トランプ氏、イランに「無条件降伏」要求 イスラエルはレバノンへの攻撃拡大

暗い建物群の向こうでオレンジ色の大きな火の手が複数上がり、煙が夜空に立ち上っている

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画像説明, イランの首都テヘランのメヘラーバード国際空港で火の手が上がった(7日未明)
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アメリカのドナルド・トランプ大統領は6日、イランについて「無条件降伏」以外は受け入れないとソーシャルメディアに書いた。米中央軍司令部は、イラン国内で3000カ所を超える標的を攻撃したと発表した。イランの国連大使は、米・イスラエルの攻撃により、これまでで民間人1332人が死亡したと述べた。イランの首都テヘランの住民はBBCに対し、5日深夜から6日にかけての夜はこれまでの紛争で「最悪の夜」だったと話した。

イスラエルはイラン攻撃を続ける一方、レバノン攻撃も拡大。レバノン政府によると、2日にイスラエルの攻撃が始まって以来、レバノンでは1000人以上が死傷している。

他方、複数の米メディアは消息筋の話として、ロシアが米軍の位置情報をイランに提供していると伝えた。

7日未明にはテヘラン近郊のメヘラーバード空港から大規模な火の手が上がった。

目撃者がソーシャルメディアに投稿した映像などから、イランの国際便と国内便のハブ空港で、最も交通量の多い同空港で、複数の飛行機が燃えているのが見える。

6日撮影の人工衛星画像では、同空港に複数の飛行機が駐機する様子が見えていた。

イラン国営メディアは、同空港の一部が攻撃されたと伝えている。

イスラエル軍はこれに先立ち、イランへの「新しい攻撃の波」を実施すると告げていた。イランは4日も、同空港を攻撃している。

イスラエル国防軍(IDF)は6日、イランに対する15回目の攻撃を開始し、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師が使うはずだった地下施設を破壊するため、戦闘機50機を派遣したと明らかにした。

「無条件降伏」を

赤いじゅうたんの廊下を背に、マイクの載ったテーブルに向かい話すトランプ氏。

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画像説明, 大学スポーツに関するイベントで発言するトランプ米大統領(6日、ホワイトハウス)

米中央軍司令部は6日、ソーシャルメディア「X」への投稿で、イラン国内で3000件を超える標的を攻撃し、艦船43隻を損傷または破壊したと発表した。

トランプ氏は自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿し、「イランとは無条件降伏のほか、いっさいの取引もしない」と書いた(訳注:太文字は原文では全て大文字)。

続けて、「その後には、そして偉大で受け入れられる指導者(複数)が選ばれた後、我々と、多くの素晴らしくとても勇敢な同盟国とパートナーたちが、イランを破壊の瀬戸際から救い出すために休みなく努力し、イランをかつてないほど経済的に大きく、より良く、より強くするだろう」と大統領は書き、「イランの未来は偉大なものになる。『イランを再び偉大にしよう(MIGA!)』」と強調した。

トランプ氏はさらに、イランの次の指導者は「アメリカとイスラエルをよく扱わなくてはならない」とも述べた。

トランプ氏はホワイトハウスで記者団に対し、米軍は「驚異的」な働きぶりでイランの軍事力を破壊していると述べ、「(イランの)陸軍はもうない」と話した。

「(イランの)海軍はもうない。通信能力もない。2組の指導者グループがもういない。今の指導グループは3番手だ。空軍はもうまったくない」とトランプ氏は言い、「(イランには)32隻の艦船があったが、その32隻はぜんぶ海の底だ」とした。

BBCのサラ・スミス北米編集長は、トランプ氏は攻撃開始当初はイランが取引に応じれば戦争は数日で終わるかもしれないという姿勢だったが、今ではイラン政府が降伏するまで戦争は続くと主張することで、交渉による迅速な終戦の可能性を排除しているようだと指摘した。

遠く山並みを背に、ベージュ色の複数の建物の合間から黒煙が上っている

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画像説明, イランの首都テヘラン中心部への攻撃が続いている(6日)

