エプスティーン元被告の資料、新たに数百万点公開 何がわかったのか

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アメリカの司法省は30日、性犯罪で有罪とされた富豪ジェフリー・エプスティーン元被告(故人)に関する資料数百万点を新たに公開した。昨年に法律に基づき政府に公開が義務付けられて以降で最大規模の資料公開となった。
公開されたのは、文書約300万ページ、画像約18万点、動画約2000点。
元被告関連の資料をめぐっては、すべて公開するよう義務付ける法律がドナルド・トランプ大統領の署名を経て成立している。公開の期限はすでに6週間過ぎている。
司法省のトッド・ブランチ副長官は、「今日の公表によって、米国民に対する透明性と法令順守を確実にするための、非常に包括的な文書の特定と審査のプロセスは終了となる」と述べた。
今回の資料ファイルには、エプスティーン元被告の拘束施設での様子や、精神鑑定書、拘置所での死亡などの詳細が含まれている。元被告の共犯者で、未成年者の性的人身売買などで有罪となり、禁錮20年の刑で収監されているギレイン・マックスウェル受刑者に関する捜査記録もある。
エプスティーン元被告が著名人らとやりとりした電子メールも含まれている。
これら多くのメールや文書は10年以上前にさかのぼり、法的トラブルの最中にあった元被告の人間関係を示している。元被告は2008年、未成年者に性行為を勧めたとして有罪とされ、性犯罪者として登録された。2019年7月に未成年者の性的人身取引の罪で起訴され、その翌月、裁判を待つ間にニューヨークの拘置所内で死亡した。
「公爵」をロシア女性に紹介
公開された文書からは、エプスティーン元被告がイギリスのエリートらと密接な関係にあったことがわかる。
文書の中には、元被告と「公爵」と呼ばれる人物が、「プライバシーがたくさん」あるバッキンガム宮殿で夕食をとることについて相談しているメールもある。この「公爵」は、元被告との関係が批判される中でヨーク公爵の称号を返上した英王室メンバーのアンドリュー・マウントバッテン・ウィンザー氏とみられる。同氏はその後、「王子」の称号もチャールズ国王によって剥奪(はくだつ)されている。
別のメッセージでは、元被告は「公爵」に、26歳のロシア人女性に紹介すると申し出ている。
それらのメールには「A」という署名や、「HRHヨーク公爵KG」と読める署名が付けられている。交信されたのは2010年8月で、元被告が未成年者を勧誘した罪を認めた2年後のことだった。HRHは「His Royal Highness(殿下)」、KGはイギリスの最高勲章である「ガーター勲章の騎士」を指す。いずれの呼称・称号も現在は剥奪されている。
メールでは、不正行為があったことは示されていない。
BBCはアンドリュー氏にコメントを求めた。同氏に対しては長年、元被告との交友関係をめぐる調べが行われてきたが、同氏は繰り返し、一切の不正行為を否定している。
今回公開されたメールの一部は、元被告とアンドリュー氏の元妻サラ・ファーガソン氏との間でやり取りされたものとみられる。
2009年4月4日付のメールには、「愛を込めて、赤毛のサラより!!!」と署名されていた。
また、彼女が米パームビーチに行く予定で、お茶を飲みたいと書かれていた。メールではその後、ファーガソン氏の会社「マザーズ・アーミー」のアイデアについて話し合っている。同氏は元被告を「私の親愛なる、素晴らしく特別な友人、ジェフリー」と呼んでいる。
ファーガソン氏はまた、元被告を「レジェンド」と呼び、「私はあなたをとても誇りに思っている」と書いている。
このメール交換された当時、元被告は2008年の有罪評決により、まだ自宅で監禁された状態にあった。
元駐米英大使の夫に送金
他のメールでは、エプスティーン元被告が2009年に、英労働党の重鎮ピーター・マンデルソン卿の夫レイナルド・アヴィラ・ダ・シルヴァ氏に1万ポンド(現在のレートで約210万円)を送ったとされている。マンデルソン卿とダ・シルヴァ氏は2023年に結婚した。
