EU、アメリカとの貿易協定承認を停止へ 金融市場が下落

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ジョナサン・ジョーセフス、ニック・エドサー、アダム・ハンコック各経済記者
欧州議会は、昨年7月にアメリカと合意した貿易協定の承認を停止する方針を固めた。同議会の国際貿易委員会に近い関係者が20日、明らかにした。承認停止の決定は21日に、フランス・ストラスブールで発表される見通し。
ドナルド・トランプ米大統領がデンマーク自治領グリーンランドを取得しようと動きを強め、それに反対する8カ国への追加関税を警告する中で、欧州議会のこの動きによって、米欧の緊張がいっそう高まることになる。
アメリカとヨーロッパの対立に金融市場は動揺しており、貿易戦争や、対米報復措置の可能性が再び取り沙汰されている。
20日にはアメリカとヨーロッパの双方で株価が下落した。欧州市場は2日連続して下がり、アメリカではダウ平均株価が1.7%以上、S&P500は2%以上、ナスダックは約2.4%、それぞれ下落して取引を終えた。
アジア太平洋地域の市場も21日の取引開始と共に下落した。日本の日経平均は午前の取引終了時点で約0.56%下落した。韓国とオーストラリアの主要指数も、安値で取引された。
金の価格は上昇を続け、史上初めて1オンス4800ドル(約76万円)を超えた。銀も1オンス95ドル(約1万5000円)を超えた。
情勢不確実な時には、貴金属は安全資産とみなされる。過去1年の間に、金と銀の価格は共に急騰している。
外国為替市場では、米ドルが急落した。ユーロは対ドルで0.8%以上、上昇して1.1749ドルに達した後に反落。英ポンドも対ドルで上昇し、最終的に1.343ドルで0.1%高となった。世界的に借り入れコストも上昇し、数カ月ぶりとなる長期国債の大規模売りがアメリカ、イギリス、ドイツなどの30年債利回りを押し上げた。
米欧間の貿易関係の悪化は、昨年7月にトランプ氏が英スコットランドに持つターンベリー・ゴルフ場で双方が貿易協定の枠組みに合意して以来、緩和していた。
アメリカは当時、欧州製品の大半への関税を当初の30%から15%へ引き下げることに合意した。トランプ氏は4月に「解放の日」関税を発表し、5月には欧州連合(EU)の対米輸入品全てに50%の関税を課すと警告していた。
7月の合意の見返りとして、ヨーロッパは対米投資を約束するほか、アメリカの対EU輸出拡大につながると見込まれる変更を、域内で実施すると約束していた。
この協定が正式なものとなるには、今も欧州議会の承認が必要だ。
しかし、トランプ氏が17日にグリーンランドをめぐる関税発動を脅してから数時間後、欧州議会の保守系会派EPPを率いるドイツのマンフレート・ヴェーバー議員は、「EPPはEU・米貿易協定に賛成しているが、ドナルド・トランプ氏によるグリーンランドに関する脅しを踏まえると、現段階での承認は不可能だ。アメリカ製品へのゼロ関税は凍結されるべきだ」と、ソーシャルメディアに投稿した。
さらに、欧州議会のベルント・ランゲ国際貿易委員長は、グリーンランドをめぐる脅しを前に、協定の停止以外に「選択肢はない」と述べた。
「EU加盟国の領土保全と主権を脅かし、関税を威圧手段として用いることにより、アメリカはEU・米の貿易関係の安定性と予測可能性を損なっている」と、ランゲ委員長は述べた。協定を欧州議会の最終採決へかける前には、ランゲ委員長が率いる国際貿易委員会が協定を承認する必要がある。
「アメリカが対立ではなく協力への道に復帰するまで、ターンベリー関連の二つの法案に関する作業を停止する以外に選択肢はない」と、委員長は言明した。
この決定を受けて、今後EUが対米報復措置を進めるのかどうかが、注目される。
EUは昨年、トランプ氏の「解放の日」関税への対応として、最大930億ユーロ(約17兆2000億円)相当のアメリカ製品に関税を課す可能性を公表していたが、協議が進む間、この計画を保留していた。
しかしその猶予期間は2月6日に終了する。EUが延長措置を取るか新協定を承認しない限り、2月7日に対米関税が発動する。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、EUが報復措置を検討するよう促している。マクロン氏が言及する対抗手段には、「貿易バズーカ」とも呼ばれる「反威圧措置(ACI)」も含まれている。
マクロン氏はスイス・ダヴォスで開かれている世界経済フォーラムの年次総会で、トランプ政権が「果てしなく積み重ねる」追加関税は「根本的に受け入れられない」と批判。「ましてや、領土主権への圧力として使用される場合、根本的に受け入れられない」と述べた。
米トランプ政権は
同じダヴォスでは、トランプ政権のスコット・ベッセント財務長官が欧州首脳に対し、報復措置をとらないよう繰り返し警告し、「先入観にとらわれない」よう促した。
「みなさんにこう申し上げる。どっしりと構えて深呼吸してほしい。報復はしないように。大統領は明日ここに来て、自分のメッセージを伝える」と、財務長官は述べた。
トランプ政権のハワード・ラトニック商務長官とジェイミソン・グリア通商代表も、ヨーロッパの報復措置にアメリカが反応しないなどあり得ないと警告した。
AFP通信によると、「これまでの経験では、各国が私の助言に従うとうまくいきがちだが、従わないと狂ったような事態になる」とグリア氏は述べた。
米国は、技術と金属関税をめぐる継続的な対立の中で、ヨーロッパの承認プロセスの進展に不満を示してきた。
アメリカと、27カ国が加盟するEUは、互いに最大の貿易相手同士だ。ヨーロッパの統計によると、2024年には1兆6000億ユーロ(約296兆円)超のモノとサービスが取引されている。これは世界全体の貿易のほぼ3割に相当する。
トランプ氏が昨年春に関税を発表し始めると、ヨーロッパを含む各国首脳が報復措置をとると警告した。
しかし、最終的には、多くの国が交渉を選んだ。
中国とカナダだけがアメリカ製品に重い関税をかけるという脅しを貫徹したが、カナダは昨年9月、自国経済への影響を懸念し、その大半を静かに撤回した。
カナダのマーク・カーニー首相は20日、ダヴォスでの演説で、大国同士が競い合う「力こそ正義」だという世界が浮上しつつあると警告し、それに対抗するために「中堅国」の結束を呼びかけた。
「覇権国を相手に単独で2国間交渉に臨むと、我々は弱い立場で交渉することになる。提示されたものを受け入れるしかない。覇権国の意向に一番添える国になろうと、競い合ってしまう」と、カーニー首相は警告し、「これは主権ではない。これは、従属を受け入れながら、主権国家のふりをしているに過ぎない」と強調した。
各国の貿易関係が緊張する間、アメリカではトランプ氏が昨年発表した多くの関税が合法かどうか、米連邦最高裁が近く判断を示すとされている。












