米FRBのクック理事、解任通告めぐりトランプ氏を提訴へ

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アメリカのドナルド・トランプ大統領が解任を表明した、連邦準備制度理事会(FRB)のリサ・クック理事は26日、解任を不当として訴訟を起こす意向を、弁護士を通して表明した。大統領と中央銀行が対立する可能性が出てきた。
クック氏の弁護士のアビ・デイヴィッド・ローウェル氏は、「トランプ大統領に連邦準備制度理事会のリサ・クック理事を解任する権限はない」とする声明を出した。
その中で、「書簡だけに基づいた解任の試みは、事実的にも法的にも根拠がない」、「私たちはこの違法行為に異議を唱える訴訟を起こす」とした。
トランプ氏は、クック氏が住宅ローンをめぐって虚偽の申告をしたと信じるに足る「十分な理由」があるとし、憲法上の権限に基づいて同氏を解任できるとしている。
金利引き下げを主張しているトランプ氏は、FRBが引き下げに消極的だとみており、ジェローム・パウエル議長はじめ、FRBへの圧力を強めている。

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26日には市場で米長期国債が売られた。トランプ氏がFRB理事を解任しようとしたことで、中央銀行への信頼が損なわれることを懸念する投資家らにリスクの観測が広がっていることを示唆した。
投資家がFRBの信頼性を疑い始めれば、米政府の借入コストは上昇する可能性がある。それらは世界中の資産価格の設定に使われていることから、影響は世界中に及ぶと予想される。
クック氏はFRB理事7人の1人で、アメリカの金利を決定する委員会のメンバー12人の1人でもある。
FRBは声明を発表し、「連邦議会はFRB法を通じて、理事が長期の固定任期を務め、『理由がある場合』のみ大統領によって解任され得ると定めている」とした。また、「理事の長期の任期と解任からの保護は、重要なセーフガードとして機能しており、金融政策の決定がデータ、経済分析、米国民の長期的な利益に基づいてなされることを保証するものだ」とした。
クック氏が起こすとしている訴訟については、FRBは裁判所の決定に従うとした。
一方、トランプ氏は26日の閣議で記者団に、クック氏の後任として数人の「優秀な人物」を考えていると説明。「私たちは100%公正な人を必要としている。彼女はそうではなかったようだ」と述べた。
クック氏の後任候補はトランプ氏が指名する。後任は、金利引き下げやトランプ氏の経済政策に好意的な人物になる可能性がある。
FRBの決定は、米国民の借り入れや預金の金利に影響を与える。アメリカの金利は、他国の中央銀行も注視している。
クック氏は、7月末のFRBの直近の金利決定会合で、パウエル氏や他のほとんどの委員とともに、金利の維持に賛成した。
クック氏は2022年に当時のジョー・バイデン大統領(民主党)によってFRB理事に指名された。アフリカ系アメリカ人女性として初めてその任に就いた。
トランプ氏による解任は、法的な問題を引き起こす可能性が高い。専門家らは、解任には十分な理由があるとホワイトハウスが証明する必要があると指摘している。
クック氏は声明で、「(トランプ氏は)法律上の理由がないのに、『理由があって』私を解雇するとしている。彼にはその権限はない」と主張。「辞任はしない。2022年からしてきたように、米経済のために自分の職務を遂行する」と付け加えた。
トランプ氏は先週、クック氏が不動産詐欺にかかわったと主張し、辞任を求めた。クック氏の不動産取引に関する疑惑は、トランプ氏に近い連邦住宅金融局(FHFA)のビル・パルト局長が20日に、パム・ボンディ司法長官宛ての公開書簡で最初に指摘した。
25日になってトランプ氏は、クック氏がミシガン州にある物件について、今後1年間、主たる住居とすることを証明するとする書類に署名したと、自身のソーシャルメディアのトゥルース・ソーシャルに投稿。
「その2週間後、あなたはジョージア州の物件について、向こう1年間はそこを主たる住居にするという別の書類にサインした」、「2回目の宣言をする際に、最初のを意識していなかったとは考えられない」とした。
クック氏は先週、BBCの取材に対し、メディアでこの疑惑を知ったと説明。FRB理事になる前の2021年の住宅ローン申し込みに端を発しているとした。
そして、「ツイートで提起されたいくつかの疑問のために、いじめられて職を辞するつもりはない」、「正確な情報を集め、正当な質問には回答し、事実を提示する」とした。
トランプ氏と、クック氏およびパウエル氏との対立は、FRBの政治からの独立性という点でも問題になっている。
多くのエコノミストは、FRBなどの中央銀行が国民の利益となる金融政策を立案するには、独立性が必要だと考えている。