ダ・シルヴァ氏は元被告へのメールで、オステオパシーの講習費用を示し、自らの銀行口座を伝え、「あなたからの、私への支援すべてに」感謝するとしている。
元被告は数時間後に、融資として送金すると返信。ダ・シルヴァ氏は翌日、感謝の返事を送っている。
別のいくつかの電子メールでは、マンデルソン卿が、元被告が所有する建物の一つに滞在することを願い出ている。
これらのメールは、元被告が18歳未満の者に売春を勧誘した罪の刑に服していた2009年6月16日以降のものだった。元被告は刑期の大部分で、昼間はオフィスで仕事をし、夜に刑務所に戻ることが許されていた。
マンデルソン卿は2024年12月、駐米英大使に任命された。しかし、1年もたたないうちに、有罪とされた元被告を応援するメッセージを送っていたことが明らかになり解任された。
マンデルソン卿は、元被告との交友を後悔していると繰り返し述べている。また、元被告と一緒にいた時に不正行為は目にしなかったとし、「彼のうそにだまされた」としている。
トランプ氏について何百回も言及
新たに公開された資料ファイルでは、トランプ氏の名前が何百回も出てくる。トランプ氏はエプスティーン元被告と交友関係があったが、何年も前に険悪になったとしている。また、元被告の性犯罪については一切知らないとしている。
今回の公開資料には、連邦捜査局(FBI)が全国の脅威対策センターに寄せられたトランプ氏に関する告発を、昨年まとめたリストが含まれている。その多くは、センターが受けた未確認の情報に基づくもので、裏付けとなる証拠もないとみられている。
リストには、トランプ氏やエプスティーン元被告、他の著名人らを性的虐待で告発するものも多数ある。
トランプ氏は一貫して、元被告との関係において一切の不正行為を否定している。元被告の被害者らから、犯罪に関わっていたと指摘されたこともない。
ホワイトハウスと司法省は、今回の資料公開で明らかにされた内容について問われると、資料ファイルに添付された報道発表の一節を読むよう促した。
司法省はその報道発表で、「文書の中には、2020年の選挙直前にFBIに提出された、トランプ大統領に対する事実無根でセンセーショナルな主張が含まれている」、「明確にしておくが、それらの主張は根拠がなく虚偽だ。もしわずかでも真実性があるのなら、すでにトランプ大統領に対する武器として使われているはずだ」としている。
「ワイルドなパーティー」はいつかとマスク氏
今回の文書には、テクノロジー業界の富豪イーロン・マスク氏とエプスティーン元被告のメールのやり取りも含まれている。
マスク氏は、元被告の事件に絡んで不正行為に問われたことはない。同氏は以前、元被告が所有する島に招待されたが、断ったと述べている。
公開されたメールは、マスク氏が複数回、その島への旅行について話し合っていたことを示している。2012年に提案された旅行については、マスク氏は元被告に「あなたの島で最高にワイルドなパーティーは、どの日/夜なのか?」と尋ねている。
2012年11月のメールでは、元被告がマスク氏に、島までヘリコプターで何人を送迎する必要があるか聞いている。マスク氏は、自分と当時の妻のタルラ・ライリー氏だけだと答えている。
2012年のクリスマスのメールでは、マスク氏は「羽を伸ばす」必要があると書き、元被告にパーティーの計画があるか問い合わせている。
マスク氏は、「今年は正気の限界まで働いた。クリスマス後に子どもたちが帰ったら、セント・バーツかどこかでパーティーシーンに飛び込んで羽を伸ばしたい」と記している。また、「島での平穏な体験」は自分が求めるものとは正反対だと付け加えている。
2013年末の別の一連のメールでは、マスク氏と元被告が、元被告の島への訪問について協議し、日程や手配に関して話している。
マスク氏が実際に元被告の島を訪れた証拠は存在しない。
