アメリカが「ニュー・ガザ」計画を発表、和平計画における再開発や非武装化プロセスを説明

青い照明に照らされたホールに座っている人々を手前から撮った写真。一番前にはマルコ・ルビオ米国務長官がいる。ホールの壁には「ニュー・ガザ」という文字と、再建されたガザのイメージ図が示されたスライドが映っている

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画像説明, 米トランプ政権が「ニュー・ガザ」計画を発表した(22日、スイス・ダヴォス)

アメリカは22日、戦争によって壊滅的な被害を受けたパレスチナ・ガザ地区を根本から再建する「ニュー・ガザ」計画を発表した。

スイス・ダヴォスで開催された世界経済フォーラムの年次総会ではこの日、ドナルド・トランプ米大統領が提唱する「平和評議会」の調印式が行われた。その中で発表された同計画のスライドには、地中海沿岸に並ぶ数十の高層ビルや、南部ラファの住宅地が示されている。

ガザの住民約210万人向けに、新しく住宅地、農業地帯、工業地帯を段階的に開発する計画を示す地図も示された。

「平和評議会」は、イスラエルとイスラム組織ハマスの間で続くガザでの2年に及ぶ戦争を終結させ、復興を監督することを目的としている。

トランプ氏は、「我々はガザで大きな成功を収めることになる。これは見ていて素晴らしいものになる」と述べた。

「私は本質的に不動産の人間なので、すべては立地だ。そこで私は、『この海沿いの立地を見てほしい。この美しい土地を見てほしい。多くの人々にとってどれほどのものになり得るか』と言ったんだ」

トランプ氏の娘婿で、昨年10月に発効した停戦の仲介にも関与したジャレッド・クシュナー米大統領顧問は、ガザにはこれまでに9万トンの弾薬が投下され、また、6千万トンのがれきを撤去する必要があると述べた。

クシュナー氏は調印式で、「当初は『自由区域を造り、ハマスの区域も設けよう』と言っていた。しかしその後、『それよりも、とてつもない成功を前提に計画しよう』となった」と説明した。

「ハマスは武装解除に合意したので、我々はその実行を確保していく。次善策があるのかとよく聞かれるが、次善策は存在しない」

攻撃によって建物が破壊され、倒壊したりがれきとなった街の道路を、住民が歩いている

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画像説明, 国連の推計によると、ガザ地区の全建造物の81%が破壊または損傷している(22日、ハンユニス)

アメリカの「マスタープラン」の地図によると、ガザの沿岸部が「沿岸観光」に充てられ、180棟の高層ビル群が立ち並ぶと書かれている。そのほか、「住宅地」「産業複合施設、データセンター、先端製造業」「公園、農業、スポーツ施設」といった区域が、ガザ全体に配置されている。

新たな港湾と空港はエジプト国境付近に建設するとされている。さらに、エジプトとイスラエルの国境が交わる地点には「3間通行地点」が設けられることになっていた。

再開発は4段階に分けられ、ラファから開始し、徐々に北へ進んでガザ市に向かう計画だという。

この地図には、エジプト国境とイスラエル国境に沿って伸びる空白の土地も描かれていた。これは、トランプ氏の20項目の和平計画が「安全周辺区域」と呼ぶ場所で、「ガザがきちんと安全な状態になるまで」、イスラエル軍がとどまるとされていた。

北が右側になるように配置されたガザ地区の地図に、さまざまな目的の区域が示されている。それぞれの凡例や、計画の全体的な工程も書かれている

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画像説明, トランプ氏のガザ再建計画の「マスタープラン」のスライド

「ニュー・ラファ」について説明した別のスライドでは、10万軒を超える恒久的な住宅ユニット、200カ所の教育センター、75カ所の医療施設が整備されると説明されていた。

ガザ最南端にあるラファにはかつて約28万人が暮らしていたが、イスラエルによる空爆と計画的な建物破壊により大部分が破壊された。現在は、イスラエルが管理する区域に含まれている。

クシュナー氏は、「ニュー・ラファ」の建設を2〜3年で完了することは「実現可能だ」と語った。

「すでにがれきの撤去や一部の解体作業を開始している。それからニュー・ガザだ。これは希望になり得るし、目的地にもなり得る。多くの産業を持つことができる」

また、今後数週間のうちに、米首都ワシントンで「平和評議会」参加各国の拠出金が発表され、民間部門に向けた「驚くべき投資機会」を発表する会議が開かれる予定だと、クシュナー氏は付け加えた。

