イランとアメリカの協議、成果得られずと米副大統領 パキスタンで21時間

マイクの載った演台に手を添えて話すスーツ姿のヴァンス氏を、後ろからウィトコフ氏とクシュナー氏が見ている。星条旗が並んでいる。

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画像説明, イランとの協議を終えて記者会見するヴァンス米副大統領(右)。後ろにウィトコフ特使(中央)とクシュナー氏が立っている(12日早朝、イスラマバード)
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アメリカとイランの停戦協議は、仲介するパキスタンの首都イスラマバードで11日始まり、直接協議は12日早朝まで続いた。アメリカの代表団を率いたJ・D・ヴァンス副大統領は日本時間12日午前10時50分(現地時間午前6時50分)ごろに記者会見し、合意が得られないまま自分たちはパキスタンを離れると述べた。イランの代表団はモハンマド・バゲル・ガリバフ国会議長とアッバス・アラグチ外相が率いていた。

ヴァンス副大統領は、アメリカは「誠意をもって」柔軟に対応する姿勢で21時間にわたり交渉に臨んだものの、「合意にたどり着かなかったというのが、悪い知らせだ。それは、アメリカにとって悪い知らせというよりはるかに、イランにとって悪い知らせだと思う」と話した。交渉を仲介したパキスタンのシャバーズ・シャリフ首相とアシム・ムニール陸軍参謀長に感謝し、「交渉に何か問題があったとしても、それはパキスタンのせいではない。パキスタンの働きは素晴らしかった」と述べた。

ヴァンス氏は、「非常にシンプルな提案を残して私たちはここを離れる。これが我々の最後で最善の提案だと、理解する方法を提示した。イランがそれを受け入れるか、様子を見ることになる」とも話した。

「(イランが)核兵器を追求しない、核兵器を素早く実現できるようになる道具を追求しないという、前向きな約束を、我々は見る必要がある。それがシンプルな事実だ」と副大統領は述べ、これがドナルド・トランプ米大統領の「核心的な目標」だと話した。

副大統領は、イランの核開発計画は「破壊された」ものの、イランは今後決して核兵器を開発しないという「根本的な意志表示を伴う約束」が必要だとして、「それをまだ目にしていない。いずれ目にできることを願っている」と話した。

ヴァンス氏をはじめとするアメリカ代表団はこの会見から間もなく、政府専用機でイスラマバードをワシントンに向けて出発した。

ヴァンス氏の記者会見に先立ち、イラン外務省のイスマイル・バガイ報道官は、アメリカとの和平協議について声明を発表した。ソーシャルメディアへの投稿で、協議は「徹底した」ものだと表現する一方、交渉の成否は「相手側がいかに真剣で誠実かにかかっている」と述べた。

報道官はアメリカに対し、「過度な要求や違法な要請」を控え、イランの「正当な権利と利益」を受け入れるよう求めた。

協議項目は、ホルムズ海峡、イランの核開発計画、そして「イランにおける戦争の完全な終結」だと報道官は説明した。

スーツ姿の男性2人がそれぞれ別に、カメラに向かってほほえんでいる

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画像説明, イスラマバードで交渉に臨むヴァンス米副大統領(左)とイランのガリバフ国会議長

これに先立ち、まだ交渉が続いていた時点で、ドナルド・トランプ米大統領はホワイトハウスで記者団に協議について質問されると、「何がどうなっても、我々は勝つ」、「こちらはあの国を完全に敗北させた」と述べた。

トランプ氏はさらに、イランとの合意がまとまるかどうかは「自分にはどうでもいい」ことだとして、アメリカはすでにイランの指導部と海軍と陸軍を滅ぼしたという持論を繰り返した。また、焦点となっている石油輸送の要衝ホルムズ海峡については、「怖がっているか弱いかけちな」国々に代わってアメリカが、海峡開放を実現しようと努力しているのだと主張した。

観客に囲まれたトランプ氏の耳元で話すルビオ氏

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画像説明, 記者団の質問を受けた後に向かったUFC327の試合会場で、ルビオ米国務長官から耳打ちされるトランプ氏(11日夜、米フロリダ州マイアミ)
夜の空の下、多くの街灯がついた道路の向こうに、白い複数階の建物が横に大きく広がっている。建物内の照明もたくさんついている

