【解説】 ハメネイ師殺害、アメリカとイスラエルは何カ月もかけて準備

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ゴードン・コレラ(安全保障アナリスト)
イランの最高指導者アリ・ハメネイ師を殺害した襲撃は、予想されがちな真夜中ではなく、朝に実施された。
アメリカとイスラエルがその何時間か前に重要な情報を手に入れ、それを活用することにしたからだ。
両国は何カ月もかけて、イランの高官らが集まる好機をうかがっていた。そして、ハメネイ師が2月28日の朝に首都テヘラン中心部の施設に滞在する予定だと知った。
両国はまた、同じ時間に開かれる軍や情報機関の幹部会合の位置も特定していた。
アメリカとイスラエルは長期にわたり、ハメネイ師の動きを追っていた。具体的な方法は秘密だが、アメリカのドナルド・トランプ大統領はソーシャルメディアの投稿で次のように述べ、それをほのめかした。
「私たちの情報網と高度に洗練された追跡システムから、(ハメネイ師は)逃れられなかった」
これは、人間の情報源からの報告を意味しているとも考えられるが、おそらくは最新技術を使ってイランの特定個人を追跡した可能性の方が高そうだ。

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昨年6月の12日間戦争では、イスラエルはイランの核計画に関係する科学者や当局者らを標的にした。また、通信網や携帯電話システムに侵入し、個人の移動を把握していたと報じられている。
これには、主要当局者を担当するボディーガードの追跡も含まれていたとされる。
こうした方法によって、長い時間をかけて「生活パターン」を把握し、活動を予測し理解できるようになった。さらに、攻撃に弱い時間帯を探ることも可能になった。
イランは、ハメネイ師が標的にされていることを認識していた。それにもかかわらず、これまで数カ月間、そうした脆弱(ぜいじゃく)性を特定し、対処することができなかった。
このことから、イランの治安・防諜機関が重大な失敗を犯したか、あるいはイスラエルとアメリカが追跡方法を絶えず更新して新しい追跡方法を見つけていたかが考えらえる。
日中の攻撃の可能性は低いと、イランがみていた可能性もある。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、今回の作戦のもとになる情報を入手したのは、米中央情報局(CIA)だった。そして、実際に空爆を実施するイスラエルに提供された。
空爆では、イスラエルがイラン指導部を狙った攻撃に重点を置き、アメリカは軍事的な標的に攻撃を集中させるという、分業態勢を取ったことがうかがえる。
決定的に重要なのは、長距離ミサイル搭載の戦闘機による攻撃を計画できるほどに、情報機関がハメネイ師や高官らの動きについて十分な事前情報を提供したことだ。
計画は、単に指導者1人を暗殺するのではなく、その攻撃を合図に、より広範な作戦を開始するというものだった。そして、好機を捉えて前倒しで実行された。

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イスラエルの戦闘機がテヘランに到達するまでには、約2時間かかることがある。ただし、どれくらい離れた位置から戦闘機がを兵器を発射したのかは、明らかではない。
攻撃実行の決定を受けて、イスラエル軍機は現地時間午前9時40分ごろ、爆弾30発を使って標的の施設を攻撃したとされる。
これは、ハメネイ師が依然として身を守るため施設の地下壕(ごう)を使っていたからかもしれない(ただし、政権が保有する最も深い地下壕ではなかったと報じられている)。
標的に確実にダメージを与えるには、十分な深さまで掘り進む複数の兵器が必要だった可能性がある。
首都テヘランでは他の施設も被害を受けた。マスード・ペゼシュキアン大統領の事務所も含まれていたが、大統領は後に声明を発表し、自分は無事だとした。
イラン政府は、国防省の高官3人の死亡を確認した。国防評議会の事務局長アリ・シャムハニ氏、アジズ・ナシルザデ国防相、イスラム革命防衛隊(IRGC)のモハンマド・パクプール司令官だ。
戦闘機による攻撃が実施された時、米フロリダ州のマール・ア・ラーゴは真夜中だった。トランプ氏はそこで、最側近の数人と共に事態の推移を注視していた。
ハメネイ師の殺害が確認されるまで、数時間がかかった。
一方、イランはこうした展開に備えていた。ハメネイ師だけでなく、数多くの高官らについても、後継計画を準備していたと報じられている。
つまり、ハメネイ師の殺害がこの紛争の行方にどんな意味をもつのか、まだはっきりしないのだ。












