ロシアのウクライナ全面侵攻、5年目に突入 キーウなどで犠牲者追悼

ウクライナ兵の顔写真とウクライナ国旗が並んでいる。手前には黄色や白、水色の花が手向けられている

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画像説明, ロシアによるウクライナ全面侵攻は、24日で丸4年を迎えた。画像は戦没者を追悼する写真や花(ウクライナ・キーウ)
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ポール・アダムス外交担当編集委員(キーウ)、ラウラ・ゴッジ

ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始してから、24日で丸4年が経過した。しかし、この戦争の終わりは見えていない。ウクライナ各地ではこの日、市民らが戦争の犠牲者を悼んだ。

ロシアによる戦争が5年目に突入する中、ウクライナ軍は自国を制圧しようとするロシア軍に抵抗し続けている。双方の軍事的損失は増え続け、ウクライナ国民はほぼ毎日、空爆にさらされている。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は24日、「ウクライナがこの戦争を選んだことは一度もない」と述べ、「我々は独立を守ってきた。国家としての地位を失ってはいない」と付け加えた。

一方でクレムリン(ロシア大統領府)は、自分たちの戦争目的が「まだ完全には達成されていない」ことを認め、ウクライナへの攻撃を継続する意向を示した。クレムリンは当初、侵攻開始から数日で首都キーウを制圧できると信じていた。

クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、西側のウクライナ支援が紛争を拡大させ、「ロシアと西側の対立」へと変化させたと、クレムリンがかねてから繰り返している非難を改めて口にした。

ロシアは現在、ウクライナ領土のおよそ20%を占領しているが、ウクライナ軍は東部ドンバス地方(ドネツク州とルハンスク州を指す)全域が占領されるのを阻止している。

各地で追悼、連帯感が伝わる日に

キーウでは同日午前10時に1分間の黙とうが行われた。ウクライナにとって暗い日ではあったが、連帯感が確かに感じられる日でもあった。

キーウのマイダン(独立)広場では、集まった人々が頭を下げ、静かに祈りをささげた。ロシアによる全面侵攻開始以来、この場所に手向けられる死者を追悼する旗は増え続けている。

首都中心部にある聖ソフィア大聖堂では、11世紀の壮大なモザイク画が広がる空間の中で、ゼレンスキー大統領と妻のオレナ・ゼレンスカ氏が祈りの儀式を執り行った。

フィンランドのアレクサンデル・ストゥブ大統領、スウェーデンのウルフ・クリステション首相、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長ら、欧州の最も強力な支持者たちの一部も同席した。

キーウの西に位置するブチャには次々と人が訪れ、戦死した兵士たちが眠る、黒い花崗岩の墓石に花を手向けた。この町では2022年、ロシア軍による最悪の惨劇が起きた。

戦死した戦友の墓を訪れたというワレンティンさんは、「この戦争で、多くの命が奪われた」と語った。

「不幸なことに、(この犠牲は)私たちにとって多すぎる」、「誰もこんなに長引くとは思っていなかった」とも、ワレンティンさんは述べた。

こうした場所は、この広大な国のいたるところに存在する。戦争で死亡した人々の写真のそばで、何千ものウクライナの青と黄の国旗が風ではためく様子は、多くの場所で見られる光景だ。

戦場で命を落とす人、家族と離れ離れになる人、ロシアによる冬場のインフラ攻撃を受け、暖かさと明かりを求める人――。この戦争はあらゆるかたちで、ウクライナの国民一人ひとりに影響をおよぼしている。

「ウクライナは存在する」

ゼレンスキー大統領は24日朝、20分弱のビデオ演説を投稿。動画には、キーウ中心部の大統領府の地下通路を歩くゼレンスキー氏の姿が映っている。パイプやケーブルが張りめぐらされたその空間は、第2次世界大戦下の、ウィンストン・チャーチル英首相(当時)の執務室を思い起こさせる。

ゼレンスキー氏は、ウクライナが膨大な犠牲を被ってきたことを認めつつ、次のように述べた。「我々は当然ながら、こう宣言する。我々は独立を守ってきた。我々は、国家としての地位を失ってはいない。ウクライナは地図上にだけ存在しているのではないと」。

この演説動画は、ロシアによる全面侵攻が始まった2022年2月以降、ゼレンスキー氏と側近らが大半の時間を過ごしてきた「世界」の一端を、めずらしく映し出している。

「戦争が始まった当初、私はここで、世界の指導者たちと最初の協議を行った」と、ゼレンスキー氏は声が反響する地下通路を歩きながら語った。

開戦当時、ゼレンスキー氏の命は数日で尽き、ウクライナは陥落するだろうというのが、大方の見方だった。

しかし実際は違った。開戦から丸4年となった今も、ウクライナは東部全域で、ロシア軍に対して持ちこたえている。ロシア側の人的および物的代償は、かつてないほど増大している。

「有志連合」が協議

24日には、欧州によるウクライナ支援の「有志連合」の会合も開かれ、多くの指導者がウクライナと電話で協議した。イギリスとフランスが主導する「有志連合」には、現在約35カ国が参加している。そのうちのいくつかの国は、ウクライナでの停戦が実現した際に、それが確実に維持されるよう、ウクライナに部隊を派遣する意向を示している。

