トランプ米大統領は「犯罪行為に関与した」 スミス元特別検察官が議会証言

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ドナルド・トランプ氏に対する米連邦政府の刑事捜査を主導したジャック・スミス元特別検察官は22日、連邦議会下院の司法委員会で証言し、2021年1月6日に数百人の暴徒が連邦議会議事堂を襲撃した際の暴力について、トランプ氏に責任があると述べた。
第2次トランプ政権が発足するまでトランプ氏への捜査を指揮していたスミス氏は、下院司法委に対し、「我々の捜査は、合理的な疑いの範囲を超えてトランプ大統領が犯罪行為にかかわっていたことを立証する証拠を固めた」と述べた。
スミス氏は特別検察官としてトランプ氏を、2020年大統領選の結果を覆そうとした罪と、2021年に退任後に公文書を指摘に保持していた罪について起訴した。スミス氏はこの日の公聴会で、この2件のどちらについてもトランプ氏の有罪を確保できると考えていたと証言した。
トランプ氏は両方の事件で無罪を主張。トランプ氏が昨年1月にホワイトハウスへ復帰したのを機に、両事件の起訴は取り下げられた。
与党・共和党が主導する下院司法委は昨年12月31日、両事件についてスミス氏が委員会に非公開で行った証言の書き起こし255ページを公開していた。
それに続く22日の公聴会は約5時間に及び、国民がこの問題についてスミス氏の発言を直接聞く最初の機会となった。
公聴会では、議員からの質問でも新事実はほとんど出なかった。共和党議員は、トランプ氏を起訴したことは党派的な攻撃だと主張。スミス氏が一部共和党議員の通信記録に対する召喚状を請求し、共和党議員を盗聴していたという、かねての非難も繰り返した。一方、野党・民主党の議員たちは、1月6日の暴動をめぐるトランプ氏の不正行為疑惑を追及し、スミス氏とその捜査を称賛した。
以下は、公聴会の要点――。
スミス氏はトランプ氏への起訴を後悔していない
スミス元特別検察官は、重罪2件でトランプ氏を起訴したことを後悔していないと下院司法委に述べた。
「我々の捜査は、合理的な疑いの範囲を超えて、トランプ大統領が犯罪行為にかかわっていたことを立証する証拠を固めた。同じ事実関係に基づいて今日また、大統領経験者を起訴すべきか尋ねられた場合、相手が共和党員であろうと民主党員であろうと、私は起訴するだろう」と、スミス氏は言明した。
「この国では誰も法の上に立つべきではなく、法は、彼の責任を問うよう求めていた。だから私はそうした」
スミス氏はさらに、2件の事件で有罪判決を得ることができただろう「圧倒的な証拠」を、捜査チームは収集していたと話した。
2020年大統領選の結果を覆そうとした罪について、スミス氏は「この陰謀において、圧倒的に責任が重く、最も非難されるべき人物がトランプ大統領だったと、証拠が明確に示していた」と述べた。
また、1月6日に行われた犯罪行為は、トランプ氏の利益のためだったとスミス氏は主張した。
「議事堂で起きた攻撃は、この事件の一部であって、彼抜きには起こり得なかった」、「他の共謀者たちは彼のために動いていた」とスミス氏は述べた。
トランプ氏は今後も自分を狙うとスミス氏は予想
司法委員の議員の一人は、大統領を捜査したことを理由にスミス氏自身が現政権の司法省に起訴される事態を想定しているか尋ねた。トランプ政権の司法省を率いるのは、トランプ氏と近い関係にあるパム・ボンディ司法長官。
バイデン政権下でメリック・ガーランド司法長官(当時)によって特別検察官に任命されたスミス氏は、「(トランプ)大統領にそう命じられているので、(司法省は)その実現のためにあらゆることをすると思う」と答えた。
トランプ氏がこれまでスミス氏や捜査について繰り返してきた発言は、「私への威嚇(いかく)が目的だ」とも述べ、「私は威嚇されたりしない」とスミス氏は話した。
「(トランプ氏による)一連の発言は、彼に対して立ち上がればどうなるか、警告する意味もあるのだと思う」
連邦当局は昨年夏にスミス氏に対する捜査に着手したが、具体的な捜査内容は明らかになっていない。この捜査を開始した特別検察官室には刑事訴追の権限はなく、懲戒手続きの開始や司法省への勧告しか行えない。
この日の公聴会の後、トランプ氏はソーシャルメディアに「今日の証言を踏まえれば、狂ったジャック・スミスはその行為について起訴されるべきで、そのことに何の疑問の余地もない」と投稿した。
議会襲撃について与野党議員の見解割れる

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公聴会では、議会襲撃時に議事堂を警備した警官4人(うち3人は退職)が、スミス氏の後列に座り、複数の議員が自分たちに言及するたびに、強い反応を示した。4人は近年、トランプ氏や共和党が当日の出来事をどう語ってきたかについて、強い不満を公にしてきた。
多くの共和党議員は、襲撃発生当初は議会攻撃を非難していたにもかかわらず、最近ではトランプ氏が暴徒を扇動したわけではなく、デモ参加者は違法行為をしていないと主張している。
司法委の公聴会で、共和党のトロイ・ネールズ下院議員(テキサス州)は警官4人に対し、暴動の責任は議会警察にあり、トランプ氏にはないと発言。「あなた方は当日、対応の準備ができていなかった。それは警察幹部が、あなた方に情報を共有しなかったからだ」とネールズ議員は述べ、「(警察幹部ら)の責任であって、トランプ大統領の責任ではない」と主張した。
この発言を受けて、傍聴席から同議員に向けて怒号が飛んだ。この日の公聴会では、同様に傍聴席の人たちが議員らを非難する光景が繰り返された。
議員たちはスミス元特別検察官に、トランプ氏がホワイトハウス復帰初日に、暴動に関連する罪で有罪判決を受けた、または起訴されていた1000人以上に一斉恩赦を与えたことについても質問した。恩赦の対象になった多くの人物が、警察官への暴行や職務妨害で起訴されていた。
元特別検察官は、なぜトランプ氏が恩赦を与えたのか自分には理解できないと答え、「理性的な人間なら、この者たちが将来、さらに犯罪を起こすことは分かるはずだ」と語った。
「警察官を襲った人々をなぜ大量に恩赦するのか、私には理解できない」、「理解できないし、今後も絶対に理解できない」とスミス氏は続けた。
この日の証言を終えるとスミス氏は、襲撃から議事堂を守った4人全員と握手を交わした。

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トランプ氏はまだスミス氏を注視
スミス氏が議員の質問に答えている間、世界経済フォーラム出席のためスイス・ダヴォスを訪れていたトランプ氏は、帰国中に公聴会についてコメントをソーシャルメディアに投稿した。
「狂ったジャック・スミスは、議会の前でこてんぱんにされている」(太字は原文で大文字)と、トランプ氏は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に書いた。
また、「彼の過去の失敗と不公平な訴追を取り上げた時点で、もうおしまいだった」と書き、スミス氏が「正当性を装って多くの人生を破壊した」と非難した。
「ジャック・スミスは狂った動物で、法曹の仕事をする資格はない」、「彼が共和党員だったなら、免許は剥奪され、さらにひどいことになっていただろう」とも書いた。
さらにトランプ氏は、「司法長官が彼の行為を調べているよう期待する」とし、民主党についても「この国にしたことについて、大きな代償を払うべきだ」と非難した。











