ヴェネズエラで暫定大統領が宣誓就任、マドゥロ氏は米連邦地裁で無罪主張 

屋外で武装警官や麻薬取締局(DEA)の捜査員に囲まれて手錠をされたマドゥロ氏と、国民議会での宣誓就任式に出席したロドリゲス氏。ロドリゲス氏は茶色と金の装飾がついた背の高い椅子に座り、緑のドレス姿でほほえんでいる

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画像説明, ニューヨークの裁判所へ移送されるマドゥロ氏(左)と宣誓就任したロドリゲス暫定大統領

アメリカの軍事作戦によりニコラス・マドゥロ大統領が拘束され米ニューヨークへ移送された南米ヴェネズエラで5日、デルシー・ロドリゲス副大統領(56)が暫定大統領として国民会議での儀式で宣誓就任した。同議会は、マドゥロ氏の返還をアメリカに要求した。これに先立ち米ニューヨークではマドゥロ氏が連邦地裁に初出廷し、自分は無実で「戦争捕虜」だと主張した

マドゥロ政権の副大統領を2018年から務めてきたロドリゲス氏は、マドゥロ氏と妻シリア・フロレス氏の「誘拐」に心を痛めていると述べた。

連邦立法宮殿の周りには数千人のヴェネズエラ国民が集まり、マドゥロ夫妻とロドリゲス暫定大統領への支持を示した。

宣誓後の演説でロドリゲス氏は国民議会に対し、「不当な軍事侵略」による苦しみの中、「痛みを伴って」宣誓したと述べた。

暫定大統領となったロドリゲス氏は国の平和、「国民が精神的に落ち着き、国民の経済および社会が落ち着く」よう、安定を保証すると誓った。

議会ではまた、マドゥロ氏の息子が両親への支持を表明し、2人が「帰国する」と主張。さらにロドリゲス氏への「無条件の支持」を示した。

大勢が集まる中、大統領印を首から下げて国旗の前に立つマドゥロ氏の大きい写真を掲げる人もいる

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画像説明, 国民議会の前に集まったマドゥロ氏の支持者たち(5日、カラカス)

ロドリゲス氏の宣誓式の約2時間前には、マドゥロ夫妻がニューヨークの連邦地裁に初出廷。マドゥロ氏は無罪を主張し、自分は「自宅から拉致された」「戦争捕虜」なのだと述べた。

他方、マドゥロ氏出廷の前に同日開かれた国連安全保障理事会の緊急会合では、各国がアメリカを厳しく批判した。ヴェネズエラのサミュエル・モンカダ国連大使は、自国が「いかなる法的正当性も欠いた不当な武力攻撃」の標的になったと主張した。

これに対して、アメリカのマイク・ウォルツ国連大使は、世界最大の石油埋蔵量をもつ国を、選挙での敗北をなかったことにした正統ではない「いわゆる大統領」の支配下に置くわけにはいかないと主張した。

ウォルツ大使はさらに、マドゥロ氏を「司法からの逃亡者」と呼び、米軍はその拘束のために「法の強制執行作戦を外科手術的に」実施したのだと述べた。

米軍は3日未明、ヴェネズエラの首都カラカスへの急襲作戦を実施。複数の軍事基地を攻撃したほか、自宅にいたマドゥロ夫妻を拘束した。夫妻はその後、ニューヨーク市ブルックリンにある拘置施設に移送された。

動画説明, マドゥロ大統領夫妻、手錠かけられ裁判所へ移送

アメリカ政府はマドゥロ氏を、麻薬テロの共謀、コカイン輸入の共謀、機関銃および破壊的装置の所持、アメリカに対して機関銃および破壊的装置を所持する共謀の罪状で起訴した。

マドゥロ氏は5日、足かせの音をガチャガチャと響かせながら法廷に入り、報道陣や市民が詰めかけた傍聴席に向かって、自分は「誘拐された」のだと主張した。

入廷から数分後、アルヴィン・ヘラースティーン判事は、審理を開始するためマドゥロ氏に身元確認を求めた。

「私はニコラス・マドゥロ、ヴェネズエラ共和国の大統領だ。私は1月3日から、ここに誘拐されている」と、マドゥロ氏は落ち着いた様子でスペイン語で述べ、それを通訳が英語に訳した。「私はヴェネズエラのカラカスにある自宅で拘束された」。

ヘラースティーン判事は即座にマドゥロ氏の発言を遮り、「これらすべてについては、後に議論する時間と場所がある」と告げた。

5日午後に行われた、40分間にわたる劇的な罪状認否の中で、マドゥロ氏と妻フロレス氏は、麻薬および武器関連の罪状について無罪を主張した。

「私は無実だ。私はまともな人間だ。私はまだ国の大統領だ」とマドゥロ氏は述べ、フロレス氏も「完全に無実だ」と付け加えた。

青とオレンジの囚人服にカーキ色のズボンを着た2人は5日、法廷で弁護士を挟んで着席した。スペイン語の通訳を聞くためヘッドフォンを装着していた。マドゥロ氏は細かくメモを取り、審問終了後にメモを持ち帰れるか判事に確認していた。

マドゥロ氏の次の公判は3月17日に予定されている。

動画説明, 「劇的だった」 マドゥロ夫妻の初出廷、傍聴したBBC記者の報告

他の国で同じことをしない保証は

米軍機150機以上と米兵200人が3日未明にヴェネズエラに侵入した軍事作戦について、ドナルド・トランプ米大統領は同日朝、「安全で適切で慎重な移行」が可能になるまでヴェネズエラを「運営する」と表明した。

この作戦について5日に米連邦議会で2時間半にわたる機密ブリーフィングを受けた野党・民主党のチャック・シューマー上院院内総務は、トランプ政権によるヴェネズエラ統治計画は「曖昧で、願望にもとづくもので、満足のいくものではない」と批判した。

「他の国で同じことをしないという保証は、何も得られなかった」、「アメリカがこの種の体制転換や、いわゆる国造りに関わると、いつもアメリカ自身が傷つく結果になる」とも、シューマー議員は述べた。

他方、与党・共和党のマイク・ジョンソン下院議長は、トランプ政権が遂行しているのは体制転換ではないと述べ、「独裁政権に行動の変化を要求」したのだと主張した。

ジョンソン議長は今回の作戦行動を「断固とした、正当化される」ものだと評し、アメリカは「自国の国家利益を守り、アメリカ国民の安全を確保し、自国の安全を脅かし続ける脅威を防ぐために武力を行使する権利を、常に維持してきた」と述べた。

「我々には説得の手段がある」ともジョンソン議長は述べ、「彼らの石油輸出を押収しているので、それによってあの国にはごく短期間で新しい統治体制が実現すると思う」との見方を示した。

トランプ氏はまた、アメリカの石油企業が同国に入り、インフラを修復して「あの国のために金を稼ぎ始める」とも3日に発言した。しかし、アメリカ大統領によるこうした主張をよそに、ヴェネズエラ国内では今もマドゥロ氏の側近たちが実権を握っている。

ロドリゲス氏の暫定大統領就任が確実になると、トランプ氏は4日に米誌アトランティックに対して、彼女が「正しい行動を取らなければ、非常に大きな代償を払うことになる」と警告した。

そのロドリゲス氏は閣議で、政府がアメリカと一定の協力を行う意向を示した。「我々は国際法の枠組みの中で、共有の発展を目指して協力するため、その課題で協力し合うことをアメリカ政府に提案する」と述べた。