【解説】 プーチン氏とトランプ氏、それぞれ何を望んでいるのか? アラスカで会談へ

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アメリカのドナルド・トランプ大統領と、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は15日、米アラスカ州で、ウクライナにおけるロシアの戦争の終結を協議する。ただ、両首脳にとって、優先課題は対照的なものとなっている。
プーチン氏は、ウクライナの領土を獲得したいという願望で一貫している。一方、トランプ氏は、世界的な平和主義者として行動したいという強い思いを公言している。
だが、両氏とも別の思惑を抱えているかもしれない。プーチン氏にとっては、国際舞台での外交的な復活の機会になるだろう。一方で、トランプ氏については、このところロシアに関する発言が揺れており、その狙いを推測するのは難しい。
両首脳はこの会談で何を望むのか、ロシアとアメリカを担当する記者が解説する。
プーチン氏:国際的な認知とそれ以上のものを視野に
スティーヴ・ローゼンバーグ・ロシア編集長
プーチン氏が今回の首脳会談で最初に望んでいるものは、すでに与えられている。
「認められること」だ。
世界最強の国アメリカから認められることであり、ロシア指導者の孤立を狙う西側の努力は失敗に終わったと認められることだ。
このハイレベル会談の開催自体が、そして、共同記者会見を開くとクレムリン(ロシア大統領府)が発表したことが、そのことを示している。これによりクレムリンは、ロシアが世界政治のトップの舞台に復帰したと主張できる。
ロシアのタブロイド紙モスコフスキー・コムソモーレツは今週、「孤立はもうおしまいだ」と強調した。
プーチン氏は米ロ首脳会談を実現させただけでなく、そのための最高の立地も確保した。アラスカはクレムリンにとって利点が多い。
まず安全保障だ。米大陸のアラスカと、ロシアで最も近いチュコトカは90キロメートルしか離れていない。プーチン氏は「敵対的な」国の上空を飛ぶことなく、現地入りできる。
次に、ウクライナからもヨーロッパからも非常に遠いことがある。これは、ウクライナや欧州連合(EU)の指導者らを脇に追いやってアメリカと直接取引をするという、クレムリンの決意にうってつけだ。
歴史的な象徴という側面もある。ロシアは、19世紀の帝政期にアラスカをアメリカに売ったという事実を、21世紀に力ずくで国境を変更しようとしていることの正当化に利用している。
「アラスカは、国境が変わる可能性があり、広大な領土の所有権が移る可能性があることを示す明確な例だ」とモスコフスキー・コムソモーレツは書いた。
ただ、プーチン氏は、国際的な認知や象徴以上のものを望んでいる。
彼は勝利を望んでいる。ロシアがウクライナの4州(ドネツク、ルハンスク、ザポリッジャ、ヘルソン)で掌握し占領しているすべての土地を維持し、ウクライナがこれらの州でまだ支配している地域から撤退するよう求めている。
ウクライナにとって、これは受け入れられないことだ。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「ウクライナ人は自分たちの土地を占領者に渡さない」と言っている。
クレムリンはそれを知っている。しかし、領土の要求についてトランプ氏の支持を得られるとしたら、ウクライナによる拒否は、トランプ氏のウクライナ支援の完全打ち切りにつながると計算しているかもしれない。そして、ロシアとアメリカは関係を強化し、経済協力の発展に乗り出すかもしれない。
だが、別のシナリオもある。
ロシアの経済は行き詰まっている。財政赤字は膨らみ、石油とガスの輸出による収入は減っている。
もし経済的な問題がプーチン氏を戦争終結へと向かわせているなら、クレムリンは妥協するかもしれない。
現時点では、その兆候はない。ロシア政府関係者らは、戦場で主導権を握っているのは自分たちだと主張し続けている。
トランプ氏:和平が前進と主張できるチャンスうかがう
アンソニー・ザーカー北米担当編集委員
トランプ氏が昨年の大統領選挙で、ウクライナでの戦争を終わらせるのは簡単であり、自分なら数日でできると宣言したのは有名な話だ。
この宣言は、トランプ氏の紛争解決に向けた努力に影を落としている。1月にホワイトハウスに戻って以来、トランプ氏はウクライナ側とロシア側に交互に不満をぶつけてきた。
2月のホワイトハウスでのゼレンスキー氏との劇的な会談では、同氏に説教を垂れ、その後には、戦争で荒廃したウクライナへの軍事支援と情報共有を一時停止した。
ここ数カ月は、プーチン氏のかたくなさと、民間人を平気で標的にすることを批判し、ロシアやロシアと取引のある国々に新たな制裁を科すとして、何度か期限を設定してきた。直近の期限は今月8日だったが、それまでと同様、トランプ氏は最終的には発動を見送った。
そして今、トランプ氏はアメリカ国内にプーチン氏を迎え、「土地の交換」について話そうとしている。これについては、和平と引き換えに土地を譲歩するのではないかと、ウクライナが懸念している。
こうした状況なので、トランプ氏が15日のプーチン氏との会談で何を望んでいるのかについての議論は、トランプ氏の揺れ動く言動によって混沌としたものとなる。
トランプ氏は今週、今回の会談に対する期待値を下げようと努めてきた。おそらく、戦争当事国の一つだけが参加する状況では事態打開の可能性が限られていることを、暗に認めているのだろう。
11日には、首脳会談について、「探りを入れる」ものになるだろうと発言。プーチン氏と合意できるかは、「たぶん最初の2分で」わかるだろうとした。
「幸運を祈る、と言って去るかもしれない。それで終わりになるかもしれない」とトランプ氏は付け加えた。「解決しないと言うかもしれない」
ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は12日、このメッセージを補強し、首脳会談を「傾聴の場」と呼んだ。ところが、週の半ばになると、トランプ氏は再び、合意の見込みに言及。ゼレンスキー氏とプーチン氏の双方が和平を望んでいると思うと述べた。
トランプ氏を相手にする場合、想定外のことを想定しておくのが最善ということがよくある。そこで、ゼレンスキー氏と欧州指導者らは13日、ウクライナが受け入れない、または受け入れられない取引を、トランプ氏がプーチン氏としないようにしようと、トランプ氏とオンライン会合で話をした。
ただ、1年を通してほぼずっと明らかなことがある。トランプ氏は、戦争を終わらせる男になれるチャンスならつかむ、ということだ。
大統領の就任演説では、自分の最も誇れるレガシーとして「平和の構築者」になることを望むと述べた。トランプ氏がノーベル平和賞という国際的な評価を切望していることは周知の事実だ。
トランプ氏は14日、大統領執務室で、1月の就任以来、解決に成功したと感じているすべての世界的な紛争について誇らしげに語った。しかし、ウクライナでの戦争について質問されると、珍しく、課題に直面していることを認めた。
「一番簡単なのはこれだと思っていた」とトランプ氏は言い、こう続けた。「実際には一番難しい」。
トランプ氏は細かいことにこだわる人ではない。しかし、アンカレッジでの会談で、和平に向けて前進させたと主張できるチャンスがあるなら、彼はそれを利用するだろう。
常に交渉上手なプーチン氏は、トランプ氏にそうさせる方法を探るかもしれない。もちろん、ロシアに有利な条件で。











