【解説】 なぜアメリカがホルムズ海峡を封鎖するのか

演壇のマイクの前で記者会見するトランプ米大統領。右手の人差し指を挙げている

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ジョージ・ライト記者、レイチェル・クラン・ビジネス記者

アメリカ軍は12日、「イランの港を出入りするあらゆる海上交通の封鎖」を13日から始めると発表した。

米中央軍は一方で、「イラン以外の港に向かう、またはそこから来る船舶がホルムズ海峡を通過する航行の自由は妨げない」としている。ホルムズ海峡は2月28日に米・イスラエルがイランを攻撃したことで戦争が始まって以来、イランが事実上、封鎖している。

ドナルド・トランプ米大統領は、イランが「核開発の野心を放棄しようとしなかった」ために交渉が失敗に終わったと述べた。

一方、イラン外務省の報道官は、交渉失敗の原因はアメリカの「過度な要求や違法な要請」にあるとした。

トランプ氏は封鎖について何と述べたのか

トランプ氏は12日、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、「米海軍は、ホルムズ海峡に出たり入ったりしようとする全ての船を『封鎖する』作業に着手する」と投稿した。

また、「イランに通行料を支払ったすべての船舶を、公海上で捜索し、阻止するよう海軍に指示した」、「違法な通行料を支払う者に、安全な航行はない」とも述べた。

さらに、イランがホルムズ海峡に敷設したとされる機雷の破壊を開始すると付け加え、「我々に発砲する、あるいは平和的な船舶に発砲するイラン人は全て、地獄まで吹き飛ばす」と投稿した。

トランプ氏は、「いずれかの時点で」自由航行に関する合意に達するとしながらも、「イランは『どこかに機雷があるかもしれない』と、彼ら以外には誰にも分からないことを言うだけで、それを実現させてこなかった」と述べた。

また別の投稿では、「イランはホルムズ海峡を開放すると約束したが、それを承知のうえで果たさなかった」、「約束した通り、この国際水路をすぐさま開放するプロセスを始めたほうがいい」と述べた。

封鎖はどのように機能するのか

米海軍作戦法に関する指揮官用ハンドブック(2022年版)は、封鎖を「敵対国と中立国を含むすべての国の船舶および、または航空機による、敵対国に属する、占領下にある、またはその管轄下にある特定の港湾、飛行場、または沿岸地域への出入りを阻止する交戦行動」と定義している。

トランプ氏は当初、米海軍がホルムズ海峡の封鎖に向けた手続きを「直ちに」開始すると述べていた。

しかしその後、米FOXニュースに対し、封鎖の実施には「少し時間がかかるが、今すぐにでも始まる」と述べ、これは「全部か、何もないか」の政策だと説明した。

米中央軍はXへの投稿で、米東部時間13日午前10時(日本時間同日午後11時)から封鎖を開始すると発表。「アラビア湾およびオマーン湾にあるすべてのイランの港を含め、イランの港湾および沿岸地域に出入りする、すべての国の船舶に対して、封鎖を公平に実施する」と説明した上で、「イラン以外の港に向かう、またはそこから来る船舶がホルムズ海峡を通過する航行の自由を妨げない」としている。

トランプ氏は、ホルムズ海峡の封鎖には他国も関与すると述べたが、具体的な国名は明らかにしなかった。BBCの取材では、イギリスはこの封鎖には関与しないという。

トランプ氏はまた、北大西洋条約機構(NATO)がホルムズ海峡での「掃海」を支援すると申し出たと発言。「それほど遠くない時期に」再び自由に利用できるようになると付け加えた。

さらに、アメリカは機雷を破壊する掃海艇を投入すると述べ、NATO加盟国であるイギリスも同様に参加するとした。

3人の法曹関係者はBBCに対し、ホルムズ海峡封鎖は海洋に関する国際法に違反するかもしれないと話した。専門家の1人はさらに、軍事力による封鎖が、現在の停戦合意に違反する可能性についても指摘している。

