トランプ氏、ヴェネズエラの大統領夫妻を拘束し国外移送と発表 米軍が首都を空爆

粗い画像。夜空を背に黒いシルエットになっている山の稜線の向こうで、オレンジ色の炎と煙が上っている。手前に市街地が広がる

画像提供, Reuters

画像説明, ヴェネズエラの首都カラカスで3日未明、複数の爆発が発生し、炎と煙の柱が立ち上った(ロイター通信が入手した動画より)

南米ヴェネズエラの首都カラカス周辺で3日午前2時(日本時間午後3時)ごろ、複数回の爆発音と、低空飛行する航空機の音が確認され、一部で停電が発生した。ヴェネズエラのマドゥロ政権は、「アメリカによる軍事侵攻」を非難し、全土に非常事態宣言を出した。その約3時間後、ドナルド・トランプ米大統領はソーシャルメディアで、ヴェネズエラに対して「大規模な攻撃を実施し、成功した」と発表。「マドゥロ大統領と妻を捕らえ、ヴェネズエラ国外に空路で移送した」と投稿した。

トランプ氏は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、「アメリカ合衆国は、ヴェネズエラとその指導者のニコラス・マドゥロ大統領に対して、大規模な攻撃を成功させた。マドゥロはその妻と共に捕らえられ、国外へ移送された」と説明。さらに、「この作戦はアメリカの法執行機関と連携して行われた。詳細は追って発表する。本日午前11時にマール・ア・ラーゴで記者会見を行う」と書いた。

BBCがアメリカで提携するCBSニュースは、アメリカ政府筋の話として、米陸軍のデルタフォースがマドゥロ大統領夫妻を拘束したと伝えた。デルタフォースは、対テロ作戦や人質救出などにあたる陸軍の特殊精鋭部隊。

トランプ政権はこれまでに、マドゥロ大統領の拘束につながる情報に5000万ドルの懸賞金を提供するとしていた。

トランプ氏は3日午前9時過ぎ、米FOXニュースに対して、ニューヨーク州で起訴されたマドゥロ夫妻はヘリコプターと米軍艦イオージマでニューヨークへ向かっていると明らかにした。

「まさにまるでテレビ番組を見ている」みたいに、マドゥロ大統領夫妻の拘束を眺めていたのだとして、「その速度と暴力を見たなら、すごいことだった」とトランプ大統領はFOXニュースに話した。

「2人は大勢を殺した。大勢のアメリカ人と、自国民さえも」とトランプ氏は述べ、「4日前からこうするつもりだったが、天候が完璧ではなかった。(中略)いきなりすべてが開けたので、『行け』と言ったんだ」と話した。

また、マドゥロ氏と「1週間前」に話した際に「諦めないとだめだ、降伏しないとだめだ」と告げたのだと言い、「もっと外科手術的に精密な、はるかに強力なことが必要だった」と話した。

トランプ氏はさらに、マドゥロ大統領夫妻を拘束した時、夫妻は「強硬な鉄で囲まれた」「家というよりは要塞みたいな家」にいたのだと述べた。

トランプ氏はこのほか、アメリカは年間数十万人もの国民を麻薬のため失っているとして、「そんなことは今後もう許さない」のだと話した。

また、アメリカが今後ヴェネズエラの石油産業に「強力にかかわっていく」と話した。

パム・ボンディ米司法長官は、マドゥロ大統領を「麻薬テロの共謀、コカイン輸入の共謀、機関銃および破壊的装置の所持、アメリカに対して機関銃および破壊的装置を所持する共謀」の罪状で、ニューヨーク州南部地区の連邦地裁において起訴したと明らかにした。大統領夫人の罪状は明らかにしなかった。

司法長官は、「(夫妻が)間もなくアメリカの領土においてアメリカの裁判所で、アメリカの正義の全面的な怒りに直面する」と述べた。

トランプ氏の「トゥルース・ソーシャル」アカウントのスクリーンショット。「アメリカ合衆国は、ヴェネズエラとその指導者のニコラス・マドゥロ大統領に対して、大規模な攻撃を成功させた。マドゥロはその妻と共に捕らえられ、国外へ移送された」などと書かれている。

画像提供, Reuters

画像説明, ヴェネズエラ攻撃とマドゥロ大統領夫妻の拘束を明らかにしたトランプ氏のソーシャルメディア投稿

トランプ氏の発表の後、ヴェネズエラのデルシー・ロドリゲス副大統領は、大統領夫妻の居場所を政府は承知していないと述べ、2人の「生存の証明」が直ちに必要だと要求した。

ヴェネズエラのヴラディミル・パドリノ・ロペス国防相は、軍隊を直ちに全国に展開すると表明。動画演説で、ヴェネズエラに対する「過去最悪の侵略」を前に、国民が連帯して抵抗するよう呼びかけた。

