米アンソロピック社のAI、トランプ氏が連邦政府全体で使用停止を命令へ 国防総省の使用めぐり対立

屋外に立つトランプ氏。手に、「アメリカ湾」と書かれたキャップを持っている

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画像説明, テキサスに到着したトランプ氏(27日、テキサス州コーパスクリスティ)
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ケイリー・ヘイズ・テクノロジー記者、リリー・ジャマリ北米テクノロジー編集委員

ドナルド・トランプ米大統領は27日、米企業アンソロピックの人口知能(AI)技術について、使用を直ちに停止するよう連邦政府の全機関に指示すると述べた。

「必要としていないし、望んでもいないし、二度と彼らと取引をしない!」と、トランプ氏は自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に書いた。

アンソロピック社のツールは今後6カ月の間に、政府業務から段階的に排除されると、トランプ氏は述べた。

アンソロピック社は、戦場および国内の治安対策において自社のAIツールをどう使うか、誰が決めるのかをめぐり、トランプ政権との対立に巻き込まれている。

トランプ氏の最新のコメントに先立ち、国防総省はアンソロピック社に対し、同社のAIツールへのアクセスを無制限に認めるよう要求し、回答期限を設けていた。大統領は、この期限の直前にコメントした。

アンソロピック社のダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)は26日、自社の技術が大規模監視や完全自律型兵器に使われる恐れがあるとして、政府のそのような要求には屈しないと述べていた。

ペンタゴン(国防総省)が設けた期限が迫る中、トランプ氏はトゥルース・ソーシャルに次々と投稿。「(アンソロピックは)態度を改めて、段階的に使用停止していく期間中、こちらに協力した方がいい。でなければ私は大統領として全権力を使って従わせるし、その後には重大な民事と刑事上の影響が及ぶ」と書いた。

トランプ氏のこの表明に先立ち、アンソロピックは国防総省が同社ツールの使用停止を選んだ場合、「別のプロバイダーへの円滑な移行の実現ために取り組む」と述べていた。

トランプ氏はさらに、アンソロピックが「ウォーク」だと書いた。「ウォーク」(woke)とは、差別や格差などの社会問題を意識する傾向を指す言葉。

トランプ氏はアンソロピックについて重ねて、「本当の世界がどういうものか、全く分かっていない連中が運営する、手に負えない急進左派のAI企業」だと非難した。

アンソロピックは2024年以降、アメリカ政府と米軍に使用されてきた。

同社はコメント取材のメールに、すぐには返答しなかった。

トランプ氏による27日の発表に先立ち、政府に対するアンソロピックの姿勢には支持も寄せられていた。

とりわけ、米オープンAIのサム・アルトマンCEOは、ライバル企業のアモデイCEOを支持すると態度を明確にした。アルトマン氏はスタッフにメモを送り、自社製品の利用に関して、自分も同じ「超えてはならない一線」を設けていると述べた。

BBCが確認した社内メモでアルトマン氏は、オープンAIの防衛関連契約でも、「国内監視や自律型攻撃兵器のような、違法な用途や、あるいはクラウド展開に適さない用途」を拒否すると書いている。

テック業界に長年関わってきたアモデイ氏は、オープンAI設立初期の社員として注目された。その後は、アルトマン氏との意見対立などを経て、オープンAIの社員数人と共にアンソロピックを設立した。

オープンAIとアンソロピックは現在、AIチャットボットやエージェントなどのツールを進化させながら、ユーザーや企業顧客の取得を競い合っている。

アルトマン氏は社内メモで、「今の事態に何がどうしてこうなったのか、完全には理解していない。アンソロピックがペンタゴンやパランティア(・テクノロジーズ)との元々の契約を、どうしてああいう形にしたのかも分からない」と書いている。

「だが、どういう経緯だったにしても、これはもはやアンソロピックと戦争省の問題だけではない。これは業界全体の問題で、私たちの立場を明確にすることが重要だ」とも、アルトマン氏は書いた。

トランプ政権は、国防総省を戦争省と呼んでいる。

紫色の背景の前、檀上で座りマイクを手に他の登壇者に向かって話しているアモデイ氏。黒い巻き毛で、スーツ姿に眼鏡をかけている

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画像説明, インドで開かれたAIの影響に関するサミットに出席した、アンソロピックのアモデイCEO(19日、ニューデリー)

27日朝には、アマゾン、グーグル、マイクロソフトで働く約70万人を代表する労働者団体が、自分たちが働く各社に対し、ペンタゴンの要求に「従うことを拒否する」よう求める公開書簡に署名した。

「テック労働者は、雇用主が戦争ビジネスに関わるべきではないという立場で一致している」と、アルファベット労働組合の選出執行委員会は別の声明で述べた。

ピート・ヘグセス国防長官は24日、アモデイCEOを首都ワシントンに呼んで面会。アンソロピックが同省に対し、「あらゆる合法な使用」について自由裁量を与えるよう要求し、同社がそれを拒否した場合は――として、互いに矛盾する2つの最後通告を突きつけた。

ヘグセス長官は、同社が拒否した場合は国防生産法を発動し、政府がアンソロピック製品を自由に使えるようにすると述べた。同時に、アンソロピックを「サプライチェーン上のリスク」とみなし、政府利用には適さない、安全ではない企業と認定すると述べた。

アモデイCEOは26日、このような脅しに屈するよりは、ペンタゴンとの協力を停止する方がましだと述べた。

トランプ氏は27日、両氏のやりとりについて言及しなかった。しかし、ヘグセス氏はソーシャルメディア「X」で、アンソロピックを「直ちにサプライチェーンのリスクに指定するよう戦争省に指示」し、それに伴い米軍と取引するあらゆる企業は「アンソロピックとの商業活動を一切禁止される」と書いた。

アメリカ政府が国内企業を「サプライチェーンのリスク」と判断するのは、これが初めてのもよう。

匿名を条件にBBCの取材に応じたに国防総省の元高官は、アンソロピックの方が優位に立っているように見えると述べた。

「これは(アンソロピックにとって)素晴らしい宣伝だし、あの会社は別に(米政府からの)金を必要としていない」

アンソロピックのペンタゴンとの契約は、2億ドル規模の契約の一部。今月初めに公表された同社の直近の時価総額は、現在の収益と将来の期待利益に基づき3800億ドルとされた。

国防総省の元高官はさらに、同省が国防生産法やサプライチェーン・リスクを根拠にアンソロピックを脅しているその主張の内容は「実に薄っぺらいもの」だと述べた。