「最悪の夜」だったとテヘランの住民

イランの首都テヘランの住民は6日、前の晩はこれまでの紛争で「最悪の夜」だったとBBCに話した。

イランのアミール・サイード・イラヴァニ国連大使は、米・イスラエルによる2月28日以降の攻撃により、民間人1332人が死亡したと述べた。

大使はニューヨークの国連本部で記者団に対し、犠牲者には女性や子どもが含まれていると、イラン赤新月社が報告していると述べ、「さらに数千人が負傷し、その数は増え続けている」と述べた。

大使は、学校、病院、その他の民間インフラが「意図的に」標的にされたと非難した。

アメリカは民間インフラを標的にしたことを否定しているが、イラン南部の女子校で生徒や教師が大勢死傷した攻撃については調査中だとしている。

イラン保健省のホセイン・ケルマンプール報道官は同日、イラン国内での死傷者数に関する最新情報をXに投稿。それによると、今回の戦争でこれまでに18歳未満の200人が死亡しており、最年少は生後8カ月の乳児だという。戦争開始以来の総死者数は明らかにしなかった。

また、2000人以上の負傷者が入院しており、うち552人が18歳未満で、最年少は生後4カ月の女児だと述べた。

同報道官は、「戦争は医療システムにも影響を及ぼしている」と述べ、医療従事者8人が死亡、30人が負傷し、11カ所の病院が「ミサイルの影響を受けた」とした。

アメリカ政府は、米軍は民間人を標的にしていないと主張。イスラエルは、民間人を守るため精密攻撃を通じ、軍事施設を標的にしているのだとして、民間人を標的にしているのはイランだと非難している。

イラン国内の情報アクセスは極めて制限されており、外国の報道機関はビザ(査証)を拒否されることが多い。このため、現地情報の取材が大幅に制限されている。

暗い建物の合間、夜空を背にオレンジ色の光に照らされた煙が複数個所で立ち上っている

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画像説明, 6日にかけての夜の攻撃は、2月28日に戦争が始まって以来「最悪」だったとテヘラン住人は言う(6日、テヘラン)

イランのマスード・ペゼシュキアン大統領は同日、「いくつかの国が仲介努力を開始した」としたが、詳細は明らかにしなかった。

同大統領はソーシャルメディアへの投稿で、「いくつかの国が仲介努力を開始した。はっきりさせておこう。我々は地域の恒久的な平和を重視しているが、この国の尊厳と主権を守ることに、何のためらいもない」、「イラン国民を過小評価し、この紛争を引き起こした者たちに、仲介努力は向かうべきだ」とも書いた。

イランは2月28日以降、米軍基地を置く湾岸諸国や、イスラエルを支援するイスラム教シーア派組織ヒズボラが拠点とするレバノンなどを次々と攻撃している。各国内の米軍基地および民間インフラやエネルギーインフラを標的としたイランのミサイル攻撃に、アラブ諸国は対応を迫られている。

イスラエルがレバノン攻撃拡大

ビルが並ぶ薄暗い市街地にオレンジ色の巨大な爆発が起き、黒煙が上っている

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画像説明, イスラエル軍がレバノンの首都ベイルートを攻撃。イスラム教シーア派の住民が多いダヒエ地区も標的になった(6日)

レバノン保健省によると、2日から始まったイスラエルの攻撃で、6日までに217人が死亡し798人が負傷した。前日には、死者123人、負傷者683人と報告していた。

イスラエル国防軍(IDF)はヒズボラを標的にしていると説明。ベイルート南部の郊外にあるヒズボラ拠点を攻撃すると予告し、数十万人の住民に避難を命じた。

現場の映像には、ベイルートで大規模な爆発が発生している様子が映っている。

イスラエル軍は、イランおよびレバノン国境からイスラエル領内に向けて飛翔体が発射されたとも述べた。

野原に灰色の戦車や装甲車が並んでいる

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画像説明, レバノンとの国境に集結するイスラエル軍の戦車(6日、イスラエル北部)

