【地図で見る】 ウクライナ領土は戦争でどのように荒らされてきたのか トランプ・プーチン会談の焦点に

ポール・アダムスBBC外交担当編集委員
アメリカのドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領が15日、米アラスカで会談する見通しとなっている。この会談で、ウクライナの地図が強制的かつ根本的に変更されるかもしれない――。そうした臆測が飛び交っている。
ロシアは2014年以降、ウクライナの広範な地域について、領有権を主張し続けている。プーチン大統領がウクライナ領土に対して最初の動きを見せたのは、この年のことだった。
当時、ロシアはわずか数カ月のうちに、比較的流血の少ないかたちでウクライナ南部クリミア半島を占領し、一方的に併合した。
ウクライナ領土への攻撃はこれだけでは収まらなかった。今度は同国東部、具体的にはドネツク州とルハンスク州で、ロシアの後ろ盾を受ける分離主義運動が勃発したのだ。
その後8年間にわたって、戦争の火種がくすぶり続けた。

この間に、ウクライナは約1万4000人の兵士と民間人を失った。
そして2022年2月、プーチン氏はウクライナへの全面侵攻を開始した。ロシア部隊は首都キーウの郊外に素早く到達したほか、南部ではザポリッジャ州とヘルソン州の大部分を含む広範な地域を占領した。

以来、戦況は一進一退を繰り返している。ロシアが支配するウクライナ領土は、2022年春の約27%から現在は20%ほどにまで減少している。東部ではロシア軍が前進を続けているが、その速度は非常に遅く、大きな犠牲を伴うものとなっている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、無条件の停戦が今すぐ必要だと訴えている。欧州の支援国も戦闘の停止を求めている。トランプ米大統領も、それがまさに自分が実現しようとしていることだとしている。
しかし、プーチン氏とのアラスカでの会談を控える中、トランプ氏は今回の交渉ではロシアとウクライナの「領土交換」があると言及している。こうした発言は、ウクライナ政府や欧州諸国に衝撃を与えている。
トランプ氏がどの地域を指しているのか、また「領土交換」がどのような形になりうるのかは不明だ。そもそも、論点になっている領土はすべて、法的にウクライナに帰属している。
2025年8月時点でのウクライナ領土の状況は、次の通り。
・ロシアが占領:ロシアと国境を接する東部ルハンスク州のほぼ全域とドネツク州の大部分、南部のザポリッジャ州とへルソン州の大部分(沿岸部から内陸にかけて)、2014年にロシアが一方的に併合した南部クリミア半島など
・ロシアが一部占領:ルハンスク州境からハルキウ州にかけての一部、ドネツク州とザポリッジャ州の内陸部の一部など
・ロシアが占領したと主張:ロシアが一部占領するルハンスク、ハルキウ、ドネツク、ザポリッジャ各州の内陸部の一部など

ロシアは、ルハンスク、ドネツク両州全域にまで支配を拡大したいと強く望んでいる。
一部報道によると、プーチン氏はウクライナに対し、両州でウクライナが支配を維持している領土を引き渡すよう要求しているとされる。
しかし、ウクライナがこれに応じれば、大勢のウクライナ兵がその命を犠牲にして守ろうとしてきたクラマトルスクやスラヴャンスクなどの都市、そして北部や西部の要塞化された防衛線を諦めることになる。

ウクライナ政府にとっては、受け入れがたい譲歩だ。一方で、ウクライナよりも壊滅的な損失を被ってきたロシア政府にしてみれば、これらの領土の獲得は勝利となるだろう。
ゼレンスキー氏は12日、ウクライナはドネツク、ルハンスクの2州からなるドンバス地方を放棄することは「できない」と述べた。ロシア政府が同地域を足がかりにして、ウクライナの残りの地域に対する攻撃を仕掛けてくる可能性があるためだとした。
ロシア部隊はここ数日、ドネツク州ドブロピリャ近郊で攻勢を強め、前進しているようだ。しかし、これが戦略的に重要な動きなのか、それともトランプ氏に対して、ロシアの優位性を示そうとしているだけなのかは分からない。
では、ロシアは2022年に占領したザポリッジャ州とヘルソン州については、どう考えているのだろうか。
報道によると、ロシアは同地域での攻撃を停止し、戦線を凍結することを提案しているという。

では、ロシアには、2州のほんの一部でもウクライナに返還するつもりはあるのだろうか。
トランプ氏は11日、「海沿いの不動産」について曖昧(あいまい)に言及した。おそらく、アゾフ海や黒海の沿岸地域の一部を指しているのだろう。
しかし、これらの地域は、プーチン氏が掲げる、ロシアが占領したクリミア半島とロシア本土を結ぶ戦略的に重要な「陸の橋」の一部だ。
そのため、プーチン氏がこれらの地域の一部を手放すとは考えにくい。ドネツク州やルハンスク州と同様に、プーチン氏は同地域をロシアの一部と見なしている。
3年前には、ロシアが支配するドネツク、ルハンスク、ヘルソン、ザポリッジャの各州で、ロシアへの編入の是非を問う「住民投票」が実施され、賛成票が圧倒的多数とされた。西側諸国からは「茶番」などと非難が上がった。それから間もなく、プーチン氏は「住民投票」の結果を根拠として、4州の「編入」を一方的に宣言した。
ウクライナや欧州諸国にとって、こうした「領土交換」は、和平交渉のかなり早い段階にある現状では、まったく受け入れられない条件だ。
将来的な国境に関する議論は、いずれ行われる可能性はある。しかしそれは、この戦争が終わり、ウクライナの安全が保証されてからの話だ。











