【解説】 AI軍拡競争はどのようにウクライナでの戦争を変えているのか

カーキ色の制服を着た男性が、幅1メートル半弱のドローンを手にしている。かなり大雑把に組み立てられているように見える

画像提供, Serhiy Beskrestnov

画像説明, ロシアのAIドローンはウクライナに新たな挑戦をもたらすと、ウクライナ軍のセルヒイ・ベスクレストノフ顧問は話した

アブドゥジャリル・アブドゥラスロフ記者(キーウ)

「この技術は、我々にとって今後、脅威になる」と、ウクライナ軍のセルヒイ・ベスクレストノフ顧問は警告した。ベスクレストノフ氏は、新たに捕えたロシアのドローンの調査に着手したばかりだ。

新しいドローンを手にしたベスクレストノフ氏は、それが通常のドローンではないことを発見した。人工知能(AI)が補助するこの無人航空機は、自ら標的を発見し、攻撃できるのだという。

ベスクレストノフ氏はウクライナ軍の顧問として、これまで多数のドローンを調査してきた。

他の機種とは異なり、新しいドローンは送受信を一切行わなかったため、妨害できなかった。

ロシア軍とウクライナ軍の双方が、この戦争でAIをさまざまな形で試験運用している。標的の発見、情報収集、地雷除去などの分野では、すでに使用されている。

そして、ウクライナ軍にとっても、AIは不可欠な存在となっている。

「我々の軍は、(前線から)毎月5万件以上の映像配信を受けて、AIに分析させている」と、ウクライナのユーリイ・ミロネンコ国防次官は述べた。

「この技術によって、膨大なデータを迅速に処理し、標的を特定して地図上に配置することができる」

迷彩柄の軍服を着た男性が、野原や低木地帯、民家などが映し出された壁一面のスクリーンの前に立っている

画像提供, BBC/Matthew Goddard

画像説明, ウクライナ軍は前線で収集した映像をAIで分析していると、ユーリイ・ミロネンコ国防次官は話した

AIを活用した技術は、戦略的な計画を強化し、資源を最大限に活用し、最終的には命を救う手段と捉えられている。

一方、無人兵器システムとなると、それによって戦場そのものが様変わりし始めている。

ウクライナ軍はすでに、AIを基盤としたソフトウエアを使用しており、ドローンが標的を捕捉した後、任務が完了するまでの数百メートルを自律飛行するようになっている。

このようなドローンは、妨害が不可能で、かつ非常に小型の飛行物体なので、撃墜も簡単ではない。

最終的にはこうしたシステムが、自主的に標的を発見して破壊する完全自律型兵器へと進化するとみられている。

ウクライナの開発企業「ザ・フォース・ロー」のヤロスラフ・アジュニュク最高経営責任者(CEO)は、兵士がスマートフォンのアプリでボタンを押すだけで、すべてが済むようになると説明する。

その後のこと、つまり標的を発見し、爆発物を投下し、被害を評価した後、基地に帰還するまでを、ドローンがやってくれるという。

「兵士には操縦技術すら必要なくなる」と、アジュニュク氏は付け加えた。

男性が2丁の機関銃の前に立っている。銃は黒色で、台に取り付けられている。男性の背後には、機関銃の特性を説明するディスプレイと飛行機の模型がある
画像説明, ヴァディムさんが経営するデヴドロイドは、AIの助けを借りてターゲットを追跡できる遠隔操作マシンガンを製造している

この種の自動化を備えた迎撃用ドローンは、悪名高いイラン製ドローン「シャヘド」など、ロシアが使う長距離攻撃型ドローンを相手に、防空能力を大幅に強化するかもしれない。

「コンピューター制御の自律型システムは、実に多くの点で人間より優れたものになり得る」と、アジュニュク氏は話す。「より感知力が高く、人間より早く標的を視認でき、より機敏に動けるだろう」。

ウクライナのミロネンコ国防次官は、この種のシステムはまだ存在していないとしながらも、ウクライナがその開発完了に近づきつつあることをうかがわせた。「一部の機器には部分的に導入している」と、ミロネンコ氏は述べた。

アジュニュク氏は、2026年末までに同様のシステムを数千台規模で配備できる可能性があると主張している。

しかし、ウクライナの開発者たちは、人間が一切関与しない、AIに完全に依存する防衛システムの運用には慎重な姿勢を示している。ワディム氏は、たとえばウクライナ兵とロシア兵が同じ制服を着ていた場合、AIが違いを識別できない危険があると指摘する。ワディム氏は、名字の公表を控えている。

ワディム氏の企業「デヴドロイド」は、AIによって人間を自動検知・追跡する遠隔操作型の機関銃を製造している。しかし、味方を誤射してしまう懸念から、自動射撃機能は搭載していないという。

「その機能を有効化することは可能だが、安全に使えるタイミングを理解するためには、地上部隊の経験とフィードバックがこれまで以上に必要だ」と、同氏は述べている。

迷彩柄の軍服を着た男性がしゃがみ込み、シャヘドと思われる残骸を調べている

画像提供, Reuters

画像説明, AI迎撃ドローンはロシアが使用するイラン製ドローン「シャヘド」からウクライナを守ることができるという

自動化システムが、交戦法規に違反するのではないかという懸念もある。システムはいったいどうやって民間人に危害を加えることを回避し、兵士が降伏しようとしていると識別するのだろう?

ミロネンコ国防次官は、このような状況での最終判断は人間が下すべきだと述べている。一方で、AIによって「判断しやすくなる」とも言う。しかし、国家や武装勢力が、国際人道法の規範を順守する保証はない。

それだけに、こうしたシステムへの対抗策は一層重要になっている。

妨害や戦闘機、戦車、ミサイルが無効化される状況で、「ドローンの群れ」をどのように阻止するのか。

ウクライナが昨年6月に実施した「クモの巣」作戦では、100機のドローンがロシアの空軍基地を標的にしたが、この作戦にはAIツールが関与していた可能性がある。

ウクライナ国内では、ロシアがこの戦術を前線だけでなく、それ以外の地域でも模倣するのではないかという懸念が広がっている。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は国連で先月、AIが「人類史上最も破壊的な軍拡競争」に加担していると警告した。

ゼレンスキー大統領は、兵器におけるAI使用について国際的なルールの制定を呼びかけ、「核兵器の拡散防止と同じくらい緊急性の高い問題だ」と述べた。