なぜアメリカがホルムズ海峡を封鎖するのか

イランはこの戦争を通じ、狭い水路を通過する船舶を選別して阻止し、その過程で原油価格を急騰させるなど、この海峡の地理的条件を影響力の手段として利用してきた。

イランの政権はまた、通過を認める一部の船舶に対し、巨額の通行料を課してきた。

海峡を封鎖することで、トランプ氏はイラン政府にとって重要な収入源を断てる可能性がある。その一方で、原油やガスの価格をさらに押し上げるリスクもある。

トランプ氏はFOXニュースに対し、「われわれは、イランが好ましい相手には石油を売り、好ましくない相手には売らないことで金を稼ぐのを許さない」と述べ、封鎖はこの海峡の通過を「全部か、何もないか」にすることが目的だと語った。

アナリストの間では、トランプ氏のこの発言には、アメリカ側の条件で合意を結ぶようイランに圧力をかける狙いがあるとの見方が出ている。

与党・共和党のマイク・ターナー下院議員(オハイオ州)は、BBCがアメリカで提携するCBSの番組「フェイス・ザ・ネーション」で、封鎖はホルムズ海峡の状況を解決に導くための手段だと述べた。

「大統領が、誰を通すかを彼ら(イラン)に決めさせるつもりはないと言うことで、同盟国やあらゆる関係者を確実に交渉の場に呼び寄せている。これは対処されなければならない問題だ」と、ターナー氏は述べた。

一方、上院の情報特別委員会で野党・民主党筆頭委員を務めるマーク・ワーナー議員(ヴァージニア州)は12日、CNNに対し、「海峡を封鎖することが、どのようにしてイランに開放を促すことになるのか、私には理解できない」と述べた。

影響はどのようなものになるのか

海事アナリストのラース・イェンセン氏は、ホルムズ海峡を封鎖するというトランプ氏の脅しは、短期的には、今も海峡を航行しているごく少数の船舶にしか影響しないと話す。

「もしアメリカが実際に実行しても、止まるのはごくわずかな船の流れにすぎない。全体で見れば、実質的に何も変わらない」という。イェンセン氏は、デンマークの海運コンサルティング会社ヴェスプッチ・マリタイムの最高経営責任者。

イェンセン氏は、イランに通行料を支払った船舶に安全な通航を認めないというトランプ氏の脅しについても、影響は小さいと話す。イランに通行料を払った企業は、すでにイラン政権に資金を支払ったとして制裁の対象になっているからだという。

多くの海運会社は、暫定的な停戦合意が成立し維持されるかどうかを見極めるため、当面は様子見を続けるだろうとイェンセン氏は指摘。停戦合意が維持されれば、輸送は徐々に再開される可能性があると述べた。

海岸から海に浮かぶタンカーを撮った写真。手前の陸地にはヤシのような木が何本も生えている

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画像説明, 一時的な停戦が合意されてからも、ホルムズ海峡を通過した船舶はごくわずかにとどまっている

ホルムズ海峡の現状は

米・イスラエルとイランの戦争をめぐっては、今月7日に条件付きの2週間の停戦が合意された。これには、ホルムズ海峡の「安全な通航」を保証する条件が含まれていた。

しかしその後、この海域にいる船舶に、許可なく海峡を通過しようとすれば「標的にされ、破壊される」とのメッセージが送られ、停戦発表後の最初の3日間に航行した船は、ごく少数にとどまった。

BBCヴェリファイ(検証チーム)が、船舶追跡サイト「マリントラフィック」のデータを分析したところ、停戦開始から英夏時間4月10日午後5時までに、ホルムズ海峡を通過したと確認された船舶は19隻にすぎなかった。

このうち4隻は、原油、ガス、または化学物質を運ぶタンカーだった。残る船舶は、さまざまな種類のばら積み貨物船、またはコンテナ船として記録されている。

このほか、自らの位置情報を発信せずに航行した船舶もある。

これは、2月28日に紛争が始まる前、1日に平均138隻がこの海峡を通過していた状況と比べると、大きく減少している。

追加取材:サレーン・ハベシアン