【検証】イランの学校と近隣の軍事施設は攻撃を複数回受けていた……人工衛星画像から明らかに

画像提供, Anadolu via Getty Images
マーリン・トーマス記者、シャヤン・サルダリザデ記者、バーバラ・メッツラー記者、BBCヴェリファイ(検証チーム)
警告:この記事には攻撃現場の詳細など、ショッキングな内容が含まれます。
イラン南部の女子校で爆発があり生徒や教師など168人が殺害された事態について、学校周辺に複数の攻撃跡や焼け焦げた跡があることが、人工衛星画像の分析から明らかになった。これは、学校が複数回、攻撃された可能性をうかがわせる。イラン当局は、この学校がアメリカとイスラエルの攻撃を受けたとしている。
イラン南部ミナブにあるシャジャレ・タイエベ小学校と、隣接するイラン革命防衛隊(IRGC)施設の周辺が、大きく破損している様子が、検証済みの動画と画像から見てとれる。
弾薬専門家のN・R・ジェンゼン・ジョーンズ氏は、この地域が「複数の攻撃を同時に、あるいはほぼ同時に受けた」可能性がうかがえると指摘する。
画像からは、損壊した2棟の建物がはっきり見てとれる。完全に崩壊している1棟は、IRGCの基地内にある。もう1棟は学校の建物で、一部が倒壊している。
攻撃直後に撮影されたものだと確認されている映像には、現場の混乱の様子が映っている。家族らが叫び、がれきの中で被害者を探している。複数の動画で、人々が子どもの通学かばんや本をカメラに示す様子が確認できる。
3日後に撮影された空撮映像には、墓だと示す印のついた墓、あるいは新しく掘られた墓が、少なくとも計100基、整然と並んでいる様子が映っていた。
イラン当局はこの攻撃についてアメリカとイスラエルを非難しているが、アメリカとイスラエルはどちらも責任を認めていない。イスラエルは、この地域で作戦行動があったとは把握していないと述べている。アメリカのピート・ヘグセス国防長官は、この件を調査中だとしたうえで、アメリカは「決して民間目標を攻撃しない」と主張している。
イラン国内ではインターネット遮断が続いており、この件の詳細を客観的に独自検証するのは難しくなっている。
これまでに分かっていること
この攻撃が何を標的にしたものだったのか、さまざまな憶測が飛び交っている。
イラン当局によると、攻撃は現地時間2月28日午前10時45分頃に起きた。
BBCヴェリファイ(検証チーム)は、同日午前にソーシャルメディアに投稿された映像を、本物だと確認した。この映像には、攻撃直後の状況が映っている。2月28日は土曜日で、土曜はイランの平日初日にあたる。
ひとつの動画は、男性がIRGC基地の北東に位置する学校の中庭へ駆け込みながら、撮影したもの。入口の上にある看板の一部が確認できる。そこにはペルシャ語で「小学校」を示す単語の最初の3文字と一致する部分が映っている。
学校の中庭から4筋の黒煙が上っているのが、映像で確認できる。そのうち細い2筋は、メイン校舎の最上階の窓から噴き出している。
児童による絵やペルシャ文字で飾られた壁が、学校の中庭とIRGC基地を隔てている。
別の映像は、IRGC施設の南側を走行する車両から撮影されたもので、入口を示す看板が映っている。「セイエド・アル・ショハダ教育文化部隊」の入口と、医療クリニックの入口にそれぞれ、IRGCのロゴが視認できる。イラン・メディアによると、IRGC海軍のものだという。
この映像では、少なくとも3筋の黒煙が確認できる。そのうち2筋は基地の入口付近に、そして3筋目は医療クリニックの後方、少し離れた場所に上がっている。
検証済みの動画に映る煙の位置は、衛星画像で損壊が確認できる場所と一致している。

同日中に後から撮影された映像には、学校の建物が大きく破損している様子が映っている。がれきの中を救急隊が捜索にあたり、動揺した様子の家族が複数人、中庭をゆっくりと歩き回っている。中には泣き叫んでいる人もいる。
広く拡散された1本の動画は、位置情報から学校で撮影されたものと確認できる。この映像には、現場の救助隊が子どもの切断された腕をがれきの下から発見する様子が映っている。がれきの中から見つかった教科書や血の付いた通学リュックも、映像に収められている。
人工衛星画像から分かること
地上での映像や目撃証言がこれ以上得られない状況では、何が起きたのかを理解するには人工衛星画像が不可欠だ。
4日後の3月4日にプラネット・ラブス社が撮影した画像から、検証済み映像でそれまで確認できていた以上に、さらに広い範囲が破壊されていたことが明らかになった。
同社の画像から、同じ地区の複数の建物が部分的に、あるいは完全に破壊されているのがわかる。BBCヴェリファイは、少なくとも5棟の建物に目視で確認できる穴と黒い焼損跡があることを特定した。これは、攻撃が複数回あったと示すものだ。

