米最高裁、トランプ氏によるクックFRB理事解任に懐疑的

黒いスーツ姿で、真珠のネックレスを身につけたクック氏が斜め前方を見ている

画像提供, Reuters

画像説明, 米連邦準備制度理事会のリサ・クック理事(21日、米首都ワシントン)

アメリカのドナルド・トランプ大統領が、連邦準備制度理事会(FRB)のリサ・クック理事を解任すると異例の表明をしこれを不当としてクック氏が起こした裁判は21日、連邦最高裁で審理があり、トランプ氏が後退を余儀なくされる展開となった。

審理では、最高裁の判事らは左派から右派まで、なぜこのような影響の大きい決定を素早く進めるのかと政権側に質問。そのプロセスや、中央銀行の独立性や経済に及ぼす影響に懸念を示した。

トランプ氏は昨年8月、クック氏が住宅ローンをめぐって虚偽の申告をしたとして、FRB理事から解任すると発表した。

クック氏は、反論の適正な機会が与えられなかったと主張している。FRBを擁護する人々は、解任の理由について、トランプ氏がFRBへの支配を強めるための口実だとしている。

この日の審理では、トランプ氏が任命した保守派のブレット・キャヴァノー判事も、クック氏の主張に共感を表明。「もっとプロセスを経ることを恐れるのはなぜか」と政権側に問うた。

また、司法審査もなく、手続きも必要なく、救済措置もなく、大統領一人によって決定される理由という非常に低いハードルがあればいいという政権側の立場は、「FRBの独立性を弱め、場合によっては砕く」ことになると警告した。

同じく保守派のサミュエル・アリート判事も、「こんなにも急ぎ足で(中略)この問題全体が全員によって処理されなければならなかった理由はあるのか」と質問した。

リベラル派のソニア・ソトマイヨール判事は、「私たちは当局の独立性が非常に重要で、十分な考慮をせずにあわてて決定を出せば、その独立性を損なうと知っている」と指摘。そのうえで、クック氏の住宅ローンに関する申告が解任の理由に当たるかについて、「少なくとも下級審が最初に検討するのを待つのが、最も理にかなっていると思う」と述べた。

審理に出席したクック氏は声明で、「この裁判はFRBが、主要金利を証拠と独立した判断に基づいて設定するのか、それとも政治的圧力に屈するのかを問うものだ」と主張。

「FRBに勤務する限り、私は米国民に奉仕する政治的独立の原則を堅持する」とした。

「かなり大きなミス」

法律では、大統領は「正当な理由がある」場合に限り、FRBの理事を解任できる。

この要件は、中央銀行を政治的圧力から保護し、独立した政策決定を可能にするためにある。

ホワイトハウスは、クック氏が二つの異なる住宅を同時に主たる住宅としてローンを申請したと非難。解任の要件を満たしていると主張している。住宅ローンでは通常、銀行は主たる住宅に低めの金利を提供する。

政権側のD・ジョン・サウアー訟務長官はこの日の審理で、「うっかりミスだったとしても、かなり大きなミスだ」と主張。FRBに対する信頼を損ないかねないとし、解任理由については、裁判所は大統領に任せるべきだと訴えた。

プロセスが疑問視されていることについては、正式に解任する前にトランプ氏がソーシャルメディアでこの問題を警告していたとし、不当だとした。

「犯罪的なものは何もない」

クック氏は詐欺行為を否定している。

弁護団は昨年11月に司法省に宛てた書簡で、アラバマ州にあるアパートの住宅ローン申請書には、「主たる住宅との言及が1カ所だけ」あったが、「その不動産の用途に関する真実でより具体的な説明」も含まれていたと主張。

「詐欺も、欺く意図も、犯罪的なものも、住宅ローン詐欺の主張の根拠になりそうなものも何もない」とした。

トランプ氏は、経済成長を促進するとして、FRBに積極的な金利引き下げを望んでいる。そのため、FRBに対して影響を及ぼそうとしているとの見方がある。そうした背景から、今回の訴訟の行方は大きな意味をもつとされている。

FRBのジェローム・パウエル議長も、裁判で出廷する見通し。パウエル氏自身、FRBの建物の改修工事におけるコスト超過に関連した犯罪捜査に直面している。同氏はこれを「口実」だと批判している。

最高裁は現在、保守派が6対3で多数派となっている。職員の解任・解雇をめぐる最近の他の事案では、最高裁はホワイトハウスの判断を支持している。

しかし、ホワイトハウスから独立して政策を決定するよう設計されているFRBについては、最高裁は事情が異なるとの見方を示唆している。