた。
イラン国営メディアによると、イラン当局はアメリカとイスラエルが問題をあおっているとし、「テロリストの行動」を非難している。












