ウクライナと欧州諸国、和平交渉にウクライナの参加必須と 米ロ会談へ向け

プーチン氏、トランプ氏、ゼレンスキー氏の近影が並んでいる

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アメリカとロシアの両政府がウクライナでの戦争をめぐり15日に米アラスカ州で首脳会談を開くと発表し、交渉にはロシアとウクライナの「領土交換」が関係するとトランプ米大統領が言及したことについて、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は9日夜、「ウクライナのための和平への道は、ウクライナと一緒に決められなくてはならない」と強調。トランプ氏が自分に本物の持続的な和平の必要性を伝えたとも明らかにし、自分たちはアメリカの停戦案を支持し続けてきたと述べた。イギリスなど欧州諸国首脳は同日夜、どのような和平交渉にもウクライナの参加が不可欠だと強調する共同声明を出した。

ゼレンスキー大統領は9日夜のビデオメッセージで、「アメリカが終戦を確保する能力について、協力国が疑問視するのは耳にしていない。合衆国大統領は、必要な手段と決意のほどを備えている。ウクライナはこれまで、今年2月から始まり、トランプ大統領のあらゆる提案を支持してきた。あらゆる形式の停戦を支持してきた」と述べた。

そのうえでゼレンスキー氏は「いま必要なのは殺害の一時中止ではなく、本物の、持続的な平和だ。いつかの将来的な、数カ月後の停戦ではなく、直ちに。トランプ大統領は私にそう告げたし、私はこれを全面的に支援する」と話した。

またゼレンスキー氏は、停戦に反対しているのはロシアのプーチン大統領ただ一人だと非難。「戦争と殺りくの一時停止と引き換えに、我々の領土の占領を合法化し、二度目の領土獲得を実現したいのだ」と指摘した。

「プーチンは今、我々のヘルソン州の南部、ザポリッジャ、ルハンスクとドネツク州の全てとクリミアを奪ったことを、許してもらいたがっている」、「我々は、こうしたウクライナ分割の二度目の取り組みを許さない。ロシアを知っているので、二度目があれば三度目があるからだ。だからこそ我々は、ウクライナの立場を堅持している」と大統領は強調した。

大統領は続けて、「ウクライナのための和平への道は、ウクライナと一緒に決められなくてはならない。これは基本だ」と強調した。

イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、フィンランドの各国首脳と、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は同日夜の共同声明で、ウクライナを支える姿勢をあらためて強調した。

各首脳はさらに、「ウクライナでの平和への道は、ウクライナ抜きで決定できない」と述べ、「ウクライナは自らの運命について、選ぶ自由を持つ」と強調した。

欧州首脳たちはさらに、「国際的な境界を武力で変更することがあってはならない」として、欧州各国が引き続きウクライナを外交、軍事、財政の面で支援していくと約束した。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は9日にソーシャルメディア「X」で、ゼレンスキー大統領やドイツのフリードリヒ・メルツ首相、イギリスのキア・スターマー首相と話をしたと明らかにした上で、「ウクライナを支え続けるという覚悟」は変わらないと述べた。「ウクライナの未来をウクライナの人々抜きで決めることはできない」と強調し、「欧州の安全保障にも影響する」問題のため、解決策には「欧州の人間が参加することも必要だ」と書いた。

これに先立ちゼレンスキー大統領は9日朝、プーチン氏と会談するというトランプ氏の発表を受け、ウクライナは「占領者に領土を明け渡さない」と表明し、ウクライナ抜きの解決策は「平和に反する解決策」だと主張していた。

ウクライナをめぐりトランプ氏は8日、自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、会談の場所と日程を発表。「大いに期待されていた、アメリカ合衆国大統領の私と、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の会談は、次の金曜日、2025年8月15日に偉大なアラスカ州で行われる」と書いた。

これを受けて、クレムリン(ロシア大統領府)のユーリ・ウシャコフ補佐官(外交担当)は、プーチン大統領がトランプ氏との会談に出席すると追認。「ロシアとアメリカは国境を接する近隣同士」なので、「我々の代表団が単にベーリング海峡を越えて、これほど重要で期待されている両国の首脳会談がアラスカで開かれるのは、とても論理的なことに思える」とコメントしていた。