イギリスのキア・スターマー首相は、ビデオリンクを通じて会合に参加し、ロシアが優勢だと考えるのは「誤り」だと、各国首脳に語った。また、ロシアは過去1年間、「ウクライナ領土の0.8%を占領するのに、50万人もの多大な代償を払った」とも述べた。

一方でフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、和平交渉が停滞していることを認めたうえで、ウクライナで「短期的な和平」を実現できる可能性について、自分は「非常に懐疑的だ」と述べた。

「はっきりさせよう。ロシア側には、平和を実現する意思などない。我々が考えるような強固で確固たる平和への意思もない」と、マクロン氏は述べた。

ウクライナでロシア軍が占領している地域を示した図。東部から東南部にかけてロシア軍が占領している。2014年にロシアが一方的に併合したクリミアも含まれている。出典は米戦争研究所とアメリカン・エンタープライズ研究所の「重大脅威プロジェクト」(日本時間2月19日午前6時時点)

ロシア、英仏がウクライナへの「核爆弾」供与を企てていると

ロシアではこの日、連邦保安庁の理事会が開かれ、ウラジーミル・プーチン大統領が演説した。ウクライナでの戦争について実質的な言及はなかったが、イギリスとフランスがウクライナに核爆弾を提供することを企てていると、根拠を示さずに主張した。

ロシア対外情報庁(SVR)は先に声明で、イギリスとフランスの政府は「自分たちが切望するロシアへの勝利を達成できる見込みがない」と考え、ウクライナが核兵器または「汚い爆弾」を手に入れるのを助けようとしていると主張していた。

英首相官邸は、こうした主張は「ウラジーミル・プーチンによる、明らかな目くらましの試み」で、「何の真実も含まれていない」と反論した。

停滞する和平協議

ロシアとウクライナの代表団は、アメリカの仲介で、和平協議を複数回行っているが、突破口はいまだ見えていない。

ウクライナ東部地域では、数千人ものウクライナ人がその土地を守ろうと戦い、命を落としてきた。東部地域の割譲を求めるロシアの要求は、多くの人にとって受け入れがたいものだ。

「交渉に関して、その進展を妨げる人物が1人いる」と、スターマー英首相は切り出した。「それはプーチンだ。ほかの誰でもなく、プーチンだ」。

アメリカのドナルド・トランプ大統領を含む、主要7カ国(G7)の首脳は共同声明で、ウクライナと、その主権領土の防衛、およびウクライナの存在する権利に対する揺るぎない支持を改めて表明した。

ウクライナをめぐる問題で、G7が共同声明を発表するのは、トランプ氏が2期目に再選して以来初めて。

黒いコートを着たゼレンスキー大統領夫妻や各国首脳らが、横一列に並び、両手で追悼用の赤い飾りランプを持っている

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ウクライナの交渉団は、ウクライナでの停戦と和平実現に向けたアメリカの仲介の取り組みについて、好意的に語っている。

しかし、トランプ氏はこの1年、ウクライナに不利な合意に応じるよう圧力をかける様子や、停戦に向けた進展がないことへのいら立ちをあらわにしてきた。これらを理由に、トランプ氏の直感や信念に疑問を抱く人は多い。

ウクライナ政府は、ロシア側はアメリカの安全の保証にのみ耳を傾けるとみている。つまり、安全の保証こそが、いかなる和平合意においても鍵になると考えている。

ゼレンスキー氏はビデオ演説で、トランプ氏がいつかキーウを訪問することを望んでいると、改めて述べた。「私は確信している。ウクライナに来て、私たちの生活や苦闘を自分の目で見て初めて、この戦争が本当にどういうもので、誰のせいで起きているのかが理解できると」。

ゼレンスキー氏はこの日、ウクライナにはアメリカ製地対空迎撃ミサイル「パトリオット」の発射装置と併用するための迎撃ミサイルが必要だとも強調した。

1月と2月のロシアによる空爆で、ウクライナが保有するミサイルは枯渇し、複数の都市やエネルギーインフラが無防備な状態に置かれている。ウクライナは現在、侵攻開始以来、最も厳しい冬に直面している。

軍人と民間人の死傷者数は増え続けている。BBCは、これまでに戦死したロシア兵の氏名を18万6000人以上確認している。

戦場では、多くの死者は記録されていないため、実際の死者数ははるかに多いとみられる。

イギリスのアル・カーンズ軍務担当閣外相は、ロシアが「想像できないほど」の戦争の代償を負っているとしている。

カーンズ氏によると、英国防省は、ロシア側の死傷者数を125万人と推計している。これは、第2次世界大戦でのアメリカの死傷者数を上回る。

ゼレンスキー氏は先月、ウクライナ側の「公式の」戦死者数は5万5000人に上ると明らかにした。ただ、ウクライナ側の複数の情報筋の話をBBCが照合したところ、実際には最大20万人に達する可能性が示された。

その多くは、いまやウクライナ各地に点在する、広大な軍事埋葬地に眠っている。