「貿易戦争は誰の利益にもならない」と英首相、トランプ氏の関税の脅し受け

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ケイト・ワンネル政治記者
イギリスのキア・スターマー首相は19日、ドナルド・トランプ米大統領がデンマーク自治領グリーンランドを領有する計画に反対する欧州8カ国からの輸入品に一律10%の税を追加で課すと警告したことを受け、「貿易戦争は誰の利益にもならない」と述べた。
スターマー氏は首相官邸での演説で、「正しい対応」は「冷静な議論を通じて」行うことだと強調。同盟国に対して関税を用いるのは「相違点を解決する正しい方法ではない」と述べた。
スターマー氏はまた、グリーンランドに関する決定はグリーンランドとデンマークの住民が下すべきだとの信念を改めて示した。
そのうえで、原則を「脇に追いやることはできない」としつつも、「現実的」なアプローチを取ると誓い、英米関係は経済・軍事の双方で重要だと強調した。
スターマー氏は、トランプ氏が実際にグリーンランドに対する軍事行動を検討しているとは考えていないと述べた。
しかし、緊張緩和を図っているものの、状況は「極めて深刻だ」と強調。「国全体が結束するべき時だ」と述べた。
スターマー氏はまた、グリーンランドと関税の可能性に関して、最大野党・保守党のケミ・ベイドノック党首から示された支援を歓迎した。
一方で、トランプ氏による警告はイギリス国内で「非常に悪い受け止め方をされている」と述べつつも、「パフォーマンスとしての」あるいは「誇張した」行動を取るべきではないと警告した。
「それは政治家の気分を良くすることはあっても、私たちが世界中で築いた関係に依存して働き、暮らし、そして安全を確保している人々にとっては何の利益にもならない」
そのうえで、トランプ氏との緊密な関係を追求するという自身の判断を擁護し、その関係がイギリスに「数千億ポンド規模」の投資をもたらす助けになったと主張した。
演説とその後の質疑応答の中で、スターマー氏は防衛、核能力、情報分野における英米の協力に繰り返し言及した。
アメリカへの報復関税を検討するかと問われると、スターマー氏は「その段階には至っていない。私の焦点は、その段階に至らないようにすることだ」と述べた。
欧州各国はどう対応するのか
スターマー氏は19日夜、カナダのマーク・カーニー首相とイタリアのジョルジャ・メローニ首相と協議。イギリスとその同盟国には北極圏をロシアと中国から防衛する用意があると、トランプ氏を安心させる必要があると説明した。
英首相官邸の報道官は、「首相は、北極圏の安全保障の実現に向けてさらに踏み込むことは全ての国にとって利益があり、イギリスは北大西洋条約機構(NATO)を通じ、同盟国と完全に歩調を合わせて貢献する用意があると語った」と述べた。
欧州首脳らは、トランプ氏が今週、スイス・ダヴォスで開かれる世界経済フォーラムに出席する際、グリーンランドの将来について問題提起するとみられている。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、欧州連合(EU)が「貿易のバズーカ」とも呼ばれる「反威圧措置(ACI)」を発動すべきだと述べ、対抗関税を課す意向を示唆した。一方、イタリアのメローニ首相は、貿易戦争による相互負担への懸念を表明した。
現時点で、スターマー氏がダヴォス会議に出席する予定ではないが、今週の展開によっては、出席の可能性は残されている。
先週末には、フランスの小規模な部隊が、いわゆる偵察任務の一環としてグリーンランドに派遣された。この動きには、ドイツ、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、オランダ、イギリスも加わった。
トランプ氏がこれをアメリカに対する敵対的行動と誤解したのではないかという質問に、スターマー氏は「これは、昨日トランプ大統領と話し合った内容の一つだ」と述べた。
「これらの部隊は明らかに、ロシアからのリスクを評価し、対処するために派遣された。その意図は明確だったと願いたい」
スターマー氏はさらに、ヨーロッパは「自らの防衛と安全保障に、より一層力を注ぐ必要がある」と述べた。
トランプ氏は、自身がグリーンランド領有に関心を示す理由として、デンマークがロシアの脅威から同地域を十分に保護してこなかったこともあると主張している。
グリーンランドは人口密度がきわめて低いながらも、北米と北極の間に位置するため、ミサイル攻撃の早期警戒システムや、船舶監視の拠点に適している。
レアアース(希土類)や石油・ガスが豊富なことでも知られ、地球温暖化によって島全体を覆う氷床の融解が進むと、こうした資源へのアクセスが容易になる可能性がある。
トランプ氏は、グリーンランドの「完全かつ全面的な買収」が、アメリカと世界の安全保障に不可欠だと主張。「もし我々がグリーンランドを取らなければ、ロシアか中国がグリーンランドを取るだろう」と警告している。
トランプ氏は17日、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、イギリスの8カ国に対し、アメリカによるグリーンランド領有に協力しないなら、2月から追加関税を課すと述べている。税率10%で2月1日から開始し、グリーンランド購入合意が成立しなければ6月1日から25%に引き上げるとしている。
この関税により、イギリスの国内総生産(GDP)が0.5パーセントポイント押し下げられる可能性があると、経済学者らは試算している。
緊張の高まりによる影響は、19日朝の欧州株式市場にもおよび、自動車メーカーや高級ブランド企業が大きく値を下げた。