「これほど多数(の着弾地点)が(相対的に見て)これほど近接していることから、狭い範囲内に標的が1カ所以上あったとうかがえる」。米オレゴン州立大学の衛星画像アナリスト、ジャモン・ヴァン・デン・ホーク氏はこう述べた。
「この地区を意図して攻撃したように見える」、「しかし、何を狙っていたのかは分からない」とも、同氏は述べた。
マッケンジー・インテリジェンス・サービスの上級アナリスト、オズ・スミス氏はBBCヴェリファイに対し、2階建て校舎の1階部分に残る穴の様子から、「下の階への貫通」を目的に、特殊弾薬が使われた可能性がうかがえると話した。
IRGC基地と学校は離れていたのか
校舎は、IRGC基地の近くに位置している。
2013年の衛星画像では、校舎が同じ敷地内にあったように見える。一方、2016年の画像では、学校と基地を隔てる壁が確認できる。

攻撃の責任は誰にあるのか
イランは、今回の攻撃がアメリカとイスラエルによって実行されたものだと主張する。しかし、イスラエルもアメリカも、学校の損壊について責任を認めていない。
イスラエルは、イスラエル国防軍(IDF)がこの地区で作戦行動をとっていたとは「把握していない」と説明している。BBC ヴェリファイに対しては、事案を調査中だと答えた。
アメリカのヘグセス国防長官は5日、BBCに対し、アメリカは引き続き事案を調査中だと述べた。
「もちろん、我々は決して民間の目標を攻撃しない。しかし、我々は調査を検討している」とヘグセス長官は付け加えた。
記者会見では、アメリカとイスラエルによる対イラン戦争の、「最初の100時間」と題された地図が示された。そこには、ミナブ地域を含むイラン南部沿岸で米・イスラエルが攻撃した地点と、イランの防空拠点の位置が記されていた。

現場に残った弾薬の映像がこれ以上なければ、攻撃が誰によるものか、責任の所在を明確に特定することはできない。
ソーシャルメディアで広く拡散された1枚の画像を根拠に、IRGCのミサイル誤射が爆発の原因だという意見が出回った。しかし、BBCはその画像が、ミナブから1000キロ以上離れたザンジャーンでの、無関係の出来事のものだと位置を特定した。
豪コンサルタント会社アーマメント・リサーチ・サービスの代表を務める前出のジョーンズ氏は、「ここで確認される大規模な爆発被害が、イランの地対空ミサイルによるものだった可能性は低い。イランの地対空ミサイルの弾頭は、比較的小型だからだ」と指摘した。
殺されたのはどういう人たちか
イラン当局は、死亡した168人の大半が子どもだったと述べている。
BBCヴェリファイは、入手できた映像から、犠牲者の詳細を独自に確認できていない。IRGCの関係者が死亡したかどうか、あるいは誰が現地で活動していたのかも明らかではない。
イラン教育省によると、この学校には計264人の児童が在籍していた。
イラン・メディアが公表した手書きの一覧には、この攻撃で死亡したとされる56人の氏名と生年月日が並ぶ。それによると、56人のうち48人は6歳~11歳だったことになる。
BBCヴェリファイは、こうした詳細を独自に確認できていない。しかし、一覧に記載された少なくとも3人の氏名については、複数のひつぎが映る別の映像で、ひつぎ3基に同じ名前が記されているのが見てとれる。
遺体袋に収められた子ども3人の遺体と思える姿も、複数の写真が捉えている。

画像提供, Reuters
アメリカに拠点を置く人権活動家通信社(HRANA)は開戦以来、イランの民間人1114人の死亡をこれまでに記録している。これには、子ども183人が含まれている。
攻撃から数日後、数千人が葬列のために街路に並ぶ映像が、イラン国営メディアで放送された。子ども用の大きさのものも含まれるひつぎにイラン・イスラム共和国の旗がかけられ、男性たちがそれを運ぶ様子が映っていた。大勢の女性たちも、少年や少女の写真を掲げていた。
IRGCと関係する準公的通信社タスニムは写真を掲載し、この学校の教員14人が攻撃で死亡したと報じた。
(追加取材:ポール・ブラウン)












