グリーンランドめぐる「将来的合意の枠組み」とは どういう形があり得るのか

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ポーリン・コーラ
アメリカのドナルド・トランプ大統領は21日、デンマーク自治領グリーンランドをめぐり「将来的な合意の枠組み」があると発表した。
トランプ氏は北極圏にある世界最大の島グリーンランドをアメリカが領有する必要があると繰り返し、武力併合も排除していなかっため、緊張が高まっていた状況での発表は、大方の意表を突いた。デンマークは北大西洋条約機構(NATO)加盟国。
では、この合意には何が含まれるかもしれないのか。主権を放棄しないと明言しているデンマークとグリーンランドにとって、受け入れ可能な内容なのだろうか。
トランプ大統領は、スイス・ダヴォスで開かれた世界経済フォーラム年次総会での協議後に、合意について発表した。自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、「NATOのマルク・ルッテ事務総長との非常に生産的な会合に基づき、グリーンランド、そして実際のところ、北極圏地域全体に関して、将来の合意の枠組みを形成した」と述べた。
詳細については明らかにせず、合意に向けた協議は継続するとした。
ルッテ事務総長は、トランプ大統領との会談で、グリーンランドに対するデンマークの主権という核心的な問題については議論していないと述べた。
デンマークのメッテ・フレデリクセン首相は、デンマーク人は何についても交渉できるが「自分たちの主権については交渉できない」と述べた。
これに同調する形で、グリーンランド自治政府のイェンス=フレデリク・ニールセン首相は、自分たちの主権は「レッドライン(決して超えられない一線)」だと述べた。しかもニールセン首相は、協議されている合意の詳細を把握していないと話した。
詳細は? 選択肢は?
米紙ニューヨーク・タイムズは、匿名の当局者の話として、デンマークがグリーンランドのいくつかの小規模地域の主権を譲り渡し、そこにアメリカが軍事基地を建設する案が検討された可能性があると報じた。
この案は、キプロスが1960年に独立した後も、領内にイギリス主権下の基地領域があることと似た取り決めかもしれないと、同紙は説明している。
ただし、デンマークとグリーンランドの双方が主権の放棄を拒否した場合に、この方式がどのように適用され得るのかは不明だ。
トランプ大統領は、グリーンランド取得を正当化する理屈として、中国やロシアの艦船が同島周辺に出没している脅威を指摘してきた。しかし、デンマーク側は「現時点」でそのような脅威は存在しないとしている。
この点についてNATO加盟諸国はアメリカに対し、北極圏の安全保障を強化する姿勢を強調し、安心させようとしてきた。ルッテ事務総長も、合意の枠組みにはそうした貢献が含まれる必要があると述べた。
「このことは、かなり早く実現できると確信している。2026年中、できれば2026年初頭になることを期待している」と、ルッテ事務総長は22日に述べた。
イギリスのイヴェット・クーパー外相は、「NATOがバルト海で(艦船監視強化のため)進めてきた『バルティック・セントリー(バルト海の哨戒)』と非常によく似た方法」で、「アークティック・セントリー(北極圏の哨戒)」の創設を、イギリスとして提案していると述べた。

「所有」未満でトランプ氏は満足するのか?
デンマークとの1951年の協定により、アメリカはグリーンランドに望むだけの部隊を派遣できる。すでに同地域の北西端にあるピトゥフィク基地には、100人以上の米軍要員が恒常的に駐留している。
このため複数の米当局者によると、合意に向けた協議は、すでにあるこの協定の再交渉が中心になる可能性があるという。
ただし、トランプ大統領が繰り返してきた「グリーンランドを所有する」という主張が交渉に影を落としている。
仮にトランプ氏の意向が通ったとして、主権に関するレッドラインを越える必要があるだけでなく、グリーンランドで土地の売却を禁じる憲法上の規定をどう回避するかという問題も生じる。
一つの例として挙げられるのが、キューバのグアンタナモ湾にある米海軍基地だ。この基地は1903年以降、恒久的な賃貸契約のような形でアメリカが全面的に管理している。
トランプ氏がダヴォスで武力併合の脅しを撤回し、NATO加盟諸国を安心させた方針変更の背景に、こうした選択肢があったのかは不明だ。
NATOは1949年、一つの同盟国への外部からの攻撃は全ての加盟国への攻撃と見なすという原則のもとで創設された。アメリカはNATOで特に重要な位置を占める。そしてデンマークは、同盟国が他の同盟国に軍事攻撃を加える事態になれば、それはNATOの終わりを意味すると明言していた。
トランプ大統領の「枠組み」発表が、ルッテ事務総長との会談後に行われたことから、グリーンランドでは、自分たちの将来が当事者不在のまま協議されているのではないかとの懸念も出ている。
グリーンランド自治政府のヴィヴィアン・モッツフェルト外相は、自分が政府から求められていたのは交渉ではなく、「レッドラインをトランプ大統領に直接伝えること」だったと話した。
ルッテ事務総長は、これについて追認していない。
ルッテ氏についてはこれまで、トランプ大統領をたびたび称賛してきたことでも批判されている。
トランプ氏はなぜグリーンランドが欲しいのか 理由は鉱物?
トランプ大統領は、ロシアや中国によるミサイル攻撃からアメリカを守るための「ゴールデン・ドーム」防衛システム構想にとって、グリーンランドが不可欠だと主張する。そして、欧州の同盟国がこの構想に協力できるとも述べている。
グリーンランドには、携帯電話や電気自動車などの技術に不可欠な希少鉱物資源が、ほとんど手つかずの状態で大量に存在している。
トランプ大統領は、アメリカがグリーンランドの豊富な天然資源そのものを狙っているとは発言していないものの、アメリカがグリーンランドを所有すれば「特に安全保障と鉱物資源の観点から、全員にとって非常に良い立場をもたらす」と述べている。













