【解説】 イラン指導者をまとめて排除、その背景の戦略は 今後はどうなるのか

ビルなどの建物が並び、背後にオレンジ色に光る煙が上がっている

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画像説明, イランの首都テヘランではアメリカとイスラエルの攻撃が続き、大きな炎と煙が上がった(1日)
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ゴードン・コレーラ、BBC安全保障アナリスト

アメリカとイスラエルは、イラン空域の一部の制空権を掌握したため、戦闘機で思いのままに標的を攻撃できるとしている。

両国はまた、諜報活動で自分たちが一定の優位にあると示してきた。それによって、何人ものイラン指導者の居場所を特定し、殺害してきた。

しかし、この状況の背景にはどのような戦略があるのか? 混乱を作り出すことへの注力が、その一つのようだ。

今回の軍事作戦における最初の動きは、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師の施設への攻撃ではなかった。まずは、米軍のサイバーコマンドと宇宙コマンドのハッカーたちと、イスラエル軍の同種のスタッフたちが、それぞれ動いたのだ。

複数の米軍関係者によると、両軍のハッカーたちが、イランの状況把握能力を阻害し、通信や対応を不可能にした。

その優位性を生かし、アメリカとイスラエルはイランの上級幹部たちを複数の場所で攻撃した。この要人たちの行動は、米中央情報局(CIA)やイスラエル情報機関モサドなどが、何カ月もかけて追跡していた。

これができたのはおそらく、イランの通信システムにかねて技術的に侵入していたことと、多くの場合はモサドの指揮で人間によるスパイ活動を地上で展開していたからだろう。

結果は驚くべきものだった。イランの軍参謀総長、国防相、革命防衛隊トップなどが殺害された。

要人への攻撃を主導したのは、イスラエルだったとみられている。

ただしアメリカも、攻撃の第1波において、イランの指揮統制施設、弾道ミサイル施設、情報インフラを攻撃したとしている。

米統合参謀本部のダン・ケイン議長は2日の記者会見で、この攻撃の明確な目的は、イランの人々を「混乱させ動揺させる」ことだったと述べた。

アメリカとイスラエルが狙ったのは、イランを機能不全に陥れることだった。

だがイランは、政府首脳への攻撃に手堅く備えていたことで知られる。政府関係者らは、自分が死んだ時のために、後継者を複数人指名しておくよう指示されていた(そして、それが誰なのかは秘密にするよう命じられていた)。

それほどまでにリスクを意識しておきながら、政権の最高幹部らが2月28日朝に集まり、結果として多くが殺害された。イランはリスクを承知していただけに、実に意外な展開だ。

ヴァヒディ氏が多数のマイクの前で口を開いている。ダークジャケット、白いシャツを着ている

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画像説明, イラン革命防衛隊の主な指導者が空爆で殺害されたのを受け、アフマド・ヴァヒディ氏(写真)が新たな司令官に任命された(2024年3月撮影)

では、政府首脳の殺害は、この戦争の行方にどんな意味を持つのか。

短期的には、イランが大々的に反撃するのは難しくなるかもしれない。要人殺害が作り出す混乱に、軍事的なメリットはあるが、リスクも伴う。

中東全域に向けて続々と発射されるイランのミサイルやドローンが、今では自動操縦状態となっている既定方針によるものなのか、現場の指揮官らが独自で判断している結果なのか、それともまだ機能している指揮系統を通じて誰かが一元的に出している命令によるものなのか、はっきりしない。

次に問題になるのは、これほど多くの指導者が排除されたことで、イランの戦闘継続や解決策模索に関する判断が根本的に変わるのかどうかだ。

戦争開始の直前に完了したCIAの情報評価では、ハメネイ師の排除によって、革命防衛隊の強硬派による支配が強まる可能性が予測されていた。

誰がイランの新指導者になるにしても、その人は、戦い続けることで体制の存続が確保できるのか、それとも交渉を通じてアメリカの要求に事実上屈すれば体制存続は保証されるのか、判断しなくてはならない。

ただ、そもそも指導者が次々と殺され続けるなら、何かを決めることも、交渉することも、より難しくなる。

アメリカは、ヴェネズエラでニコラス・マドゥロ大統領の後継者となり、アメリカに協力的とみられている、デルシー・ロドリゲス氏のような人物の登場を望んでいるかもしれない。しかし、そうした人がイランにいるのか、いたとしても国を率いることができるのかは不明だ。

広場で黒衣の女性がハメネイ師の写真を手にしながら泣いている。近くに別の女性やひげを生やした人もいる

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画像説明, イランではハメネイ師の死を悼んで多くの人が街頭で集まった

そして最後の、いっそう重要な問題は、一連の殺害がイランの体制転換の可能性を高めるのかどうかだ。

ほとんどの場合、空爆だけでは不十分というのは、歴史が示している。そしてアメリカは、地上部隊投入の意向を全く示していない。

イランでは1月、民衆による抗議行動が暴力的に弾圧された。だが今回は、治安部隊と情報機関を排除すれば、民衆蜂起が成功しやすくなるのではないかと、アメリカはそう期待しているのかもしれない。

トランプ氏はまさにそうした反乱を、改めて呼びかけている。治安部隊員に対しては、武器を置けば免責するとさえ約束している。しかし、イランの現政権は国内に深く根を下ろしており、権力にしがみつくためなら何でもするだろう。

将来の指導層がどうなるか不透明な状況で、イスラエルとアメリカは、イランの政権にできる限りの打撃を与えることを優先しているようだ。

それが変化をもたらすのなら、イラン国民は歓迎するだろう。しかし、そのリスクを負うのは結局のところ、イランの人々だ。