イラン大統領、近隣諸国に謝罪するも降伏は拒否 イランからの攻撃続くと周辺国

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イランのマスード・ペゼシュキアン大統領は7日、アメリカとイスラエルによる攻撃を受けた自国が、湾岸諸国など周辺国を攻撃したことについて、「謝罪する」と表明した。一方で、無条件降伏を拒否し、イランは「最後まで戦う」と述べた。これに先立ちドナルド・トランプ米大統領は前日、イランの無条件降伏を要求していた。トランプ氏はイラン大統領によるこの演説を受けて、イランは周辺諸国に「謝罪し、降伏した」と強調した。しかし、周辺諸国はイランからの攻撃が続いていると報告している。
国営イラン放送が伝えた映像でペゼシュキアン大統領は、「攻撃された周辺国に謝罪する必要があると私は考える」と述べた。「我々は周辺国への侵略を意図していない」として、地域の「平和と安定」を確立するための協力を呼びかけた。大統領は、イラン最高指導者だったアリ・ハメネイ師が殺害された後、国を率いる臨時評議会の一員。
ペゼシュキアン大統領は室内で椅子に座った状態で演説した。原稿を読んでいるようには見えず、ハメネイ師の肖像と小さなイラン国旗、植物が横に置かれていた。
ペゼシュキアン氏は、2月28日にアメリカとイスラエルによるイラン攻撃が始まった後、「随意に射撃してよし」という命令を受けて、近隣諸国への攻撃が行われたと説明。
「今後は先に攻撃されない限り、周辺国を攻撃してはならない」と指導部が決定し、軍に伝達したと大統領は話した。臨時評議会は、イランへの攻撃が周辺国の領土から発せられたものでない限り、周辺国を攻撃しないよう軍に命じたという。
ペゼシュキアン大統領は続けて、「この瞬間を利用してイランを攻撃しようと考える者たちは、帝国主義の操り人形になってはならない」と述べ、イスラエルやアメリカを支援することは「名誉や自由への道ではない」と付け加えた。
このメッセージはイラン国内で一様に歓迎されたわけではない。一部の強硬派は、弱腰すぎると批判している。アメリカとイスラエルの攻撃で、強硬派の政府首脳の多くが殺害されたのを受け、階級が下の政府関係者たちは国の方向性を不安視している。大統領の今回のメッセージは、そうした国内の状況を反映している可能性がある。
これが本当に周辺諸国に対するイランの自制につながるのか、それとも暫定指導部による時間稼ぎに過ぎないのか、はっきりしない情勢となっている。
イラン大統領府の報道官は、「ペゼシュキアン大統領のメッセージは明確だ。地域の諸国がアメリカの攻撃に協力しないなら、我々は彼らを攻撃しないということだ」と述べた。
そして、「イラン・イスラム共和国は決して力に屈しない。米軍基地から攻撃があれば、(臨時評議会の)指針に従い、我々の強力な軍が断固として対応する」とした。
駐イギリスのセイエド・アリ・ムサヴィ・イラン大使は7日、BBCに対し、「アメリカとイスラエルによる侵略が続くなら、我々は防衛を続ける」と述べた。
BBC番組「サンデー・ウィズ・ローラ・クンスバーグ」でムサヴィ大使は、「自衛」がイランの方針だと発言。中東地域の米軍基地への攻撃を停止するかという質問には、「隣国を攻撃しないという意志がイランにはある」と答えた。
そのうえで大使は、「それはアメリカとイスラエル政権の行動次第だ。もし侵略が続くなら、我々は間違いなく自衛する。そして、(アメリカとイスラエルが中東各地の)軍事基地を使おうとするなら、我々はそうしたくはないが、間違いなく適宜、自衛する」と話した。
大使は、イランを標的にする基地、財産、施設は「正当な標的」と見なされるとも述べた。

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トランプ氏は、イラン大統領の発言を踏まえたとみられる文章を、自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿。イランは「周辺の中東諸国に謝罪し、降伏し、もはや彼らを攻撃しないと約束した」と書いた。
トランプ氏は、「アメリカとイスラエルの絶え間ない攻撃があったからこそ、この約束につながった」と主張した。
しかし、イランは攻撃を完全に停止したわけではなく、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ国際空港付近ではドローン攻撃とみられる事態が確認されている。
UAEは、イランからの「ミサイルおよびドローン」の攻撃に対応していると発表。同国国防省は住民に対し、迎撃のため防空システムが稼働していると伝えている。
カタールもミサイルを迎撃したと明らかにした。
こうした中でトランプ氏は後に、「イランは今日、とても激しい攻撃を受ける!」と投稿。「現在まで標的に含まれていなかった地域や人々」に対してアメリカが「完全な破壊と確実な死」をもたらす可能性が、「真剣に検討されている」と述べた。
【解説】 本当にイランを代表しているのか
ジョン・シンプソンBBC世界情勢編集長
イランのペゼシュキアン大統領が、湾岸諸国への攻撃について謝罪し、イランへの攻撃がそれらの国々の領土から発せられない限り攻撃しないと約束した。このことは、融和のしるしのように見える。
しかし、ペゼシュキアン大統領は本当にイランを代表しているのだろうか。
彼は選挙で選ばれた大統領だが、故ハメネイ師の息子モジタバ・ハメネイ師や、イスラム革命防衛隊の指揮官たちといった強硬派と比べると、同じような権限を持たない。
ペゼシュキアン大統領は元心臓外科医で、2024年の大統領選で穏健派として選出された。イランの権力構造の中では常に局外者だった。
自分はアメリカが戦争終結後に交渉できる相手だと示すため、合図を送っているのだろうか。
強硬派について言えば、この段階で融和姿勢を示そうとすることは考えにくい。
彼らはもう長年、アメリカとイスラエルの攻撃に備えてきた。そして彼らは、信仰のための自己犠牲を重視するイスラム教シーア派の精神で教育されている。
指導部で実際に力を持つ者たちが、抵抗を続けるつもりでいるのは確実だ。アメリカとイスラエルの猛攻を生き延びることができれば、それ自体が一種の勝利になると彼らは考えている。












