トランプ氏、ノーベル賞受賞しなかったこととグリーンランド領有を結び付け ノルウェー首相へのメッセージで

マイクに向かって話すトランプ氏

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アメリカのドナルド・トランプ大統領が18日、昨年のノーベル平和賞を受賞しなかったことで、もはや自分には平和についてのみ考える責務はないと、ノルウェーのヨナス・ガール・ストーレ首相にテキストメッセージで伝えていたことが明らかになった。

ストーレ首相へのメッセージで、トランプ氏は自分に賞を与えなかった責任がノルウェーにあると非難した。

これに対しストーレ首相は、平和賞を決めるのはノルウェー政府ではなく独立した委員会だと説明している。昨年の平和賞は、南米ヴェネズエラの野党指導者マリア・コリナ・マチャド氏に贈られた

トランプ氏はストーレ首相へのメッセージでさらに、デンマークの自治領グリーンランドをアメリカが「完全かつ全体的支配」する必要があると主張した。

後に米NBCニュースに、武力併合を計画しているのかと問われると、大統領は「ノーコメント」と答えた。

ストーレ首相は19日、トランプ氏とのやりとりは確かに自分とのものだと認めた。

デンマークは北大西洋条約機構(NATO)加盟国。NATOは、加盟国が外部から攻撃を受けた場合、加盟国同士がお互いを防衛するという原則で成り立っている。1949年の創設以来、加盟国同士がお互いを攻撃したことは一度もない。デンマークのメッテ・フレデリクセン首相は、アメリカが軍事力でグリーンランドを奪うようなことがあれば、それはNATOの終わりを意味すると述べている。

それでもトランプ氏がグリーンランド領有の必要性を繰り返し、反対する欧州8カ国に追加関税を課すと脅すなど緊張が高まる中、ストーレ氏はフィンランドのアレクサンデル・ストゥブ大統領と連名でトランプ氏へメッセージを送り、「我々は全員、この状況を沈静化させるために取り組むべきだ。私たちの団結を必要とすることが、周りであまりにたくさん起きている」と述べた。

ダークスーツを着たトランプ氏が、ノーベル平和賞のメダルが入った金色のフレームを両手で持ち、笑顔でカメラを見ている。左隣りには白いスーツを着たマチャド氏が立ち、フレームを片手で持ちながらほほえんでいる

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画像説明, ヴェネズエラの反体制派指導者マチャド氏(右)からノーベル平和賞のメダルが入ったフレームを贈呈されたトランプ大統領と、(15日、ホワイトハウス)

トランプ氏はこれに返信し、「自分は八つ以上の戦争を止めたが、それでもあなたの国が私にノーベル平和賞を与えないと決めたことをふまえると、私はもはや純粋に平和についてのみ考える責務を感じない。平和が常に最優先なのはは変わらないが、自分は今後、アメリカにとって何が正しくて適切かを考えられる」と書いた。

さらにトランプ氏は、デンマークではロシアや中国からグリーンランドを守れないと主張したほか、「そもそもどうして彼らに『所有権』があるんだ? 文書などない。ただ何百年も前にボートがそこに到着しただけだ。でも我々だってあそこにボートを着けていたんだ」と書いた。

「私はNATO創設以来、他の誰よりもNATOのためにたくさんのことをしてきた。なのでNATOは今、アメリカのために何かをするべきだ」とも、大統領は書いた。

そのうえで、トランプ大統領は「我々がグリーンランドを完全かつ全体的に支配しない限り、世界は安全ではない」と結んだ。

動画説明, グリーンランドめぐるトランプ氏の脅しに欧州は……対話か「貿易バズーカ」か

NATOで最も影響力が強いのはアメリカだが、欧州のNATO加盟諸国はデンマークを支持しており、先週にはいくつかの国が象徴的な措置として小規模の部隊をグリーンランドへ派遣した

デンマーク政府とグリーンランド自治政府は先週、他のNATO加盟国と共に、北極圏および北大西洋における軍事プレゼンスと演習活動の増強を決定した。

しかしトランプ氏は17日、イギリスを含むNATO加盟国8カ国に対し、自分のグリーンランド取得計画に反対すれば2月1日から物品に税率10%の関税を課すと発表し、6月までに25%へ引き上げると脅した。

グリーンランドは人口密度がきわめて低い土地だが、北米と北極の間に位置するため、ミサイル攻撃の早期警戒システムや、船舶監視の拠点に適している。

トランプ氏はかねて証拠を示さないまま、グリーンランドがアメリカの国家安全保障にとって不可欠だと繰り返し、「ロシアと中国の船がそこら中にいる」と主張してきた。

アメリカはすでに第2次世界大戦以来、グリーンランド北西端のピトゥフィク基地に兵100人以上を恒久的に駐留させている。

デンマークとの既存の協定では、アメリカは自らの判断でどのような規模の部隊でもグリーンランドに派遣する権限を持っている。

イギリスのキア・スターマー首相は19日、グリーンランドの将来の地位に関する決定は「グリーンランドの人々とデンマーク王国だけに属する」と述べ、同盟国に対して関税をこうして使うことは「間違っている」と批判した。

同日にはデンマークのトロルス・ルン・ポールセン国防相が、グリーンランド自治政府のヴィヴィアン・モッツフェルト外相と共に、NATOのマルク・ルッテ事務総長と会談した。

八つの戦争とは

トランプ氏は、ノーベル平和賞を受賞したいという思いを隠そうとしていない。

19日には、「ノルウェーは(ノーベル賞を)完全に支配している。彼らが何と言おうと」と発言。「彼らは関係ないと言いたがるが、すべて関係している」とNBCニュースに述べた。

トランプ氏は、昨年1月に第2次政権が始まって以来、自分は八つの戦争を終わらせているので、平和賞を受ける資格があるのだと主張している。

ホワイトハウスはこれについて、(1) イスラエルとパレスチナ・ガザ地区のイスラム組織ハマス、(2) イスラエルとイラン、(3) パキスタンとインド、(4) ルワンダとコンゴ民主共和国(DRC)、(5) タイとカンボジア、(6) アルメニアとアゼルバイジャン、(7) エジプトとエチオピア、(8) セルビアとコソヴォ――が、該当する紛争だと説明してきた。

BBCヴェリファイ(検証チーム)は、 これについてトランプ氏の主張を検証。ホワイトハウスが挙げる「戦争」の中には、長年の緊張関係の末に数日しか続かなかったものもあるほか、例えばエジプトとエチオピアのように一切戦闘がなかった例もあると指摘している。

また、ルワンダとDRCの間では、和平合意締結後も戦闘が続いている。

昨年のノーベル平和賞はヴェネズエラの野党指導者マチャド氏に与えられた。今年1月3日に米軍がヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を麻薬密売などの理由で拘束し、首都カラカスから米ニューヨークへ移送した際には、トランプ氏はマチャド氏を次の指導者として支持せず、代わりにマドゥロ氏の副大統領を暫定政府の指導者として支持した。

マチャド氏はトランプ氏を称賛しており、15日にホワイトハウスで会談した際には、自分が授与された平和賞のメダルをトランプ氏に手渡した。

ノーベル委員会は声明で、「ノーベル賞は一度発表されると、取り消しや共有、他者への譲渡はできない」、「決定は最終的なもので、永遠に有効だ」と発表している。