英保守党の影の閣僚、解任され野党リフォームUKヘ移籍 保守党からの「くら替え」続く

リフォームUKの水色の背景の前で、ダークスーツ姿の両氏が笑顔で握手している

画像提供, Reuters

画像説明, 保守党からリフォームUKへ移籍したジェンリック氏(左)とリフォームUKのファラージ党首(15日、ロンドン)

イギリスの最大野党・保守党で閣僚や影の閣僚ポストを複数務めた有力議員のロバート・ジェンリック氏が15日、野党リフォームUKに移籍すると発表した。これに先立ち保守党は同日、ジェンリック氏が党に被害を与える形でかねて離反を画策していた証拠が得られたとして、影の法相のポストから解任したばかりだった。

リフォームUKのナイジェル・ファラージ党首は同日、ロンドンで開いた記者会見でジェンリック氏を紹介。保守党のケミ・ベイドノック党首に対し、かつて保守党の代表選でベイドノック氏が争った相手を追放することで、「イギリス政治の中道右派の再編に貢献してくれた」と「感謝」した。

ジェンリック氏は同じ会見で、保守党と元同僚議員たちを痛烈に批判し、保守党は国を「壊した」と述べた。さらに、保守党は「腐敗」しており、「有権者を裏切った」とも攻撃した。

ベイドノック党首は、ジェンリック氏が記者会見に登場する数分前に発言し、保守党にとって「良い日」で、ジェンリック氏は「今やナイジェル・ファラージの問題だ」と述べた。

ジェンリック氏はその後、英紙テレグラフに寄稿し、読者に「運動に参加してほしい」と呼びかけ、「国の未来がかかっている」と強調した。

保守党の現職下院議員がリフォームUKヘ移籍するのは、ダニー・クルーガー元影の労働・年金相に続いて2人目。保守党からはこのほか、ナディム・ザハウィ元財務相が12日にリフォームUKへ移籍したばかりで、これまでに約20人が同様に移籍している。

リフォームUKはここ数カ月の間、全国世論調査で一貫して支持率トップを維持している。

ジェンリック氏の移籍に先立ち同日、ベイドノック党首は同氏を影の内閣から解任し、保守党員資格を停止したことを動画で発表していた。

動画の中でベイドノック氏は、ジェンリック氏が「影の内閣の同僚たちや保守党全体に最大限の損害を与えようと、秘密裏に離反を画策していたという明白かつ反論不能の証拠を突きつけられた」と述べた。

これに対してジェンリック氏の反応がないまま数時間が過ぎる中、複数の保守党関係者はBBCに対し、離反演説を含む資料が「置き忘れられていた」ことで彼の計画が発覚したのだと話した。

保守党の消息筋によると、ジェンリック氏は先月の時点でファラージ氏と会食しており、スタッフは移籍の可能性を「さまざまな人たち」と相談していたという。

一方、ファラージ氏の関係者によると、ジェンリック氏はファラージ氏をはじめ複数のリフォームUK関係者と数カ月前から相談を続けていた。同党が政権党となった場合に閣僚ポストを約束したのかとBBCが尋ねると、この関係者はそれを否定した。

BBCのスタジオに座りカメラに向かってかすかにほほえむ、黒いスーツ姿のベイドノック氏
画像説明, 保守党のベイドノック党首

「遅いクリスマス・プレゼント」

ロンドン・ウェストミンスターで15日午後に記者会見に臨んだリフォームUKのファラージ党首は、「どう対応するべきか、とても素早く考えなくてはならなかった」と述べた。

ジェンリック氏とは数カ月にわたり話をしていたが、保守党からの最新の離反者として記者会見で紹介するつもりではなかったのだとも話した。

その上でファラージ氏はベイドノック党首に対し「こんなに遅いクリスマスプレゼントは初めてだ」と「感謝」した。それからしばらく間をおき、ジェンリック氏が登壇してファラージ氏と並んだ。

