【検証】米軍がイラン近海で艦艇と戦闘機を増強、人工衛星画像から追跡

リチャード・アーヴァイン=ブラウン記者、アレックス・マリー記者 BBCヴェリファイ(検証チーム)
イランの核計画と反政府抗議への弾圧をめぐり、アメリカが同国への圧力をさらに強めている。BBCヴェリファイ(検証チーム)は、人工衛星画像を用いて、米海軍の空母「エイブラハム・リンカーン」が、イランにさらに近づいていることを確認した。
アメリカとイランの当局者は17日にも、スイスで2回目の協議を行う予定だ。イランは、この協議が自国の核計画と、アメリカが科した経済制裁の解除の可能性に焦点を当てるものだと述べている。一方、アメリカは、別の課題についても協議したい意向を示している。
「エイブラハム・リンカーン」は、F35戦闘機を含む航空機90機を擁し、乗組員は5680人に上る。誘導ミサイル駆逐艦3隻を含む打撃群を率いている。1月下旬に湾岸地域に展開したと伝えられていたが、これまで人工衛星画像には映っていなかった。しかし今回、イランから約700キロ離れたオマーン沖で所在が確認された。
アメリカはまた、世界最大の軍艦とされる「ジェラルド・R・フォード」を中東に派遣したと報じられている。同艦は今後3週間以内に、中東に到着する可能性がある。
「エイブラハム・リンカーン」の到着により、アメリカがこのところ中東で軍備増強を進めている状況がさらに明らかになった。BBCヴェリファイは、この地域でアメリカの駆逐艦、戦闘艦、戦闘機などの増加を追跡している。

画像提供, Reuters
アメリカの中東への増派と配備
欧州の人工衛星「センチネル2」が公開している画像は、エイブラハム・リンカーンがオマーンから約240キロ沖のアラビア海に位置している様子を示す。
同艦は今年1月にこの地域に入ったと伝えられて以降、姿が確認されていなかったが、これは、人工衛星の観測範囲が限られる外洋を航行していたためだ。一方、地上の軍備はより目に付きやすく、人工衛星で頻繁に捉えられる。
BBCヴェリファイはこれまでに、アメリカが中東に配備している艦船12隻を人工衛星画像から追跡してきた。
ニミッツ級原子力空母のエイブラハム・リンカーンは、アーレイ・バーク級駆逐艦3隻と空母打撃群を構成している。また、長距離ミサイル攻撃が可能な駆逐艦2隻と、沿岸戦闘専門の艦船3隻が、バーレーン海軍基地に配備されている。これに加え、東地中海のスーダ湾アメリカ軍基地の近くで駆逐艦2隻と、紅海でさらにもう1隻が確認されている。
BBCヴェリファイは、この地域におけるアメリカ軍航空機の動きも追跡している。
これまでに、ヨルダンのムワファク・サルティ空軍基地で、F15戦闘機とEA18戦闘機の配備数が増えた。アメリカや欧州から中東に向かうアメリカ軍の輸送機、空中給油機、通信機も、増加が確認されている。

イランの反応は
アメリカ中央軍は今月6日、アラビア海でエイブラハム・リンカーンが駆逐艦、戦闘機、偵察機、沿岸警備隊の艦船に挟まれる形で展開している画像を公開した。軍事力を誇示するためとみられ、イランもこれに対し独自の示威行動で応じた。
イラン革命防衛隊(IRGC)は16日、オマーンとイランの間に位置するホルムズ海峡で海上軍事演習を開始したと伝えた。この演習では、IRGCのモハンマド・パクプール司令官が、港から海軍艦艇を視察した。その後、艦船からミサイルが発射される様子が確認されたと、IRGC系のタスニム通信が伝えた。
ホルムズ海峡は、世界で最も重要な海上輸送路の一つで、石油輸送の要衝とされている。世界の石油・ガス消費量の約約2割がこの海峡を通過するとされ、これにはイランの主要な石油輸出拠点カーグ島からの輸送も含まれる。報道では、パクプール司令官が軍事演習中、ヘリコプターで同島上空を飛行する様子が確認された。
最近の軍事作戦との比較
英防衛コンサルタント会社「シビライン」の創設者で最高経営責任者(CEO)のジャスティン・クランプ氏はBBCヴェリファイに対し、中東における現在のアメリカの軍備は、今年1月にヴェネズエラで行われたニコラス・マドゥロ大統領の拘束に先立つ動きや、昨年6月にイランの核施設を空爆した「ミッドナイト・ハンマー」作戦よりも「より深度と持続性がある」と述べた。
どちらの作戦でも空母打撃群が派遣され、併せて複数の駆逐艦が単独行動していた。しかし、アメリカが昨年ヴェネズエラとイランに軍隊を展開した際の状況は、大きく異なっていた。
アメリカはヴェネズエラへの攻撃に先立ち、空母「ジェラルド・R・フォード」をカリブ海に展開した。当時、この地域で確認された8隻の艦船の1隻だったが、航空機の使用は少なかった。これは、アメリカ本土周辺の基地やプエルトリコの基地から戦闘機を容易に派遣できたためだ。
また、アメリカはカリブ海に強襲揚陸艦も配備している。これらの艦船はヘリコプター作戦の発射拠点として利用可能で、マドゥロ氏拘束時にもその様子が見られた。ただしヴェネズエラ軍は一般に、アメリカに対して自衛や報復を十分に行う能力が低いとみられている。
一方、アメリカが昨年、イランの核施設を標的とした「ミッドナイト・ハンマー作戦」を実施した際には、ヴェネズエラよりはるかに強力な軍事力を持つイランが対象だった。イラン軍は、中東全域のアメリカ軍基地を攻撃できる能力を備えている。

「ミッドナイト・ハンマー作戦」の間、アメリカはこの地域に空母打撃群を二つ展開したほか、駆逐艦5隻を地中海と紅海に配置し、さらに3隻の戦闘艦を湾岸地域に配備していた。また、戦闘機部隊と空中給油機部隊をアメリカから欧州へ移動させていた。ただし、フォルド、イスファハン、ナタンズの核施設を攻撃するために用いられたB2ステルス爆撃機は、実際には米ミズーリ州にある基地から出発していた。
前述の「シビライン」CEOクランプ氏は、アメリカの軍艦と航空機の増強、そして中東地域にある8カ所の空軍基地が、1日約800回という「かなり集中的で持続的な出撃率」を可能にしており、イラン側がどのように反応してもそれを「無効化する」ことを狙っていると説明した。
「私たちがいま目にしているのは、単なる攻撃準備というよりは、規模の拡大・縮小がどちらも可能な、大規模な抑止力の展開だ」と同氏は述べた。
「昨年のヴェネズエラでの作戦や『ミッドナイト・ハンマー』向けに編成された戦力パッケージと比べて、より深度と持続性がある。中東にあるアメリカの軍事資産、そしてもちろんイスラエルに対するあらゆる反応に対処しつつ、交戦を持続できるよう設計されている」
(追加取材:バーバラ・メツラー、ゴンチェフ・ハビビアザド、トーマス・コープランド、イ・マ)











