スターマー英首相、米・イスラエルのイラン攻撃めぐりトランプ氏に異論 英は先制攻撃に参加しないと

英下院の緑色の背もたれのベンチを背に、答弁するスーツ姿のスターマー英首相

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画像説明, イギリス下院審議でイラン情勢について答弁するスターマー英首相(2日、ロンドン)
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ジェニファー・マキアナン政治記者

アメリカとイスラエルによるイラン攻撃を受け、イギリスのキア・スターマー首相は2日、イギリス議会の下院で、イギリス政府は「空からの体制転換をよしとしない」と述べ、ドナルド・トランプ米大統領との姿勢の違いを明確にした。

2月28日のイラン攻撃初の下院審議でスターマー首相は、アメリカによる攻撃第1波のために、イギリスの基地使用を認めなかった自身の決定を擁護した。

「トランプ大統領は、最初の攻撃に関与しないという私たちの判断について、異論を示している。しかし、何がイギリスの国益にかなうかを判断するのが、私の責務だ」と、首相は下院議員たちを前に述べた。

ただし、第1波の攻撃に対するイランの反撃が「言語道断」なもので、「私たちの国民と国益と同盟相手への脅威」になったため、3月1日には状況が変わったと、首相は説明。

アメリカおよびイスラエルの攻撃に対するイランの報復が、中東全域のイギリス人を脅かしたため、イランのミサイル関連インフラへの攻撃について基地使用を許可したと述べた。

スターマー首相はまた、地中海キプロスにあるイギリス空軍アクロティリ基地がドローン攻撃を受けたことにも言及。同基地は「米軍爆撃機の使用拠点ではない」と述べた。

アメリカとイスラエルはイランを攻撃し、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師を殺害した。これに対してイランは、イスラエル、バーレーン、クウェート、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、そしてホルムズ海峡を通過する船舶を含む地域全域にミサイルとドローンを発射して応じた。

アメリカは当初、英領チャゴス諸島にあるディエゴ・ガルシア島の基地と、英南西部グロスターシャーのフェアフォード空軍基地の使用を求めたが、スターマー首相はこれを拒否した。

この決定について首相は、「イラクでの誤りを誰もが覚えている」と下院で述べ、今回の自分の判断が歴史的な経験に基づくものだと説明した。

スターマー首相は、アメリカによる当初の攻撃を「先制攻撃」と呼んだ。一方、その後のイランのミサイル施設に対する攻撃は「防衛」のためだと位置づけ、イギリス軍基地の使用を認めたという。

「はっきり申し上げる。イギリス軍基地の使用は、(イギリスとアメリカが)合意した防衛目的に限られている。アメリカとイスラエルによる先制攻撃に、私たちは参加しない」

首相はさらに、「歴史の教訓から、このような決定を下す時には、イギリスの行動に合法的根拠があると確立することが大事だと私たちは学んでいる」と強調。「私が週末に決定を下す際には、この原則を適用した」と述べた。

そのうえで、「この政府は空からの体制転換をよしとしない」と付け加えた。

動画説明, 米・イスラエルのイラン攻撃、3日目に イランの反撃も続く

一方、最大野党・保守党のケミ・ベイドノック党首は、スターマー首相の「優柔不断と遅れ」を批判。アメリカを全面的に支持するよう求めた。

ベイドノック氏は、「土曜日には、オーストラリアとカナダの同盟国は、テヘランの専制体制に対するアメリカの行動を即座に支持した。そして私は、国家によるテロに対してアメリカが必要な行動をとることを、保守党も支持すると言明した」と述べた。

野党・リフォームUKのリチャード・タイス副党首は、イランはイギリスにとって「恒久的な脅威」で、トランプ氏によるイラン攻撃は「西側にとって非常に大きな恩恵」だと述べた。

タイス氏は、スターマー首相が弱腰に見えると非難し、「アメリカを支持することを拒んだことで、自分が国際舞台でイギリスを辱めたと理解しているのか」と述べた。

他方、野党・自由民主党のエド・デイヴィー党首を含む左派政党も、首相の決定を批判した。デイヴィー党首は、トランプ氏に立ち向かわないことで、「この国はより危険になってしまう」と述べた。

デイヴィー氏は、「アメリカの大統領が違法な戦争を始めて、その終わり方も終わる時期もわからない時に何が起きるか、私たちは前にも見ている。そして次に何が起こるかを恐れている」のだと主張した。

野党・緑の党のエリー・チョウンズ外交担当は、「アメリカとイスラエルによるイランへの極めて無責任で違法な攻撃」を非難。「イギリスは、この無謀な行動に明確に反対しなければならない」と述べ、「イギリスがこの戦争に関与するあらゆる事態」について議会採決を要求した。

これに対してスターマー首相は、「私たちは戦争状態にない」と述べ、「アメリカとイスラエルが行っている先制攻撃に、私たちは関与しない」と付け加えた。

英スコットランド自治政府のジョン・スウィニー首相は声明を発表し、アメリカに英軍基地の使用を許可したスターマー首相の決定を批判。「いっそうのリスクと危険を生む」と述べた。

イギリス政府は、観光客やビジネス目的の渡航者を含むイギリス人に、中東地域での居場所を政府に登録するよう促しており、10万人以上がすでに登録している。

イギリス国民の緊急退避が差し迫っているわけではないが、外務省は湾岸諸国で商業便が運航停止となった場合に備えて計画を立てている。