【解説】 ゼレンスキー氏とトランプ氏の会談、ウクライナにとっては米ロ首脳会談より大事なものにも

3首脳が集まって至近距離で立ち話をしている。マクロン氏は胸の前に右手を上げて開き、ゼレンスキー氏と目を合わせている。スターマー氏もゼレンスキー氏の顔を見ている

画像提供, Ludovic Marin/Pool via REUTERS

画像説明, パリのエリゼ宮で顔を合わせた(左から)ウクライナのゼレンスキー大統領、イギリスのスターマー首相、フランスのマクロン大統領

フランク・ガードナー、安全保障担当編集委員

18日に米ホワイトハウスで開かれるアメリカとウクライナの首脳会談が、ウクライナの将来にとって、そしてヨーロッパ全体の安全保障にとって、米アラスカで15日にあった米ロ首脳会談より、重大なものになる可能性は十分にある。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とアメリカのドナルド・トランプ大統領の再会は、表面上は、あらゆる期待に応えられなかったように見えた。

停戦も、制裁も、大々的な発表もなかった。

では、ウクライナとヨーロッパは、世界の2大核保有国が水面下でまとめた合意から、外されるところだったのか?

ウクライナと、ウクライナを支援するパートナー諸国がそれを防げるなら、どうやらそうはならなさそうだ。

イギリスのキア・スターマー首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相といった欧州首脳らが米ワシントンでゼレンスキー氏と同席するのは、2月28日のような大統領執務室での待ち伏せ攻撃をゼレンスキー氏がまたしても受けないようにする、そのためだけではない。

欧州首脳らは、トランプ氏に二つのことを、はっきり伝えようとしている。まず、ウクライナが直接関与しない限り、ウクライナにとっての和平合意はあり得ないということ。そして、和平合意は「鉄壁」の安全保障の保証に裏打ちされなくてはならないということだ。

欧州首脳らは何より、ウクライナとヨーロッパが団結していることをトランプ氏に示したいと思っている。また、トランプ氏がプーチン氏との個人的な親しさに流されて、ロシア側の要求に屈したりしないよう、欧州は働きかけるつもりだ。

動画説明, アラスカでの米ロ首脳会談を82秒で

ここで大きく試されるのが、スターマー氏の外交手腕だ。

トランプ氏はスターマー氏を気に入っていて、彼の意見には耳を傾ける。そして来月には、トランプ氏が国賓としてイギリスを訪れる。

トランプ氏はまた、会談に同席予定の北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長のことも気に入っている。ルッテ氏はトランプ氏と通じ合える、「ささやき担当」とも呼ばれている

一方でマクロン氏のことは、トランプ氏はあまり好きではないようだ。ホワイトハウスは最近、マクロン氏が次の国連総会でパレスチナ国家を無条件に承認する意向を示したことを、痛烈に批判している。

ウクライナの和平合意が何とかしてうまくいくには、何かを諦める必要がある。

欧州指導者らは、国境を武力で変えることはできないと何度も言ってきた。ゼレンスキー氏も、土地を手放すつもりはないと繰り返し言い、そもそもウクライナ憲法がそれを禁じていると主張してきた。

だが、プーチン氏はドンバス地方を欲しがっている。ロシア軍はすでに、同地方の約85%を掌握している。クリミアについても、プーチン氏に返還の意向はまったくない。

だが、前エストニア首相で、現在は欧州連合(EU)の外交トップを務めるカヤ・カラス氏がかつて私に話したとおり、この戦争におけるウクライナ勝利の定義を、占領された領土の回復に限定する必要はない。

もしウクライナが、現在話に上がっているNATO条約第5条のような安全保障を確保し、それによって将来のロシアの侵略を抑止し、自由な主権国家としての独立を維持できるのならば、それは一種の勝利となる。

アメリカとロシアはこのところ、ウクライナ領の一部と引き換えに、ウクライナはこれ以上ロシア相手に領土を手放さないための保証を獲得する――という提案を協議してきた様子だ。そのことが明らかになってきた。

ただし、これには実に大きい疑問符が伴う。

ウクライナは、戦争は終結するものの、国土を守るために何千、何万人も死んだあとにその国土の一部を手放するような合意を、受け入れられるのだろうか?

もし、ドネツク州でロシアがまだ占領していない3割の土地の放棄をウクライナが求められるなら、そこから西に向かって首都キーウへと続く道は、危険なほど防御が手薄になるのだろうか?

数万人の兵士を派遣するという当初の話は、その後、規模が縮小された。

今では、ウクライナ軍の再建を支援しながら、「空と海を守る」ことに重心が移っている。

しかし、たとえ戦場に平和が訪れたとしても、私たちはまだ危険な領域にいる。

私が話をした軍事専門家は全員、戦闘が止まった瞬間からプーチン氏は軍を再編して兵器を増産し、もしかするとわずか3、4年で、領土をさらに奪える状態にまで態勢を整えるはずだとみている。

もしそうなれば、進撃するロシア軍に最初のミサイルを撃ち込む用意ができているのは、戦闘機「タイフーン」か「F35」の勇敢なパイロットだということになるのだろう。