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画像説明, セレーナ・ホテルを会場にしたアメリカとイランの協議は12日早朝まで続いた(12日、イスラマバード)

ホルムズ海峡については、アメリカ中央軍が11日、アメリカ海軍の誘導ミサイル駆逐艦2隻がホルムズ海峡を通過したと発表した。イランが敷設した機雷が航路上にないことを確認するためだとしている。

ソーシャルメディア「X」に投稿した中央軍の発表の中で、中央軍司令官のブラッド・クーパー提督は、「新しい航路を確立するプロセスを本日開始した。自由な商業の流れを促すため、この安全な航路を近く海運業界と共有する」と述べた。

これについてイランは、アメリカ側の主張を否定した。イラン国営のファルス通信は、軍司令部報道官の話として、「アメリカ艦艇がホルムズ海峡に接近し、進入したとする米中央軍司令官の主張は、断固として否定する」と伝えている。

報道官は、「いかなる船舶の通航についても、その主導権はイラン・イスラム共和国の軍にある」と述べたという。

政府専用機を降りたスーツ姿のヴァンス氏が、スーツ姿のパキスタン高官たちに囲まれ、右手の人差し指を立てて話しながら前へ向かって歩いている

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画像説明, イランとの交渉のためパキスタンに到着したJ・D・ヴァンス米副大統領(中央)と、出迎えたパキスタンのムニール陸軍参謀総長(左)やダール外相(右)(11日、イスラマバード)
夜の空港に敷かれた赤いじゅうたんの上を、迷彩服姿のムニール元帥と、ダークスーツ姿の他の高官たちが横に並び、前に向かって歩いている

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画像説明, パキスタンに到着したイラン代表団と出迎えたパキスタン政府高官たち。左から、パキスタンのムニール陸軍参謀総長、イランのアラグチ外相、イランのガリバフ議長パキスタンのダール外相(10日夜、イスラマバード)

レバノンの死者2000人超える

他方、イスラエルがレバノン攻撃を続けていることが、停戦協議の不安材料となっている。アメリカとイランがパキスタンで協議を続ける間、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は11日、レバノンとの和平協議を「承認」したと発表した。

ネタニヤフ首相は、レバノン側が過去1カ月の間、直接協議の開始を何度も働きかけてきたと述べ、「私は(協議を)承認した。ただし条件が2つある。ヒズボラの武装解除と、世代を超えて続く真の和平合意だ」と強調したとAFP通信は伝えている。

レバノンとイスラエルの両政府は10日夜、ワシントンで14日から停戦について協議すると発表した。両国のアメリカ大使が電話で話し合い、停戦協議の手はずを整えたとされている。

レバノン保健省は11日、3月初めにイスラエルが攻撃を開始して以来、レバノン国内の死者数が2000人を超えたと発表した。

国営通信社ナショナル・ニュース・エージェンシーによると、保健省の保健緊急オペレーションセンターは、3月2日以降に2020人が死亡し、6436人が負傷したとしている。

この発表に先立ち保健省は、イスラエルがレバノン南部トゥファフタを攻撃し、8人が殺害され、9人が負傷したと発表していた。負傷者のうち5人は重体だという。

こうした状況でレバノンのタレク・ミトリ副首相はBBCに対し、協議を「意味のあるもの」にするためには、イスラエルがレバノン攻撃を停止するべきだと話した。

ミトリ副首相は、「私はそれが交渉の条件だと言っているわけではない。しかし、会合を有意義なものにするには、たとえ暫定的であっても、敵対行為の停止が何かしら必要だと思う」と述べた。

「何十人、何百人もの人が殺されたり負傷したりしている最中に、意味のある協議にどうやって取り組めるというのか。あらゆる問題について話し合うための、本当の交渉の準備ができるというのか」と副首相は強調。「建設的な対話ができるようにするには、(攻撃を)やめさせて、(攻撃を)いったん保留にしなくてはならない。それでも私たちは、国務省で火曜日に開かれる会合には出席する」と話した。

機内の座席に置かれた子供たちの写真を見つめるスーツ姿のアラグチ氏

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画像説明, イスラマバードに向かう機内の座席には、イラン南部ミナブの学校への攻撃で殺害された子供たちの顔写真や、焼けたスクールバッグが置かれた。アラグチ外相がそれを見つめる写真を、イラン外務省が公表した