「真実を語る時が来た」、「イギリスは衰退してきた。イギリスは今、衰退している」とジェンリック氏は述べ、さらに「労働党も保守党もイギリスを壊した。そして両党は今、それを立て直すのに必要な能力も覚悟もない人々に支配されている」と二大政党を批判した。

ジェンリック氏は、保守党がイギリスの現状を直視しようとせずに現実を否定しているとも批判し、元同僚を次々と名指しして批判した。

影の財務相メル・ストライド氏については、「福祉予算の爆発的増加を所管」し、自分が労働・年金担当の議会担当秘書官だった当時、ストライド氏が「必要な改革を妨害した」と述べた。プリティ・パテル元内相については、「100万人の移民を受け入れた」とし、それを「戦後のイギリス政府にとって史上最大の失敗」と呼んだ。

ジェンリック氏は保守党のボリス・ジョンソン政権で住宅担当相を、リシ・スーナク政権では移民担当や保健・社会保障担当など複数の閣外相を歴任し、ストライド、パテル両氏の同僚だった。

ジェンリック氏は、「ひどく失敗した」政権において自分がその一員だったことは認めつつ、ジョンソン、スナク両首相に「落胆した」と述べた。

記者からの質問に対し、ジェンリック氏は解任前から保守党を「離れる決意」を固めていたと述べ、「長い時間をかけて熟考してきた」のだと説明した。

補選の実施を強いるために議員辞職するつもりはなく、リフォームUKの党首を目指すつもりもないと述べ、「私はナイジェルに首相になってほしい」と強調した。ファラージ党首は、ジェンリック氏が「第一線のチームに加わる」と述べたが、役職は明示しなかった。

ファラージ氏は、5月7日の地方選挙と総選挙が「締め切り」となるとして、それ以降の保守党からの移籍は受け入れないとも述べた。

一方、保守党のベイドノック党首は、ジェンリック氏がリフォームUKに加入する直前、BBCに対し、「数日前まで離反の予定はないと言いながら、同僚を傷つける形で裏で離反を画策していた人物は、保守党にはふさわしくない」と述べた。

ベイドノック氏はさらに、「同僚にうそをつくような人間を失うのは、痛手ではない」として、「本当のことを言っているのは私だけだと、人々は見ている」、「私は同僚を守る義務がある(中略)そして保守党に投票する人々を守る義務がある」と話した。

「今日は良い日だ。悪い人間が私の党から去っている」ともベイドノック党首は述べた。

ベイドノック党首は、ジェンリック氏の後任として、テリーザ・メイ元首相の側近だったニック・ティモシー議員を影の法相に任命。「真の保守党員」で「手強い選挙戦士」だと称賛した。

与党・労働党を率いるキア・スターマー首相は、ベイドノック党首の判断を「弱さの表れ」とし、なぜ彼女がこれほど長く行動しなかったのかと疑問視した。

「ジェンリックはもう何カ月も、国を分断しようとする有害な発言を続けてきた。それにもかかわらず、彼がリフォームUKに離反しようとして初めて、ベイドノックは彼を解任した」とスターマー首相は述べた。

スターマー首相は、保守党からリフォームUKに大勢が「洪水のように」移籍しているのは、「保守党が沈没船だと示している」と述べた。さらに「政治家失格の政治家たちをナイジェル・ファラージは次々と歓迎し、国をひどく裏切った保守党政治家たちの政党として、自分の党を作り上げている」と批判した。

ジェンリック氏の解任と移籍は、イギリスの右派の将来にとって極めて重要な瞬間とされている。保守党議員たちは、自党がリフォームUKに乗っ取られつつあることを深刻に懸念している。

ジェンリック氏は2024年の保守党党首選で2位となった。ソーシャルメディアでの動画投稿を通じて、その後も存在感を高めていた。

野党・自由民主党のデイジー・クーパー副党首は、ジェンリック氏について「イギリスがいかに壊れているかと不満を述べるなど、厚顔無恥にもほどがある。彼と保守党の仲間たちこそが、イギリスを、そして政治への信頼をこれほど傷つけた張本人だ」と批判した。クーパー氏はさらに「リフォームUKと保守党は同じコインの裏表だ」と付け加えた。