白い住宅が整然と並ぶイメージ画像と、住宅ユニットや教育センターなどの設置予定件数が示されている

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画像説明, 「ニュー・ラファ」の計画をまとめたスライド

非武装化、人質、不安定な停戦

クシュナー氏はまた、ガザの非武装化が「今まさに始まっている」と宣言。「安全保障がなければ誰も投資しない」と述べた。

同氏によると、戦後のガザ統治を担う技術官僚的な暫定的パレスチナ行政機構「ガザ行政国家委員会(NCAG)」が、「文書で合意された原則を次の段階に進めるため、ハマスと協力して非武装化に取り組む」ことになるという。

ハマスはこれまで、独立したパレスチナ国家の樹立なしには武装解除に応じない姿勢を示してきた。

トランプ氏は今回、ハマスに対し、「彼らは武器を放棄しなくてはならない。そうしなければ、(ハマスは)おしまいだ」と警告した。

「非武装化に関する原則」として10項目が説明されている

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画像説明, 和平計画の「非武装化に関する原則」を示したスライド。各項目は「単一の文民統制機関」「一つの統制機関、一つの法、一つの武器」「武力の一本化」「パレスチナ人主導」「包括的武装解除」「非武装化に向けた個人警護」「非武装化が投資を呼び込む」「恩赦と社会復帰」「段階を踏む、検証可能にする」「非武装化の完了=イスラエル軍の撤退」

トランプ氏はこのほか、ガザに残されているイスラエル人人質1人の遺体を引き渡すよう、ハマスに強く求めた。イスラエル側は、今月14日に開始された和平計画の第2段階に入る前に引き渡しが行われるべきだったと述べている。

ハマスとイスラエルは、和平計画の第1段階として戦闘を停止。イスラエルからガザに連れ去られた人質とイスラエルにいるパレスチナ人囚人をそれぞれ引き渡したほか、イスラエル軍が部分撤退し、ガザへの人道援助の搬入量を増やした。

しかし、停戦は不安定な状態が続いている。ハマスが運営するガザの保健省は、停戦発効後もイスラエルがガザを空爆し、これまでに少なくとも477人のパレスチナ人が殺害されたとしている。一方のイスラエル軍は、同じ期間にパレスチナ武装勢力の攻撃によって兵士3人が殺されたと述べている。

また報道によると、22日のイスラエル軍の攻撃により、ガザ全体で5人が殺された。そのうち4人は、ガザ市東郊ザイトゥーン地区での砲撃によるものだった。

国連によると、ガザでは人道状況も依然として深刻で、約100万人が適切な避難場所を欠き、160万人が深刻な食料不安に直面しているという。

頭にスカーフを巻いた女性2人が抱き合い、悲しむ表情で泣いている

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画像説明, 停戦中にもかかわらず、22日にもイスラエル軍の攻撃があり、ガザ全体で5人のパレスチナ人が殺されたと報じられている(ガザ市)

ハマスは22日に声明を発表。10月の合意へのコミットメントを維持しているとしたうえで、イスラエルが「停戦の恒久化を目指す国際的取り組みを損なおうとしている」と非難した。

一方、イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領はダヴォス会議で演説し、「トランプ大統領の努力とその指導力」を称賛したうえで、「真の試金石は、ハマスがガザを離れることでなくてはならない」と警告した。

イスラエル占領下ヨルダン川西岸の一部を統治するパレスチナ自治政府(PA)のマフムード・アッバス議長は、イスラエル軍の撤退を含む和平計画の完全な履行と、ガザ行政におけるPAの中心的役割を求めた。

「平和評議会」の監督を受けて戦後のガザ統治を担うNCAGのトップには、PA元副大臣のアリ・シャース氏が任命されている。

シャース氏はこの日、エジプトとのラファ検問所が来週、双方向で開放されると発表した。イスラエル軍は2024年5月に同検問所のパレスチナ側を掌握しており、それ以来、検問所はほぼ閉鎖されていた。

シャース氏は「ラファの開放は、ガザがもはや未来や戦争に閉ざされていないことを示す」と述べた。

ハマスは2023年10月7日、イスラエル南部への襲撃を主導し、約1200人を殺害、251人を人質として連れ去った。

これを受けてイスラエルはガザ地区での軍事作戦を開始した。ハマス運営のガザ保健省によると、これまでに7万1560人以上が殺されている。