ウクライナへの「強固な」安全保障の保証、プーチン氏が同意したと米特使

米アラスカ州での首脳会談で顔を合わせたロシアのプーチン大統領とアメリカのトランプ大統領(15日)。プーチン氏は微笑みながらトランプ氏に言葉をかけている。トランプ氏は無表情で口を閉じて聞いている

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画像説明, 米アラスカ州での首脳会談で顔を合わせたロシアのプーチン大統領とアメリカのトランプ大統領(15日)

アメリカのスティーヴ・ウィトコフ特使は17日、米アラスカ州で15日に開かれた米ロ首脳会談で、アメリカと欧州諸国がウクライナに「強固な」安全保障の保証を提供することを、ロシアが和平合意の一環として容認することに同意したと述べた。

ウィトコフ氏はこの日、米CNNに対し、ロシアが首脳会談で、アメリカと欧州諸国が「事実上、NATO(北大西洋条約機構)条約の第5条に類する文言を用いて安全保障を保証する」ことに同意したと語った。NATO条約の第5条では、加盟国に対する武力攻撃は全加盟国への攻撃と見なし、各国が防衛に協力すると定めている。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は長年にわたり、ウクライナのNATO加盟に反対している。ウィトコフ氏は、「ウクライナ側が受け入れるのであれば」、この取り決めがNATO加盟に取って代わるかもしれないと述べた。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、アメリカによる安全保障の保証の提案を「歴史的」と形容した。ゼレンスキー氏は18日に米ワシントンで、トランプ氏と欧州指導者たちと会談する予定

ワシントン訪問を前にゼレンスキー氏は、いかなる保証も「陸・空・海における保護を提供する、非常に実践的なものでなければならない。欧州が参加して策定されなければならない」と述べた。

西側諸国の対応

こうした中、ウクライナでの平和が実現した際に、それを保護することを約束しているイギリス、フランス、ドイツなどからなる「有志連合」は17日に会合を開いた。英首相官邸の報道官によると、各国首脳は、安全保障の保証を提供するためのトランプ氏の「コミットメント」を称賛したという。

さらに、各国首脳は「敵対行為が終結した後に、『再保証部隊』を派遣し、ウクライナの空と海の安全確保やウクライナ軍の再建支援を行う用意があることを、改めて強調した」と、同報道官は付け加えた。

イギリスのキア・スターマー首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長、NATOのマルク・ルッテ事務総長は、18日にワシントンでゼレンスキー氏と合流する予定。

マクロン氏は、トランプ氏が安全保障の保証をめぐりどこまで踏み込むつもりがあるのかを、自分たちは問うつもりだと述べた。

そして、「我々は今日、強固でいなければ、明日は高い代償を払うことになる」とし、「一致団結した姿勢を示す」ことが「有志連合」の計画だと付け加えた。

英ロンドンのランカスター・ハウスでの、ウクライナ情勢に関する首脳会談後に言葉を交わす(左から)ウクライナのゼレンスキー大統領、イギリスのスターマー首相、フランスのマクロン大統領(3月2日)。ゼレンスキー氏とマクロン氏は向かい合い、マクロン氏は左手をゼレンスキー氏の右肩に乗せ、右の人差し指でスターマー氏の方を指している。ゼレンスキー氏は右手をマクロン氏の左ひじに添えている。スターマー氏はゼレンスキー氏を見つめている

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画像説明, 英ロンドンのランカスター・ハウスで、ウクライナ情勢に関する首脳会談後に言葉を交わす(左から)ウクライナのゼレンスキー大統領、イギリスのスターマー首相、フランスのマクロン大統領(3月2日)

領土問題は

ウィトコフ氏はCNNに対し、ロシアが領土問題について「交渉の場でいくつか譲歩」したとも述べ、ウクライナ東部ドネツク州が18日の会談の「重要な議論」の一つになるとした。

和平に向けた交渉をめぐっては、15日のアラスカ州での米ロ首脳会談で、プーチン氏がトランプ氏に和平案を提示したと報じられている。ウクライナが東部ドンバス地方に位置するドネツク州から撤退することと引き換えに、ロシアがウクライナ南部のザポリッジャ、へルソン両州の前線を凍結するという内容だとされる。

BBCがアメリカで提携するCBSは外交筋の話として、トランプ氏がゼレンスキー氏にこうした条件を受け入れるよう圧力をかけるのではないかと、欧州当局者が懸念していると報じた。

ロシアはウクライナ・ドンバス地方を自国領だと主張しており、現在は東部ルハンスク州の大部分とドネツク州の約70%を支配している。また、全面侵攻を開始する8年前の2014年には、ウクライナ南部のクリミア半島を一方的に併合している。

ゼレンスキー氏は12日、ロシアが停戦の交換条件にウクライナ東部ドンバス地方の割譲を要求した場合、それはどのような形でも拒絶すると述べた。ドンバスをロシアに与えれば、ロシアは将来、それを今後の侵攻の足掛かりにするはずだとゼレンスキー氏は警告した。

また、領土の変更には国民投票が必要だとウクライナ憲法で定められているとも指摘している。

動画説明, 笑顔から口論、そして決裂へ アメリカとウクライナの首脳会談

ゼレンスキー氏がホワイトハウスを訪れるのは、2月末にトランプ氏らと外交姿勢などをめぐって激しく口論して以来となる。トランプ氏は当時、ゼレンスキー氏はアメリカの支援にもっと「感謝すべき」などと主張し、「君は、第3次世界大戦につながる事態でギャンブルしている」と非難した。

その後に予定されていた共同記者会見と、鉱物資源の権益をめぐる合意文書への署名式は中止になり、トランプ政権はゼレンスキー氏 にホワイトハウスを立ち去るよう告げた。

ゼレンスキー氏とトランプ氏は4月、キリスト教カトリック教会の教皇フランシスコの葬儀を前にヴァチカンで会談し、2人は和解したように見えた。聖ペトロ大聖堂での15分間の会談を、ホワイトハウスは「非常に生産的」と評した。

4月末には、ウクライナの天然資源に関する協定をアメリカと締結した。ウクライナとアメリカは鉱物を探すための共同投資基金を設立し、収益の分配方法を定めるという内容だった。

ウクライナ政府は、米製兵器の購入にも前向きな姿勢を示している。

しかし、トランプ氏とプーチン氏の会談を受けて、ウクライナや欧州各国には懸念が広がっている。

ウクライナ侵攻をめぐる戦争犯罪容疑で、国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ているプーチン氏は15日、専用機を降りると赤いカーペットの上を歩き、トランプ氏から温かく迎えられた。会談後にトランプ氏は、2人の「関係は素晴らしい」と語った。