国防相は演説で、政府は「マドゥロの命令」に従い全軍を配備するのだと述べ、「(アメリカは)我々は攻撃したが、我々は決して屈服しない」と強調した。

これに先立ちマドゥロ政権は、「ヴェネズエラは国際社会に対し、アメリカ合衆国の現政府によってヴェネズエラ領に対して行われた極めて重大な軍事的侵略を拒否し、非難し、告発する」と声明を出していた。

声明は、カラカスへの攻撃が「ヴェネズエラの戦略的資源、特に石油と鉱物を奪取する」こと、そして「国家の政治的独立を強制的に破壊する」ことを目的としていると述べている。

声明は、ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領が、「国家領土全域において外的騒乱状態を宣言する布告を署名し、その実施を命じた」と明らかにした。大統領はさらに、すべての国家防衛計画を「適切な時期と適切な状況下で実施する」よう命じたという。

また、「国内のすべての社会的および政治的勢力に対し、動員計画を発動し、この帝国主義的攻撃を非難する」よう求めている。

この声明発表後に、トランプ氏がマドゥロ大統領夫妻の拘束を明らかにした。

アメリカのマイク・リー連邦上院議員(共和党、ユタ州)は、マルコ・ルビオ米国務長官と電話で話をし、マドゥロ大統領の拘束を確認したと明らかにした。

「(ルビオ長官は)ニコラス・マドゥロがアメリカ国内で刑事訴追され、裁判にかけられるために、アメリカの要員によって拘束されたと私に知らせてくれた」、「マドゥロをアメリカが拘束した今、ヴェネズエラ国内でのこれ以上の行動はとらないだろうと予測している」とリー議員はソーシャルメディアで書いた。

同議員は、米軍の攻撃は「(マドゥロ大統領の)逮捕令状を執行する担当者たちを護衛するためのもの」で、「実際の、もしくは差し迫った攻撃からアメリカの要員を保護するための、憲法第2条に基づく大統領固有の権限範囲に含まれる可能性が高い」と説明した。

動画説明, 爆発で揺れる首都カラカスの上空をヘリコプターが数機飛んでいる

カラカスに住むジャーナリストのヴァネッサ・シルヴァ氏は、窓から爆発を目撃したとBBCに話した。爆発音は非常に大きく「雷よりも強かった」と言い、自宅が振動したと述べた。

山に囲まれたカラカスは谷間にあるため、爆発音は街中に反響した。

「心臓がどきどきして、足が震えていた」とシルヴァ氏は言い、爆発が非常に近かったため恐ろしかったと同時に、非常に正確な攻撃に見えたとも述べた。

シルヴァ氏によると、その後の街は静まり返っているが、大勢が互いにメッセージを送り合い、無事を確認しているという。

キャップをかぶり、襟や肩に金の識別章がついたカーキ色の上着を着たマドゥロ氏がマイクに向かって立っている。その斜め後ろで、眼鏡をかけて同じキャップをかぶったシリア・フロレス氏が夫を見ている

画像提供, Reuters

画像説明, 昨年12月28日にヴェネズエラ軍に対して年末のあいさつを行った際のマドゥロ大統領(右)と妻のシリア・フロレス氏

マドゥロ大統領は1日、国営テレビが放送したインタビューで、麻薬取引と石油に関して、アメリカと「彼らが望む場所と時間で」協議に応じる用意があると述べていた。

マドゥロ氏はまた、アメリカがヴェネズエラの港湾施設を攻撃したというトランプ大統領の発言について、質問への回答を避けた。この攻撃は、米中央情報局(CIA)がヴェネズエラ国内で実施したとされる最初のもの。

マドゥロ氏のこうした発言に先立ち、トランプ氏は昨年12月29日、ヴェネズエラの麻薬船が「麻薬を積み込む」ための施設ををアメリカが攻撃し、「大規模な爆発」があったと述べていた。

トランプ氏はこのところ、マドゥロ氏への圧力を強めていた。トランプ氏は、マドゥロ政権が自国の「刑務所と精神病院を空にし」、その収容者のアメリカ移住を「強制している」と非難。また、ヴェネズエラが石油の売り上げを麻薬関連犯罪の資金に使ってしているとも主張していた。

アメリカは昨年9月以降、麻薬密輸船だとする船舶に対して、太平洋とカリブ海で30回の攻撃を繰り返している。9月2日の最初の攻撃以来、国際水域で110人以上が死亡している。

暗闇の中で建物の一部がオレンジ色に光り、オレンジ色の煙が上がっている

画像提供, Reuters

画像説明, 停電の中、カラカスのティウナ基地付近で炎と煙が立ち上った(3日、カラカス)