米英とウクライナ高官が会談

白とベージュの応接室で、ゆったりした椅子に3カ国の政府高官らが座り、カメラに向かって微笑んでいる

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画像説明, 英米とウクライナ高官たちがロンドン近郊のイギリス外相公邸で会談した。左から、ウメロフ・ウクライナ国家安全保障・国防会議書記、ラミー英外相、ヴァンス米副大統領、イェルマーク・ウクライナ大統領府長官

9日にはロンドン南東ケント州にあるイギリス外相の公式別荘で、アメリカ、イギリス、ウクライナの高官らが会談した。この会談は、アメリカ政府の要請で開かれたと言われる。

デイヴィッド・ラミー英外相のもとに、イギリスで夏休み中のJ・D・ヴァンス米副大統領、ウクライナのルステム・ウメロフ国家安全保障・国防会議書記(前国防相)およびアンドリー・イェルマーク大統領府長官が集まった。ほかに、イギリス、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリア、フィンランド、欧州連合、北大西洋条約機構(NATO)の安全保障担当者らが参加した。

ラミー外相は、「公平で永続的な和平に向けて努力し続ける中、イギリスは引き続きウクライナを鉄壁に支持し続ける」と述べた。

この会議の前には、スターマー英首相がゼレンスキー大統領と電話で会談。スターマー氏によると、和平に向けてどう前進するか話し合う「不可欠な場」になると両首脳は同意したという。

9日夜のビデオメッセージでゼレンスキー氏は、イギリスでの会議は「建設的」だったと報告。「ウクライナのための和平への道は、ウクライナと共に、そしてウクライナが参加している形でのみ、決定されるものではなくてはならない。これは不可欠の原則だ」と述べた。

トランプ氏は「領土交換」に言及

ロシアが制圧するウクライナ領の範囲の変化。2022年2月の全面侵攻開始前は、ロシアが2014年に併合したクリミア半島をロシアが制圧していたほか、ウクライナ東部の一部がロシアが支援する分離独立派が支配していた。同年3月にはロシアがウクライナ国境沿いで北部から南部にかけて急進撃したものの、同年11月までには北部からは後退し、東部と南部を制圧していた。今年8月の時点では北部の一部と東部でロシアがじわじわと前進している

プーチン大統領は7日にモスクワで、トランプ氏の特使スティーヴ・ウィトコフ氏と会談した際に、求める和平条件を提示したとされる。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは消息筋の話として、プーチン氏はウクライナ軍が東部ドネツクとルハンスク両州から完全撤退することを求めていると伝えた。ロシアは両州の大半をすでに制圧している。

同紙はさらに、欧州諸国はその場合、ウクライナ東部ヘルソンとザポリッジャ両州はどうなるのか、明示するよう求めていると報じた。ロシアはヘルソンとザポリッジャ両州も一部を掌握している。

ロシア側の要求についてアメリカから説明を受けた欧州当局者たちは、プーチン氏が「今の前線を現状のまま凍結させるつもりなのか、それともヘルソンとザポリッジャ両州からはいずれ完全撤退するつもりなのか、どちらともとれて不明確だ」という印象を得たと、ウォール・ストリート・ジャーナルは伝えている。

同紙の報道内容について、BBCは確認できていない。

BBCがアメリカで提携するCBSニュースは、ウクライナが領土のかなりの部分をロシアに渡すことを求める停戦案について、ホワイトハウスは欧州各国を納得させようとしていると伝えている。

CBSニュースは消息筋の話として、この停戦案ではロシアは併合しているクリミアをそのまま支配し続けるほか、ドネツクとルハンスク両州からなるドンバス地方全域を領有することになる。

他方、ロシアはヘルソンとザポリッジャ両州はウクライナに返還することになると、CBSは伝えている。

CBSニュースによると、ホワイトハウス幹部の一人は、15日の米ロ首脳会談の計画はまだ流動的で、ゼレンスキー氏が何かしらの形でかかわる可能性はまだあると話している。

トランプ氏は8日に記者団に対し、3カ国間の合意形成をアメリカが実現する可能性がまだあると強調した。

「欧州首脳たちは平和を求めている。プーチン大統領も平和を求めていると思う。ゼレンスキー氏も平和を求めている」とトランプ氏は述べ、「ゼレンスキー大統領は、彼が必要とするものをすべて手に入れる必要がある。何かに調印する用意を彼はする必要があるし、その実現のために懸命に努力していると思う」と話した。