英警察、マンデルソン卿に対する捜査を開始 エプスティーン元被告に政府情報を渡した疑惑で

インタビューに応じるマンデルソン卿を正面から撮った写真。険しい表情をしている手前には対面する記者の後ろ姿がぼやけて写っている。

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画像説明, マンデルソン卿
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ジョシュア・ネヴェット政治記者、ハリー・ファーリー政治担当編集委員

ロンドン警視庁は3日、ピーター・マンデルソン前駐米大使に対する公職中の不正行為疑惑について刑事捜査を開始した。マンデルソン卿をめぐっては、労働党の閣僚時代、性犯罪で有罪とされた米富豪ジェフリー・エプスティーン元被告(故人)に、市場に影響を与える可能性のある政府情報を渡した疑いが出ている。

米司法省が1月末に追加公開した文書には、マンデルソン卿がゴードン・ブラウン政権でビジネス相を務めていた2009年、エプスティーン元被告に情報を転送したように見える電子メールが含まれていた。

捜査開始を受けて政府報道官は「政府は、警察が必要とするあらゆる支援と協力を提供する準備がある」と述べた。

こうしたなか、マンデルソン卿はこの日、上院議員を辞任する意向を示した。

マンデルソン卿はトニー・ブレア元首相とブラウン元首相の労働党内閣で複数の閣僚ポストを務めた。2008年に叙勲されて一代貴族の「マンデルソン卿」となり、上院議員となった。

2024年12月にキア・スターマー政権の駐米大使に任命されたが、昨年9月、エプスティーン元被告との関係の詳細が判明したことで解任された。今月1日には、40年にわたり重要な役割を担ってきた労働党から離党した。

マンデルソン卿はコメントの要請に応じなかったが、BBCの取材によると、同卿は自身がいかなる犯罪行為にも関与しておらず、金銭的利益を得る動機はなかったという立場を取っている。

「非国民的な行為」とブラウン元首相

ロンドン警視庁のエラ・マリオット警視長は声明で、「米司法省がジェフリー・エプスティーン元被告について、数百万件の裁判資料を追加公開したことを受け、ロンドン警視庁は、公職中の不正行為とされる事案について、イギリス政府からの照会も含めた複数の通報を受けている」と述べた。

「本庁は今般、72歳の元政府閣僚について、公務上の不正行為に関する容疑で捜査を開始した」

「本庁は、この捜査の一環として寄せられた関連情報を引き続き精査するが、現時点ではこれ以上コメントしない」

野党のスコットランド国民党(SNP)とリフォームUKは2日、マンデルソン卿を警察に通報したと発表。3日にはイギリス政府が、マンデルソン卿がビジネス相だった時期に元被告に送ったとみられる電子メールを精査した結果、この資料を警察に委ねたと明らかにした。

英首相官邸の報道官は、関係文書の「初期評価」の結果、2008年の金融危機に関する「市場に影響を与える可能性の高い情報」が含まれていたと述べた。

ブラウン元首相も、マンデルソン卿がエプスティーン元被告とやり取りしたとみられる件に関連して、「関連する」情報を添えて、ロンドン警視庁のマーク・ロウリー警視総監に書簡を送ったと述べた。

ブラウン氏は、2008年当時の銀行破綻に伴う資産売却に関して「エプスティーン文書に含まれる情報の真偽と、それについてマンデルソン卿とエプスティーンの間で交わされた通信を調査するよう」内閣官房長に求めた昨年9月の書簡を、警察に提供したと述べた。

ブラウン氏は、疑われているやり取りについて、「世界的な金融危機に政府と国全体が対応しようとしていた時期に行われた弁解の余地のない非国民的な行為」だと指摘した。

駐米大使への任命責任

マンデルソン卿は辞任後、上院議員ではなくなるものの、一代貴族の称号は保持し続ける。この称号は、議会の制定法によってのみ剥奪できる。

首相官邸の報道官は、マンデルソン卿の爵位を「できるだけ迅速に」剥奪できるようにするため、政府が法案を準備していると述べた。

また、スターマー首相が3日午前の閣議の冒頭で、マンデルソン卿が「国を裏切った」と発言し、電子メールを渡したとされる行為は「恥ずべきものだ」と語ったと明らかにした。

スターマー氏はさらに、関係する情報の「全容がまだ明らかになっているとは思えない」と閣僚らに述べたという。

マンデルソン卿とエプスティーン元被告との交友関係は、2024年に駐米大使に任命された時点で知られていた。

首相官邸は現在、その任命過程における身元調査の手続きや、任命を決定した時点で友好関係についてどこまで把握していたのかについて、説明を求められている。

政府は4日に、マンデルソン卿をアメリカ大使に任命した判断に関する情報を公表する意向を示す予定だ。

最大野党・保守党は、労働党政権に情報公開を迫るため、「ハンブル・アドレス(謙虚な請願)」と呼ばれる議会手続きを用いる計画だ。文書公開を政府に指示するよう君主に「謹んで」求めるこの手続きは、可決されれば強制力を持つと理解されている。

保守党は、労働党議員が反対票を投じることが極めて難しくなるよう、文面の調整に相当の時間を費やしている。

しかし政府は、この手続きに修正を加えることを示唆している。修正案では、「イギリスの国家安全保障または国際関係に不利益となる文書を除き」情報を公開することを約束するとしている。

ただし、情報が即時に公開される見通しはない。

保守党のケミ・ベイドノック党首は、マンデルソン卿の任命について、首相には「多くの説明すべき点がある」と指摘。「爵位の剥奪や捜査の話で注意をそらそうとしてはならない」と語った。

野党・自由民主党のエド・デイヴィー党首は、エプスティーン元被告が「イギリスの政治中枢にアクセスできた」経緯について、公的調査の実施を求めている。

元被告とマンデルソン卿のやりとり

公開された文書に含まれる電子メールには、当時ビジネス相だったマンデルソン卿が、銀行員ボーナスに対する一回限りの課税案について、エプスティーン元被告と話し合っていたことが示されている。

別の電子メールには、マンデルソン卿がブラウン政権でビジネス相を務め、事実上の副首相だった当時、政府の資産売却計画に関する内部情報をエプスティーン元被告に転送していたとうかがわせる内容が含まれている。

米司法省が公開した文書には、他にも以下のやりとりが含まれていた。

・マンデルソン卿は2009年、銀行幹部のボーナスに課税するイギリス政府案をめぐり、米JPモルガン銀行のトップが英財務相に「やんわりと脅しをかける」べきだと、エプスティーン元被告に助言した

・マンデルソン卿はまた、欧州連合(EU)がユーロ救済に向けて5000億ユーロ規模の支援策を検討していることを、エプスティーン元被告に事前に知らせていた

・エプスティーン元被告は2003年と2004年にかけて3回にわたり2万5000ドルずつ、計7万5000ドルをマンデルソン卿に支払った

・元被告は2009年、当時マンデルソン卿のパートナーで後に結婚したレイナルド・アヴィラ・ダ・シルヴァ氏に1万ポンドを送金した

今月1日に労働党離党を発表した声明の中でマンデルソン卿は、エプスティーン元被告が20年前に自分に金銭を支払ったとする疑惑は虚偽だと考えていると述べた。

また、有罪判決後もエプスティーン元被告との関係を続けていたことについて遺憾の意を改めて示し、「被害を受けた女性や少女たちに対し、断固として謝罪する」と述べた。