もしマドゥロ夫妻が強制排除されたなら影響は

アイオニー・ウェルズ南米特派員

もしマドゥロ大統領が本当にヴェネズエラから排除されたのだとして、次に何が起きるのかは不明だ。

アメリカが中南米に対しこれほど直接的な介入を行ったのは、1989年にパナマに侵攻し、当時の軍事指導者マヌエル・ノリエガ将軍を翌1990年1月3日に拘束して以来のことだ。

トランプ氏が述べているように、もしマドゥロ氏をヴェネズエラから強制移送したのならば、これはトランプ政権内の一部の強硬派にとって大きな勝利と見なされるだろう。中には、ヴェネズエラの政権交代を公然と支持してきた人物もいる。

アメリカは、マドゥロ氏が犯罪的な麻薬取引組織を率いていると非難してきたが、本人はこれを否定している。

マドゥロ氏は2024年7月の選挙で3選を主張したが、国際社会のほとんどはこれが自由でも公正でもなかったと退けた。アメリカはそれ以来、マドゥロ氏をヴェネズエラの正統な大統領とは認めていない。

一方ヴェネズエラは、埋蔵量が世界最大とされる自国の石油資源の利益をアメリカが奪おうとしているのだと非難している。

しかし、マドゥロ氏が本当にヴェネズエラからいなくなったのだとして、ヴェネズエラ国内で今後何が起きるのかは本当に不透明だ。

アメリカの介入を支持する人々は、これによってノーベル平和賞受賞者マリア・コリナ・マチャド氏2024年選挙の野党候補エドムンド・ゴンサレス氏が率いるヴェネズエラ野党の政権掌握が可能になると主張する。

しかし、そう簡単にはいかないと考える人たちもいる。

ヴェネズエラ軍や準軍事組織はマドゥロ氏に忠誠を誓っている。マドゥロ氏に批判的な人々でさえ、アメリカの直接介入によって国内がいっそう不安定になることを懸念してきた。

しかし、マドゥロ氏拘束のニュースを受けて、親しい側近たちが自分の行く末に不安を抱くのは確実だ。

地上で黒焦げになった車輪付きの軍事装置。周りの木々がなぎ倒されている

画像提供, Reuters

画像説明, 破壊された対空攻撃装置(3日、カラカス近郊ラ・カルロタ基地)

現代世界で前例のない事態

ジョー・インウッド国際情勢特派員

もしアメリカが本当にデルタフォースをヴェネズエラの首都の中心に送り込み、大統領とその妻を連れ出したのなら、これはかつて見たことのない事態だ。

最も近い先例は、1990年に米特殊部隊がパナマの指導者マヌエル・ノリエガ将軍を拘束した時のことだろう。まさに今日と同じ、1月3日の出来事だった。

マドゥロ氏もノリエガ氏も、選挙結果の正当性が疑われる中で勝利を主張し、両者ともアメリカから麻薬取引への関与を非難された。そして、どちらの拘束の前にも、アメリカが軍事作戦を大々的に拡大していた。

しかし、ノリエガ将軍の拘束は、アメリカとパナマの短期間の戦争を経てのことだった。両軍の力の差が歴然としていた戦いで、パナマ軍はたちまち敗退した。

その渦中でノリエガ氏はヴァチカン大使館に避難し、11日間そこに留まった。

最終的にノリエガ将軍は「心理戦」によって大使館退去を受け入れた。米軍は大使館を包囲し、ザ・クラッシュ、ヴァン・ヘイレン、U2などによる大音量のロック音楽を絶え間なく流し続けたのだ。

ノリエガ氏はアメリカへ送還され、そこで麻薬関連の罪で有罪判決を受けた。

マドゥロ大統領を拘束する作戦の詳細はまだ明らかになっていない。しかし、通常の地上部隊を使用せずに大統領とその妻を連れ出すことに成功したという点で、さらに大胆な作戦だったようだ。

マドゥロ氏の今後の運命は不明だが、アメリカの刑務所で終えると考えるのが自然だろう。

事態の激化、これまでの経緯は

ウィル・グラントBBC中米・キューバ特派員

南米アメリカ大陸でこれほど大規模な米軍の作戦行動が実施されるのは、冷戦以来初めてだ。どういう経緯を経てここに至ったのか。

・トランプ政権は昨年9月から、ヴェネズエラの海域を通過する麻薬を積んだとされる高速艇への空爆を続けた。攻撃の対象は東カリブ海、太平洋などへ拡大し、これまでに110人が死亡している

・米軍は制裁対象の石油タンカー2隻を押収し、3隻目を追跡中

・昨年のクリスマスには、トランプ氏が初の地上攻撃に言及した。その詳細は不明だが、BBCが目撃証言を調べたところ、石油資源が豊富な北西部スリア州で行われたとみられる

ヴェネズエラ政府は声明で、アメリカ政府に直接の責任があると非難し、政府の支持基盤に対し、全国各地で行動を起こすよう呼びかけている。