米ロ首脳が会談し共同会見 ウクライナでの停戦への進展では合意に至らずとトランプ氏

壇上の青地に白い文字で「PURSUING PEACE(平和を追求する)」と書かれた背景を背に、2台の演壇が置かれ、左側にプーチン氏、右側にトランプ氏が立っている。手前には記者たちが座っている。プーチン氏は左手で遠方の記者を指している

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画像説明, 共同記者会見に臨んだトランプ米大統領(右)とプーチン・ロシア大統領(15日、米アラスカ州アンカレッジの米軍エルメンドルフ・リチャードソン統合基地)

アメリカのドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領が15日午前(日本時間16日未明)から、米アラスカ州アンカレッジで会談した。約3時間後の午後3時(同16日午前8時)前、両首脳は共同記者会見に臨んだ。会談はウクライナでの停戦の進展が焦点となったが、トランプ氏は合意には至らなかったと述べた。

記者会見で先に発言したプーチン氏は、対立から対話に移行する時が来たと語り、この会談は「もっと早くあるべきものだった」と述べた。そして、ウクライナとヨーロッパが和平プロセスを「台無しにしない」ことを望むとした。

プーチン氏はまた、ウクライナでの戦争を「悲劇」と呼び、これを終わらせることに「誠実な関心」を持っていると述べた。

一方で、ロシアは今回の紛争の「主要な原因」を取り除く必要があると主張。今回の会談を紛争解決の「出発点」と位置づけた。

プーチン氏はまた、「トランプ大統領の好意的なトーンに感謝したい」とし、「双方は結果志向であるべきだ」と発言。「トランプは明らかに自国の繁栄を気にかけている。 しかし、ロシアにも国益があることを理解している」と述べた。

続いて発言したトランプ氏は、プーチン氏との生産的な会談で「いくらかの前進」があったと説明。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領や、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の指導者らに電話するとした。

また、「多くの点で意見が一致した」としながらも「いくつかの点」が残っているとし、「最も重要な点がある」と付け加えた。詳細は語らなかった。

さらに、合意は「詰まるところ」そうした関係各国次第で、その各国が同意しなくてはならないと述べた。

そして、ウクライナや欧州各国が了承するまで合意はないとしつつ、「大きな進展」があったと付け加えた。

トランプ氏は、この会談を「非常に生産的だった」としながらも、まだ決まっていないこともあると付け加えた。

そのうえで、いっそうの進展が実現する可能性は「非常に高い」と述べた。

動画説明, 「次はモスクワで?」プーチン氏のめずらしい英語、トランプ氏をロシアに招待

2回目の会談の可能性については、トランプ氏が「あたなたちとはかなり近いうちに話をすることになる。おそらくかなり近いうちに会うだろう」と述べ、プーチン氏が英語で「次はモスクワで」と応じた。

ただ、両首脳とも、ゼレンスキー氏を交じえた首脳会談をいずれ開くという姿勢は示さなかった。

会見は、記者からの質問を受けず、10分ほどで終わった。

両首脳は会見終了からほどなくして、それぞれの専用機で帰路についた。トランプ氏はその前に、会談の会場に戻り米FOXニュース相手のインタビューを録画した。

大統領専用機のタラップを上り、振り返って手を振るトランプ氏

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画像説明, プーチン氏の会談を終えたトランプ氏は大統領専用機に乗り込みワシントンへ戻った
ロシア政府機のタラップを上るプーチン氏の後ろ姿

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画像説明, プーチン氏はアラスカに約5時間滞在し、帰国した

トランプ氏はFOXニュースに対して、「とても良い会談」だったと述べ、次がどうなるかは様子を見るが「自分は人が死ぬのを止めたいのだ」とも述べた。

この場で停戦合意が得られなかった理由について尋ねられても、トランプ氏は明確な答えを避けたが、「(プーチン氏は停戦を)したがっていると思う」とも述べた。ただし、合意を妨げた「一つの重大ポイント」が何かは言明しなかった。

