英下院、アンドリュー元王子の貿易特使任命に関する政府文書の公開を支持

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イギリス下院は24日、王室のアンドリュー・マウントバッテン=ウィンザー元王子を政府が貿易特使に任命した際の関連文書について、公開に賛成した。英テムズ・ヴァレー警察は19日、元王子を公務中の不正行為の疑いで逮捕。同日中に釈放したが、捜査は続いている。
アンドリュー元王子については、貿易特使としての公式業務で得た機密情報を故ジェフリー・エプスティーン元被告に渡していた疑いが出ていた。アメリカの司法省が1月末に追加公開したエプスティーン元被告の関連資料に、元王子の不正行為をうかがわせる複数のメールが含まれていた。
元王子が2001年に貿易特使に任命された際の公文書を公表するよう政府に求める動議は、野党・自由民主党が提出したもの。これについて審議した24日の下院で、クリス・ブライアント貿易相は、元王子は「無礼で傲慢(ごうまん)で、特権意識に満ちている」と答弁し自由民主党の動議を支持した。
ブライアント貿易相は、元王子に対する捜査が進行中のため、政府資料の公開はその影響で遅れる可能性があるとしつつ、政府はこの動議に「可能な限り迅速に」従うと述べた。
アンドリュー元王子は2001年から2011年まで、政府の「国際貿易・投資特別代表」を務めた。この立場を通じ、世界中の政府高官やビジネス関係者に接触する機会があった。
イギリス政府の公式規定では、貿易特使は訪問先に関する機密性の高い商業・政治情報について守秘義務を負うと定められている。
しかし、アメリカの司法省が1月末に追加公開したエプスティーン関連資料の中には、元王子がシンガポールや香港、ヴェトナムへの訪問に関する報告や、投資機会に関する機密情報を、エプスティーン元被告へ伝えていた様子のメールが含まれていた。
2010年のクリスマス・イブにアンドリュー王子(当時)は元被告に対し、アフガニスタンのヘルマンド州復興での投資機会に関する機密説明をメールで送信していた。このプロジェクトは当時、イギリス軍が監督し、イギリス政府が資金面でも支援していた。
この時点で、エプスティーン元被告はすでに性犯罪で有罪判決を受けていた。
1月末の資料公開で明らかになったこうした内容について、BBCは元王子にコメントを求めているが、回答を得られていない。
元王子は過去に、エプスティーン元被告の関係において不正行為はなかったと主張している。貿易特使としての立場を通じて、個人的利益を得たことも否定している。
警察はかねて、エプスティーン元被告との関係をめぐり元王子の捜査を検討中と発表していた。機密資料を共有したという疑惑も調べていた。
19日の逮捕に伴い、今月初めまで元王子が長年暮らしていたウィンザー城敷地内にある邸宅「ロイヤル・ロッジ」と、現在の住まいである王邸サンドリンガムの敷地内にある「ウッド・ファーム」で家宅捜索が行われた。
「ロイヤル・ロッジ」での捜索は、19日朝から24日まで続いた。
「公益と私益の区別なく」
24日の下院審議でブライアント貿易相は、同僚議員や公務員たちから、アンドリュー元王子とのやり取りについて聞いていると答弁。「彼らの言うことは、すべて同じパターンを示している。(元王子は)常に自分をひけらかすため、そして自己利益のために立ち回る人物で、無礼で、傲慢で、特権意識に満ち、自分は公共の利益に奉仕していると言いながらも、公共の利益と自分自身の私的利益を区別できていなかった」と非難した。
自由民主党は同日、党に割り当てられた討論時間を利用し、元王子の貿易特使任命に関する情報の公開を政府に義務付ける、いわゆる「ハンブル・アドレス(謙虚な請願」と呼ばれる手続きで動議を提出した。「ハンブル・アドレス」は、文書公開を政府に指示するよう君主に「謹んで」求める手続きで、可決されれば強制力を持つと理解されている。
今月初めにも最大野党・保守党が同様の手法を使い、キア・スターマー首相が2024年に労働党重鎮だったマンデルソン卿を駐米大使に任命した際の政府資料公開を要求し、成功している。この時の動議は、正式な採決を必要とせず、無投票で承認された。
エプスティーン元被告との関係が問題視されて大使を解任されたマンデルソン卿は23日、公務中の不正行為の疑いで逮捕された後、保釈された。
ブライアント貿易相は下院で、元王子に関する資料公開を政府は支持するとしつつ、。「率直に言って、ジェフリー・エプスティーンやその他の人物による、恐ろしい虐待の被害者たちに対して、私たちはせめてこれくらいはする必要がある。これは最低限の義務だ。この虐待は、この国や他の地域にいる傲慢で、特権意識に満ち、多くの場合非常に裕福な人々という、非常に幅広い集団が支援し、助長し、幇助(ほうじょ)したものだ」と述べた。

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「虐待に直接関与した人物だけでなく、自分の強欲や馴れ合い、あるいは追従の気持ちから、目を背けた大勢もそこに含まれる。その人たちも同様に共犯だと私は考える。そして、その人たちが今、責任を問われ始めていることを歓迎する」とも、ブライアント氏は述べた。
貿易相はさらに、自由民主党からの「謙虚な請願」の条件に政府として「完全に」従うと説明しつつ、その作業は期待するほど速やかには実現できないかもしれないと述べた。
自由民主党のエド・デイヴィー党首は下院で、エプスティーン元被告にまつわるスキャンダルは「真に世界的なもの」だと述べると同時に、「イギリスのエスタブリッシュメント(支配階級)の最上層にまで及ぶ、非常にイギリス的なスキャンダル」でもあると述べた。
2011年にビジネス担当相だったデイヴィー氏は、アンドリュー王子(当時)が貿易特使として「素晴らしい仕事」をしていると発言していた。さらに、当時すでに指摘されていた王子の行動に対する懸念を、「風評」として退けていた。
かつて議会審議でアンドリュー元王子を擁護した件について、デイヴィー氏はBBCの番組で質問に答えて謝罪した。
「まず、エプスティーンの被害者たちが、(自分の当時の)発言を読んで動揺したかもしれないので、ぜひとも謝りたい。本当に後悔している」と、デイヴィー党首は述べた。
さらに、当時は「十分に状況を把握していなかった」と述べ、「あの時の審議では誰もエプスティーンに言及しなかった。それこそが、議会と議員がいかに王室を、そして(当時の)アンドリュー王子を特別視し、極めて特権的な立場にある者として扱い、適切に追及できていなかったか、物語っている」と付け加えた。
アンドリュー元王子を無給の貿易特使に指名したのは、労働党のトニー・ブレア政権だった。内閣府、外務省、海外貿易総省の協議を経て、エリザベス女王により公式に任命された。
下院ビジネス・貿易特別委員会の議員らは、貿易特使の役割についてどのように調査するにしても、アンドリュー元王子に対する法的手続きが終わるまでは開始できないと述べた。
しかし、委員会のリアム・バーン委員長(労働党)は、警察の対応が終わった時点で調査を開始するかどうか判断できるよう、「直ちに情報収集を開始する」と述べた。













