アメリカとEU、欧州からの輸入品に関税15%で合意

白い花のアレンジメントが置かれた小さいテーブルを挟み並んで座った両氏が、笑顔で握手を交わしている。フォン・デア・ライエン委員長は白いジャケットに黒いパンツ、トランプ氏は紺色のスーツに金色のネクタイを締めている。部屋は日差しで明るく、背後の大きな窓越しに芝生が見える

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画像説明, 握手するウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長とドナルド・トランプ米大統領(27日、英スコットランド・ターンベリー)

サラ・スミスBBC北米編集長(英スコットランド・ターンベリー)

アメリカと欧州連合(EU)は27日、貿易協定の枠組みに合意し、世界有数の経済圏同士の間で数カ月にわたり続いた対立を終わらせた。

ドナルド・トランプ米大統領とウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長は、英スコットランドで会談。のるかそるかの瀬戸際に立った交渉の末、EUからアメリカへのすべての輸出品に対し、アメリカが15%の関税を課すことで合意した。

トランプ氏はこれに先立ち、EU製品に対して8月1日から税率30%の関税を導入する姿勢を示していた。トランプ氏は今回の合意について、EU圏の27カ国が一部のアメリカ製品について関税をゼロにすることになると話した。

フォン・デア・ライエン氏も今回の合意を歓迎し、両陣営に安定をもたらすと評価した。アメリカとEUの貿易額を合わせると、世界貿易の3割近くを占める。

トランプ氏はこれまで、アメリカの貿易赤字を減らし、世界経済の再編を図るため、重関税を主要な貿易相手国に突き付けて交渉材料にしてきた

トランプ政権はこれまでEUに加え、イギリス日本インドネシア、フィリピン、ヴェトナムとも関税協定を結んでいるものの、「90日間で90の合意」という目標は達成していない。

米欧の合意は27日、スコットランド・サウスエアシャーのターンベリーにあるトランプ氏のゴルフ場で、フォン・デア・ライエン氏とトランプ氏が会談した後に発表された。

スコットランドを5日間の日程で訪問中のトランプ氏は、短時間の会談後に「取引で合意した。すべての人にとって良い取引だ」と述べ、「お互い、前より近い関係になる」と付け加えた。フォン・デア・ライエン氏も「厳しい交渉」の末に合意した「とても大きな取引だ」と評価した。

トランプ氏によると、EUは合意に基づき今後3年間でアメリカへの投資を6000億ドル(約88兆6600億円)増やす。投資にはアメリカ製の軍事装備も含まれる。また、エネルギー分野に7500億ドル(約110兆8300億円)を支出するという。

フォン・デア・ライエン氏は、液化天然ガス、石油、核燃料といったアメリカのエネルギー資源に今後3年間で投資することは、EUのロシア依存が軽減される一助になると述べた。

航空機やその部品、一部の化学製品、農産品などは関税の対象外となる。半導体に関する別の合意が近く発表される可能性もある。

ただし、トランプ氏は、世界的に導入している鉄鋼とアルミニウムへの50%の関税は維持されると話した。

フォン・デア・ライエン氏は「この突破口を開くために尽力し、リーダーシップを発揮してくれたトランプ大統領に、感謝したい。厳しい交渉相手だが、同時に取引をまとめる人だ」と評価した。

今回の合意は、米・EU双方が自分にとって一定の勝利だと主張できる内容になっている。

EUは、最悪の事態を回避したと言える。イギリスが獲得した関税率10%ほどは低くないものの、日本が22日に合意した15%と同水準だ。

アメリカ側にとっては、昨年の貿易額に基づくと、約900億ドル(約13兆3000億円)の関税収入が見込まれるほか、さらに数千億ドル規模の投資がアメリカに流れ込むことになる。

トランプ氏が「史上最大の貿易合意」と、これを歓迎しているのは明らかだ。

アメリカにとって利益が大きい今回の合意で、EU側が何を得るのかは不透明だ。フォン・デア・ライエン氏が貿易関係の「再均衡」に言及した点が注目される。

これまでEUは、サービスの貿易についてEUがアメリカから購入する額は逆を上回っていると指摘し、双方の貿易関係は均衡していると主張してきた。フォン・デア・ライエン委員長は今回、合意成立のためにあえて意図的にトランプ氏の物言いに合わせたようにも聞こえる。

合意発表に先立ちトランプ氏は息子のエリック氏ら家族や客たちと共に、小雨の中でターンベリー・リゾートのゴルフ場で18ホールを回った。

ゴルフ場の芝の上に、白いキャップと黒いゴルフウェアで立つトランプ氏。キャップには「USA」と書かれている。ゴルフボールを右手に、左手に白い手袋をしたトランプ氏は両手で口元を挟み、声を出している

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画像説明, ゴルフをしながら報道陣に声をかけるトランプ氏(27日、トランプ・ターンベリー・ゴルフ場)

EUとアメリカの物品貿易総額は昨年約9760億ドル(約144兆2300億円)に達した。アメリカはEUから約6060億ドル(約89兆5500億円)を輸入し、約3700億ドル(約54兆6800億円)を輸出した。

トランプ氏はこの不均衡を問題視し、アメリカにとっての貿易赤字はアメリカがその関係において「負けている」ことを意味すると主張している。

トランプ氏が当初表明した関税がEUについて実施されていれば、スペインの医薬品、イタリアの革製品、ドイツの電子機器、フランスのチーズなどが対象となっていた。EU側も、アメリカの自動車部品、ボーイング機、牛肉などに報復関税を課す姿勢を示していた。

欧州各国の首脳は、今回の合意を慎重に歓迎している。アイルランドのミホル・マーティン首相は、合意してもなお関税が以前より高くなる点に触れ、貿易が「前より高く、前より難しくなる」と述べた。EU諸国の中でアイルランドはアメリカへの輸出依存度が最も高い。

ドイツのフリードリヒ・メルツ首相はソーシャルメディア「X」に、アメリカとの貿易摩擦が起きていればドイツ経済に大きな打撃を与えるところだったと書き、「市場アクセスのある、安定して予測しやすい貿易関係は、大西洋を挟んだ双方の企業と消費者の全員にとって等しく利益になる」と述べた。

イタリアANSA通信によると、ジョルジャ・メローニ首相も合意を歓迎したが、詳細を確認する必要があると話している。

イギリスのキア・スターマー首相は28日、ターンベリーでトランプ氏と会談する予定。

トランプ大統領は29日にアバディーンを訪れ、家族が所有する別のゴルフ場を視察し、来月オープン予定の三つ目のコースの開場式に参加する予定となっている。