さらにトランプ氏は、ロシアがウクライナの全面侵攻を開始した時に自分がアメリカ大統領だったなら、戦争になど「なっていなかったはずだ」という自分の主張に、プーチン氏が同意したことを称賛した。

「この戦争はそもそも起きてはならなかった。起きるべきじゃなかった戦争はたくさんある。ばかなことが起きて、ふさわしくない連中がしゃべる」のだとトランプ氏は言い、ロシアによるウクライナ侵攻を防げなかったのはジョー・バイデン前大統領の責任だと非難した。

トランプ氏はさらにFOXニュースに対し、「合意が近づいている」と述べ、そのための条件として捕虜交換が含まれる可能性があるとうかがわせた。

「何千人もの捕虜の名前が並ぶ本を、きょう渡された。その捕虜たちは、釈放されることになる」とトランプ氏が述べたため、FOXのショーン・ハニティ司会者がそれは今日の合意内容なのかと尋ねると、トランプ氏は「向こうがそれを受け入れないとならない」と答え、まだ保留中だと説明した。

捕虜のリストが書かれた「本」をだれがトランプ氏に渡したのか、そして捕虜がロシア人なのかウクライナ人なのかについては、トランプ氏は明言しなかった。

ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は、トランプ氏とプーチン氏の会談について「非常に前向き」なものだったと話した。ロシア通信社RIAノーヴォスチが伝えた。

両大統領が会談後に記者の質問を受けつけなかった理由について、ペスコフ氏は「両者が包括的な声明」を出したため、必要がなかったと説明したという。

ペスコフ氏は、両首脳の対話を通じて、和平へ向けた選択肢を模索する道を、両首脳が「自信を持って共に前進」できるようになると付け加えた。

記者会見場の脇で話すトランプ氏とプーチン氏。プーチン氏はカメラに背を向けている。トランプ氏はプーチン氏に笑いかけている。2人の隣には通訳と思われる職員が立っている

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画像説明, 共同記者会見前に談笑するトランプ氏とプーチン氏(15日)
握手を交わすトランプ氏とプーチン氏。間に通訳と思われる男性職員が立っている。背景の壁には絵がかかっている

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画像説明, トランプ氏とプーチン氏は固い握手を交わした(15日)

BBCのギャリー・オドノヒュー主任北米特派員は、いずれの大統領も記者会見で、停戦という重要な問題で実質的な進展があったとは述べず、ましてや和平合意については何の言及もなかったと指摘する。

アンソニー・ザーカー北米特派員は、トランプ氏はこの会談が失敗する可能性は25%しかないと言っていただけに、国内的にも国際的にもその威信に傷がつくだろうと解説した。

BBCのサラ・スミス北米編集長は、「大統領が今朝、ワシントンからアラスカへ移動した際、停戦を発表したいのだと記者団にはっきり話していた。停戦合意がなければ、自分はうれしくないとも述べていた。それだけに、その発表ができないままステージを離れた時の大統領は、特にうれしそうな様子には見えなかった」と指摘した。

動画説明, 報道陣の質問受けず……米ロ首脳の会見に「あっけにとられた」 BBC北米編集長

温かいあいさつ交わす

両首脳はこの日午前11時ごろ、会談場所の米軍エルメンドルフ・リチャードソン統合基地に相次ぎ到着した。それぞれ専用機から滑走路に降り立つと、敷かれた赤じゅうたんを歩いて近づき、握手を2度するなど温かいあいさつを交わした。

その後、用意された壇の上に立ち、笑顔でメディアの撮影に応じた。記者団からはプーチン氏に、「停戦に合意するのか」、「民間人殺害はやめるのか」といった質問が投げかけられた。トランプ氏にも、どんなメッセージをプーチン氏に伝えるのかといった問いが飛んだ。両氏はそれらの質問に答えなかった。

