【解説】 米ロ首脳会談、アラスカの米軍基地で開催へ 知っておくべきこと

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マデレーン・ハルパート記者、クリスタル・ヘイズ記者、ジェイク・ラッパム記者(BBCニュース)
アメリカのドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナ戦争の終結に向けた協議のため、15日に米アラスカ州で会談を行う予定だ。
注目されるこの会談は、アラスカ州の最大都市アンカレッジの北端に位置する米軍施設「エルメンドルフ・リチャードソン統合基地」で開かれる。
ホワイトハウス関係者は、同基地が両首脳の会談に必要な安全保障上の条件を満たしていると述べている。また、夏の観光シーズンの最中であることから、急遽(きゅうきょ)設定されたこの会談に適した他の選択肢はほとんどなかったという。
トランプ氏の要請によって、これまでにロシアとウクライナの間で3度にわたる協議が行われたが、両国の和平に向けた進展は見られていない。
基地に関する情報と、会談で予想される内容をまとめた。
エルメンドルフ・リチャードソン統合基地
エルメンドルフ・リチャードソン統合基地は、冷戦時代にまでさかのぼる歴史を持つ、アラスカ州最大の軍事基地だ。敷地面積は6万4000エーカー(約260平方キロ)に及び、アメリカの北極圏における軍事即応態勢の要となっている。
雪を頂いた山々、氷に覆われた湖、そして美しい氷河に囲まれた同基地では、冬季には氷点下12度まで気温が下がることもある。しかし、両首脳が訪れる15日の気温は、比較的穏やかな16度と予想されている。
トランプ氏は2019年の第1期在任中に同基地を訪れた際、この基地の部隊は「我が国の最後のフロンティアにして、アメリカ防衛の第一線で任務に就いている」と述べた。
基地には3万人以上が居住している。これは、アンカレッジ市の人口の約10%を占めている。
1940年に建設されたこの基地は、冷戦期にはソヴィエト連邦からの脅威に備えるための重要な航空防衛拠点および中央指令基地として機能していた。
1957年の最盛期には、200機の戦闘機と複数の航空管制・早期警戒レーダーシステムが配備され、「北米のトップカバー(上ふた)」と呼ばれていた。
現在も、その戦略的な立地と訓練施設の充実により、基地の規模は拡大を続けている。

なぜアラスカで会談が行われるのか
アメリカは1867年、アラスカをロシアから購入した。そのため、今回の会談には歴史的な響きがある。アラスカは1959年に、アメリカの州となった。
ロシアのユーリ・ウシャコフ大統領補佐官は、両国はベーリング海峡で隔てられているだけで、隣接していると指摘した。
ウシャコフ氏は、「我々の代表団がベーリング海峡を越えて飛行し、このような重要かつ期待される首脳会談がアラスカで開催されるのは、極めて理にかなっているように思える」と述べた。
アラスカが最後にアメリカの外交イベントの舞台となったのは、2021年3月、ジョー・バイデン前大統領の外交・国家安全保障チームが、アンカレッジで中国側代表団と会談したときだ。
ただ、この会談は険悪な雰囲気となり、中国側がアメリカ側を「高圧的で偽善的だ」と非難するに至った。
なぜトランプ氏とプーチン氏は会談するのか
トランプ氏は、ウクライナでの戦争の終結に向けて積極的に動いているが、目立った成果は上がっていない。
昨年の大統領選では、トランプ氏は就任から24時間以内に戦争を終わらせることができると公約していた。また、ロシアが2022年に侵攻した際に自分が大統領であれば、戦争は「決して起こらなかった」と繰り返し主張している。
トランプ氏は先月、BBCに対し、プーチン氏に「失望している」と語った。
トランプ氏は不満を募らせ、プーチン氏に対し、即時停戦に応じなければより厳しいアメリカの制裁を科すとし、8月8日を期限に設定した。
しかし期限当日、トランプ氏はプーチン氏との対面会談を8月15日に行うと発表した。
トランプ氏によると、会談に先立ち、アメリカのスティーヴ・ウィトコフ特使が6日にモスクワでプーチン氏と「非常に有意義な」協議を行ったという。
会談を前に、ホワイトハウスは今回の首脳会談が停戦につながるとの臆測を抑える姿勢を示している。
キャロライン・レヴィット報道官は、「これは大統領にとって傾聴の機会だ」と述べた。
トランプ氏は11日、記者団に対し、今回の首脳会談を「探り合いの会談」と位置づけており、プーチン氏に戦争終結を促すことを目的としていると語った。
ウクライナは参加する?
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が会談に出席する予定はない。トランプ氏は11日、「彼(ゼレンスキー氏)が来てもいいとは思うが、すでに多くの会議に出席している」と述べた。
ただしトランプ氏は、会談後に最初に電話をかける相手はゼレンスキー氏だと語っている。
また13日には、欧州主要国の首脳らがトランプ氏とオンライン会合を持ち、アラスカでの首脳会談について話し合った。
プーチン氏はゼレンスキー氏の排除を求めてきた。一方、ホワイトハウスは以前、トランプ氏が3者による首脳会談に前向きだと述べていた。
ゼレンスキー氏は、ウクライナの関与なしに合意がなされた場合、それは「死んだ決定」だと語っている。
ロシアとウクライナはこの会談で何を求めているのか
ロシアとウクライナの双方は、戦争の終結を望んでいると長らく主張してきたが、両国の要求は互いに強く対立している。
トランプ氏は11日、「ウクライナのために、ロシアが占領している領土の一部を取り戻すつもりだ」と述べた。ただし、「ある程度の交換や領土の変更が必要になるかもしれない」とも警告している。
これに対しウクライナ側は、ロシアが掌握した地域、特にクリミアを含む領土に対するロシアの支配を容認しない姿勢を崩していない。
ゼレンスキー氏は今週、領土の「交換」という考え方に強く反発。「ロシアが行ったことに報酬を与えるつもりはない」と述べた。

一方で、プーチン氏は領土要求、ウクライナの中立化、そして将来的なウクライナ軍の規模に関する主張を一切譲っていない。
ロシアがウクライナへの全面的な侵攻を開始した背景には、北大西洋条約機構(NATO)が隣国ウクライナを足がかりに、ロシア国境に軍を近づけようとしているというプーチン氏の認識があるとされている。
BBCがアメリカで提携するCBSニュースによると、トランプ政権は、ウクライナの領土の一部をロシアに引き渡す停戦案について、欧州の首脳らを説得しようとしているという。
協議に詳しい関係者によれば、この合意案では、ロシアがクリミア半島の支配を維持し、ドネツク州とルハンスク州から成る東部ドンバス地方を取得することが盛り込まれている。
ロシアは2014年にクリミアを違法に占領し、現在もドンバス地方の大部分を掌握している。
この合意案ではまた、ロシアに対し、現在一部を軍事的に支配しているウクライナ南部のヘルソン州とザポリッジャ州を放棄することを求めている。