イスラエル軍の高官は5日、イスラエルの地上部隊がレバノン国内の複数の丘陵地を新たに確保したと述べた。防衛作戦の一環で、イスラエル北部の地域社会をより良く守るためだと説明した。

イスラエルとレバノンの国境付近で取材するBBCのルーシー・ウィリアムソン中東特派員によると、イスラエルはレバノン国境の軍備を大幅に増強している。記者らは6日朝、国境のすぐそばに新しく配備された数十台の戦車や装甲ブルドーザーの横を通過した。全面的な地上侵攻が予定だれているとの憶測が高まっていると、同特派員は報告している。

レバノン南部で活動する国連レバノン暫定軍(UNIFIL)は、自軍基地が6日に攻撃され、ガーナ人の兵士3人が負傷したことを受け、非難声明を出した。

「安全保障理事会の任務を遂行している平和維持要員が標的にされるのは受け入れられない」とUNIFILは述べ、攻撃についての調査を開始するとした。

「UNIFILの平和維持要員への攻撃はどのようなものでも、国際人道法および国連安全保障理事会決議1701の重大な違反であり、戦争犯罪に相当する可能性がある」とUNIFILは付け加えた。

特に重傷の兵士はベイルートの病院に搬送され、残る2人はUNIFIL施設で治療を受けているという。

UNIFILは以前にも標的になっている。国連によると、昨年11月にはイスラエルが巡回するUNIFIL小隊の至近距離へ重砲を発射したが、負傷者は出なかったという。

レバノンにある国連施設をイスラエルが攻撃したこの事態を受けて、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、非難声明を発表した。

マクロン大統領は、「UNIFILはレバノン南部安定化のため、重要な役割を担っている。その部隊の隊員を襲った攻撃は容認できず、私はこれを強く非難する」と述べた。

マクロン氏はこの日、シリアのアフメド・アル・シャラア暫定大統領およびレバノンのジョセフ・アウン大統領と会談した後、両国の「主権と領土保全」を尊重する必要性を改めて強調。

「情勢の不安定化が進行中の今、テロ行為など一切あってはならない。フランスが確実に対応する」とマクロン大統領は述べた。

このほか、カタール国防省は、6日早朝から夕方にかけて、イランからのドローン10機による「攻撃の波」にさらされたと発表した。

9機を迎撃し、1機は無人地帯に落下したため、犠牲者は出なかったという。

ロシアがイランに米軍情報提供か

ロシア国旗を背に、金色の飾りのついた白い布張りの椅子に座るダークスーツ姿のプーチン氏

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画像説明, ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(4日、モスクワ)

ロシア大統領府(クレムリン)は6日、ウラジーミル・プーチン大統領が、イランのペゼシュキアン大統領と電話で会談したと発表した。プーチン大統領は、イランの最高指導者および政府関係者、さらに国内各地での民間人死亡に対して哀悼の意を表したという。

クレムリンによると、敵対行為は直ちに終了し、外交的解決が見いだされるべきだというロシアの立場をプーチン氏は繰り返した。

ペゼシュキアン大統領はロシアの支援に感謝し、イラン情勢について詳しく報告したという。

クレムリンによると、両国は今後も連絡を取り続けることで合意した。

BBCがアメリカで提携するCBSニュースは、3人の消息筋の話として、ロシアが米軍の位置情報をイランに提供していると報じている。

匿名の消息筋3人には、これについて直接の知識をもつアメリカ政府高官が含まれているという。

米紙ワシントン・ポストは、3人の匿名高官を引用し、ロシアが米軍の位置情報を提供していると最初に報じた。

ロシア国営メディアはこれまでに、プーチン大統領の報道官が、ロシアはイラン指導部と「対話している」と話したと伝えている。

ロイター通信は、ロシア政府がイラン政府を支援しているかどうか記者に問われた際、クレムリンが詳細な説明を拒否したと伝えている。