両首脳はその後、トランプ氏のリムジンに同乗し、会場へと移動した。

動画説明, 温かい握手、リムジンに相乗り……トランプ氏がプーチン氏を歓迎 BBC特派員が分析

1対1から3対3に変更

両首脳が小型テーブルを挟んでいすに腰掛けている。ともにダークスーツ、白シャツ、赤系ネクタイを着用している。両首脳の斜め前では、ダークスーツ姿の双方の高官らがいすに座っている。背景には両国の国旗が立てられ、ボードには「平和を追求する」と大文字で書かれている

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画像説明, 会談に臨むトランプ米大統領(中右)とプーチン・ロシア大統領(中左)。双方の高官も会談に加わった(15日、米アラスカ州アンカレッジの米軍エルメンドルフ・リチャードソン統合基地)

会談は当初、1対1の予定だったが、双方とも高官が加わり3対3に変更された。アメリカ側は、マルコ・ルビオ国務長官とスティーヴ・ウィトコフ特使が同席。クレムリン(ロシア大統領府)によると、ロシア側はセルゲイ・ラヴロフ外相と、ユーリ・ウシャコフ大統領補佐官(外交担当)が加わった。

双方の高官4人は全員、2月にサウジアラビアで行われた和平協議で顔を合わせている。

クレムリンは、ロシアのアンドレイ・ベロウソフ国防相も「拡大形式」での会談に参加するとしていた。どの時点で加わるのかは不明。

トランプ氏は会談に臨む前、この日に停戦が合意されなければ「満足しない」と述べていた。

一方のプーチン氏には、「ウクライナを支配する」という目標を変えた様子はみられない。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、今回の首脳会談に招かれていない。ゼレンスキー氏は、「交渉の日にも、ロシア人は殺人を犯している」とコメントし、ウクライナ、アメリカ、ロシアの首脳に会談が必要だと付け加えた。

ウクライナの首都キーウでは、多くの住民が今回の首脳会談に懐疑的な意見だった。一方、ロシア兵らはBBCに、「ただすべてが終わってほしい」と話した。

会談場所のアンカレッジでは、ウクライナ支援者らによる抗議活動が行われた。

道路沿いで人々がウクライナ国旗やプラカードを手にしている

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画像説明, 会談場所近くでは、ウクライナ支持者らが抗議デモを繰り広げた。手前の女性が持つプラカードには、「ホワイトハウスからロシアが見える」と書かれている(14日)

解説:3年半たってもプーチン氏の意思は変わらない 

ヴィタリー・シェフチェンコ、BBCモニタリング・ロシア編集長(アンカレッジ)

アンカレッジでの展開に、多くの人が拍子抜けしたかもしれない。しかし、ウクライナでは、領土を代償とする「合意」が発表されなかったことにホッとした安堵(あんど)の声が上がっている。

ウクライナとロシアとの重要な合意は、これまですべて破棄されてきた。そのことを、ウクライナ国民は承知している。それだけに、仮に今回アンカレッジで何らかの合意が発表されたとしても、ウクライナ国民は疑心暗鬼で受け止めていたはずだ。

しかし、ウクライナ側が警戒するのは、会議の場でプーチン氏が再び「紛争の根本原因」に言及した点だ。プーチン氏は、その「根本原因」を取り除くことだけが持続的な平和につながると述べた。

クレムリン流の物言いを翻訳するなら、これはつまりプーチン氏が「特別軍事作戦」の当初の目的を依然として追求していることを意味する。特別軍事作戦の当初の目的とは、ウクライナを独立国家として解体することだ。

西側諸国による3年半にわたる働きかけは、プーチン氏の考えを変えることができなかった。今回のアラスカ会談も例外ではない。

会談後にも根強く続く不透明感も、懸念材料だ。今後何が起きるのか。ロシアの攻撃はこのまま続くのか。

これまでの数カ月間、西側諸国はさまざまな期限を設けてきたが、いずれも結果を伴わず、脅しも実行されなかった。これはプーチン氏に「どうぞ攻撃を続けてください」と言わんばかりの「招待状」に等しいと、ウクライナ人は受け止めている。アンカレッジで進展が見られなかったことも、ウクライナでは同様に受け止められる可能性がある。