アメリカがウクライナに支援要請、イランのドローンへの対処で ゼレンスキー氏が明らかに

ソファに座り、マイクに向かって話しているゼレンスキー氏。黒い衣服で、真剣な表情でカメラを見つめている

画像提供, Getty Images

画像説明, ウクライナのゼレンスキー大統領
この記事は約 8 分で読めます

ジェイムズ・ランデイル防衛担当編集委員(キーウ)

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は5日、アメリカがウクライナに対し、イラン製ドローン「シャヘド」から湾岸諸国を防衛するうえで支援を要請したと発表した。

ゼレンスキー氏は、ウクライナの協力国が連絡を取っており、「アメリカ側から要請」があったと説明。「必要な手段を提供し、必要な安全を保証できるウクライナの専門家の派遣を確保するよう」当局に指示したと述べた。

ウクライナの申し出について質問されたアメリカのドナルド・トランプ大統領は、「どの国からの支援も受け入れる」と述べた。

ゼレンスキー氏はこれより以前、ウクライナの防衛が弱体化しないことと、ウクライナが外交面で利益を得ることを条件に、支援すると表明していた。

特に、ロシアの弾道ミサイルに対抗するため、より多くのアメリカ製地対空迎撃ミサイル「パトリオット」と引き換えに、ウクライナの迎撃用ドローンを提供する用意があると示唆していた。

中東での紛争をめぐっては、ウクライナを支援する国々がそちらに気を取られ、ウクライナが不利益を被るのではないかとの懸念が高まっている。

また、迎撃ミサイルが不足する可能性や、石油価格の高騰によってロシアが戦争遂行の資金源にしている利益が増え、同国が有利になる可能性も指摘されている。

ゼレンスキー氏は、こうしたリスクを認めている一方で、この危機を利用し、ウクライナの国益をさらに前進させようとしているようだ。

すでに、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、バーレーン、ヨルダン、クウェートなど湾岸各国の指導者と話をしており、イランの攻撃から彼らの軍事基地や民間インフラを防衛するための「具体的な措置」について協力を約束している。

ゼレンスキー氏はソーシャルメディアで、「ウクライナへの主な要請が何であるかは明らかだ」と述べた。

「イランの攻撃を受けたことのある者は、深刻な難題に直面する。シャヘドは、専門的な知識と十分な兵器がなければ迎撃が難しい」

「人々が自らを守るのを支援し、極めて重要な輸送路の安定を回復することは、われわれの共通の利益だ」とも、ゼレンスキー氏は述べた。

「パートナー各国は、シャヘドに対する防衛支援を求めてウクライナに連絡してきており、専門知識と実務的な支援を必要としている。また、アメリカ側からの要請もあった」

ウクライナは数年来、イランの設計に基づいたロシア製シャヘドの攻撃を受けている。

自爆型ドローン「シャヘド-136」を下から撮影した写真と、解説が掲載された図。写真では弾頭部分と、翼幅(2.5メートル)が示されている。解説文は4項目に分かれており「主目的:都市や重要インフラへの攻撃で、敵の防衛網を圧倒するため、多数の群で投入される。運用:低空飛行のドローンはレーダーによる探知が難しい。機首部に爆発物を搭載し、衝突とともに起爆する。費用:イラン製は比較的安く、1機あたり2万~3万ドル(300万~450万円)ほど。射程:最大で約2500キロ」と書かれている。出典はDefence ExpressとGetty Images

アメリカが支援を求めているという皮肉は、ウクライナ国民の間でも見逃されていない。ロシアによる全面侵攻に対する防衛をめぐり、ウクライナはトランプ氏の不安定な方針に苦しんできた。

トランプ政権下のアメリカは、ウクライナへの直接的な軍事支援を停止しているが、ドローンやミサイルに対する防衛や、ロシア領深部への攻撃を可能にする重要な情報提供は続けている。

ウクライナは数年にわたり支援を求めてきたが、その立場が転換した今、ゼレンスキー氏がこの局面を外交面、軍事面、財政面で奇貨として活用したいのは明らかなようだ。

ウクライナが湾岸地域のアメリカ同盟国、とりわけサウジアラビアを支援できれば、アメリカからの感謝を期待できるかもしれない。

また、一部のアラブ諸国は伝統的にロシアと近く、ウクライナでの紛争について立場表明を避けようとしてきた。ウクライナには今回、そうした国々の支持を得たい考えもあるだろう。

湾岸諸国の代表団は、すでに協議のため、ウクライナの首都キーウに到着している。ある関係者は、一部の代表団が合意に至るまでキーウに滞在するよう指示されていたと述べた。また、イギリスはカタールを支援する方法を模索しているとされている。

ゼレンスキー氏には、湾岸のパートナー国に十分な防空能力を提供することで、彼らが安価なシャヘドドローンを撃墜するために高価で希少なパトリオットミサイルを使用するのを思いとどまらせたい狙いもあるとみられている。

ウクライナはパトリオット防空システムの不足に直面しているため、中東に過度な数が回され、浪費されることを避けたい意向だ。

ゼレンスキー氏は5日、記者団に対し、ここ数日ですでに約800発のパトリオットPAC-3ミサイルが使用されたと述べた。これは、ウクライナが戦争期間全体で受け取った量を上回っている。

「パトリオット」ミサイルシステムの仕組みを示した図。システムはレーダー、管制装置、ミサイル発射機からなり、電磁波信号でやりとりしている。レーダーは上空を観測し、接近する敵の脅威を検知・位置特定する。探知範囲は100キロ。管制装置はミサイルを標的に誘導する。爆発のタイミングも調整できる。ミサイル発射機は最大16発を搭載し、9秒以内に全弾を発射できる。出典はレイセオン・カンパニー

こうした状況でゼレンスキー氏は交換案を示し、「われわれは、名前を挙げられる国も挙げられない国も含め、各国と静かに協力し、パトリオットシステム用の不足しているミサイルを確保する一方で、適切な数の迎撃用ドローンを移転したい」と述べた。

しかしウクライナが提供する支援はいずれも条件付きとなる。ゼレンスキー氏は、「もちろん、われわれが提供するいかなる支援も、ウクライナ国内の防衛を弱めず、われわれの外交的能力への投資となることを条件とする」と強調した。

ウクライナ防衛産業評議会のイホル・フェディルコ会長はBBCに対し、ウクライナは迎撃用ドローンの生産を月当たり最大1万機まで拡大できると述べた。

しかし、海外のパートナー国向けの供給について議論するには、国内で最高レベルの政治的承認が必要になるという。

また、仮にウクライナの最高指導部が将来そのような移転を承認したとしても、同盟国が防空システムを効果的に運用するために必要となる訓練と専門知識を提供するのは難しいと、フェディルコ氏は警告した。

「兵器は、指導と訓練がなければ単なるプラスチックと金属にすぎない」と、同氏は述べた。

「これらの製品を送ることはできる。しかし、受け取った側はそれをどう扱うのか。どのように兵器を運用するのか。いったい誰が教えるのか」

「現時点では、ウクライナ国内の訓練センターは、我々の軍隊と市民で完全に埋まっている」