BBCは今回の新たなメールについて、マスク氏が関わる各企業の広報担当に取材を申し込んでいる。
ゲイツ氏は「ばかげていて虚偽の」主張だと
今回公開された資料には、米マイクロソフト共同設立者のビル・ゲイツ氏が性感染症にかかったなどとする生々しい内容のものもある。同氏の広報担当は、「まったくばかげており、完全に虚偽だ」としている。
2013年7月18日付の2通のメールは、エプスティーン元被告が下書きしたとみられるが、実際にゲイツ氏に送られたかは不明だ。どちらも元被告のアカウントから送信され、同じアカウントに戻っている。ゲイツ氏に関連するアカウントは確認できず、2通とも署名は付いていない。
そのうちの1通は、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団からの辞任表明として書かれている。「ロシア人女性たちとのセックスの結果に対処するために」ゲイツ氏に薬を調達しなければならなかったと不満を述べている。
もう1通は「親愛なるビルへ」で始まり、ゲイツ氏が友人関係を終わらせたことへの不満を表明している。そして、ゲイツ氏が性感染症について隠蔽(いんぺい)を図ったと、さらなる主張を展開。その中には、当時の妻メリンダ氏からのものも含まれているとしている。
ゲイツ氏の広報担当はBBCに、「こうした主張は、証明済みの、不満を抱えたうそつきによるものであり、まったくばかげており、完全に虚偽だ」と述べた。
また、「これらの文書が示しているのは、ゲイツと継続的な関係を築けなかったことに対するエプスティーンのいら立ちと、(ゲイツ氏を)陥れ、中傷するために彼(元被告)がどこまでやるかということだけだ」とした。
ファイルはすべて公開されたのか
エプスティーン元被告の関連資料の公開がこれで終わりなのかは不明だ。
ブランチ司法副長官は、今回の公開で「非常に包括的な文書の特定と審査のプロセスは終了となる」と説明。司法省の仕事が終わったことを示唆した。
しかし、野党・民主党は、同省が適切な理由もなく、あまりにも多くの文書を非公開にしてきたと主張し続けている。また、そうした文書は、約250万点に及ぶ可能性があるとしている。
与党・共和党のトーマス・マッシー下院議員と共に「エプスティーン・ファイル透明化法」を主導した民主党のロー・カンナ下院議員は、「司法省は600万ページ以上を特定したとしているが、調査と編集の末に公開しているのは約350万ページに過ぎない」と、懸念を表明した。
「なぜその他が保留されているのか疑問だ。私が要求してきたものが公表されるか、これからもしっかり見ていく」
昨年11月に議会で可決され成立した「エプスティーン・ファイル透明化法」は、資料ファイルのすべてを昨年12月19日までに公開するよう政府に義務付けた。司法省はこの期限を守らず、厳しい目が向けられていた。
今回公開された文書の多くには、大幅な削除がみられる。法律では、被害者や捜査が進行している情報を保護する目的に限って、削除が認められるとなっている。削除した場合は、内容の要約と法的根拠を示すよう義務付けられている。
ブランチ氏は、削除は被害者保護が目的で、司法省は職員数百人が2カ月以上かけて文書を精査し、迅速な公開を確実にしたと述べた。
それでも、この物語が終わりを向けたのかはまだわからない。
トランプ氏の支持層を含む大勢が長いこと、エプスティーン元被告とつながりのある金持ちや権力者を守る陰謀があると考えている。
ブランチ氏は、これらの文書の公開が、もっと多くの情報を求める思いを満たすものではないことを認めている。一方で、資料ファイルには、女性たちを虐待した男性らの名前は含まれておらず、もし司法省がそれらの名前をつかんでいれば、起訴しただろうとし、こう述べている。
「世間やあなた方が、エプスティーン・ファイルの中から、女性を虐待した男性を特定できるとは、残念ながら思わない」
取材協力:クワジ・ギャムフィ・アシエドゥ氏、ジャック・フェンウィック氏、チ・チ・イズンドゥ氏











