ジョンソン元英首相は「議会を故意にミスリードしていた」 下院特別委が報告書発表

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英下院特別委員会は15日、新型コロナウイルス対策のロックダウン中に首相官邸などでパーティーが開かれた、いわゆる「パーティーゲート」に関する調査報告書を公表した。ボリス・ジョンソン元首相がこの問題をめぐる答弁で「議会を故意にミスリード」していたと結論し、90日間の議員資格停止処分に当たるとしている。
英下院では通常、審議中に閣僚がわざとうそをついたり、議会をミスリードしたりしたと発覚した場合、それは辞職・解任理由になる。議会をミスリードするとは、虚偽と知りながら議会に虚偽の情報を事実であるかのように提示し、誤った方向へ議会を導くことを意味する。
イギリスの歴代首相で、議会をミスリードしたと認められたのは、ジョンソン氏が初めて。
報告書はこのほか、ジョンソン氏がパーティーゲートを否定することで、繰り返し違反を犯していたとしている。
ジョンソン氏は公表前の9日に調査報告書のコピーを受け取っており、その日のうちに議員を辞職。特別委の対応は「魔女狩り」で、報告書は「偏見」に満ちて「間違いだらけ」だと非難した。
辞職に伴い、ジョンソン氏の選挙区では7月20日に補欠選挙が行われる見通しだ。
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最大野党・労働党のハリエット・ハーマン議員が率いる特別委員会は7人から成り、与党・保守党の議員が多数を占める構成だった。1年間の調査結果をまとめた報告書は106ページにわたる。
調査では、ジョンソン氏がパンデミック時に首相官邸で起きた新型ウイルス対策違反について、議会をミスリードしたかを検討した。
ジョンソン氏は3月に証拠を提出した際、激しい議論の中で、意図的に議会をミスリードさせたことを断固として否定した。
しかし報告書は、ジョンソン氏が「個人的に違反を知って」おり、それを「積極的に調査することを繰り返し怠った」ことは、事実から「意図的に目をそらした」ことに他ならないと結論付けた。

特別委は、2020年5月~2021年1月までに起きた6件の集まりと、それらについてのジョンソン氏の議会答弁に着目。政府関係者は、ジョンソン氏にソーシャルディスタンスが常に順守されていたとは報告していなかったが、ジョンソン氏はそのような答弁を行ったのだと指摘した。
重要な証拠となったのは、首相時代に側近だったマーティン・レノルズ氏の証言だ。レノルズ氏は、2021年12月の首相質疑へ向けて準備している際に、ジョンソン氏がルールは常に守られてきたと言うことが「現実的」なのかか疑問に思ったと、調査に対して語った。
特別委は、ジョンソン氏の事実否定は、「非常に不誠実で、その本質は意図的なミスリードの試み」だったと指摘。ジョンソン氏の責任を追及するという議会の「重要な任務」の遂行を妨げるものであり、議会に対する「侮辱」に相当するとした。
90日の資格停止処分について特別委は、議会のミスリードに加え、以下のような侮辱が繰り返し行われたためだと説明している。
- 調査を行っている委員を故意にミスリードしようとしたこと
- 9日の辞職の際に、公表前の報告書の内容に言及したこと
- 「委員会を批判する」ことで、委員に対する 「罵倒キャンペーン」に加担していたこと
特別委はこれに加え、元議員に与えられる議会への入場許可証をジョンソン氏から剥奪するよう勧告している。
委員のうち、スコットランド国民党(SNP)のアラン・ドランズ議員と労働党のイヴォーン・フォヴァーグ議員は、さらに踏み込んでジョンソン氏を下院から追放しようとしたが、4人の保守党議員が反投票を投じた。
今後どうなるのか
報告書は19日に下院で審議され、投票が行われる予定。
ジョンソン氏はすでに議員を辞職しているため、資格停止は適用されない。そのため、主要な処分は議会への入場許可証のはく奪となる。
保守党のペニー・モーダント下院院内総務が、反対票を投じる党議拘束はかけないと発言したため、報告書は可決される見込みだ。
ただし、多くの保守党議員は派閥争いから距離を置くために、棄権する可能性がある。
現時点で公に報告書を批判している保守党議員は、ジョンソン氏の盟友でジョンソン政権時代に文化相を務めたナディーン・ドリス議員、ジェイコブ・リース=モグ議員、サイモン・クラーク議員など、ほんの一握りしかいない。
首相官邸は、リシ・スーナク首相が議決に参加するかについてコメントしていない。首相報道官は、「首相はまだ報告書を全て熟慮していない。その時間を取るつもりだ」と述べた。
一方、労働党のアンジェラ・レイナー副党首は、委員会は「証拠にとらわれず」、「非常に批判的な結論」に達したと述べた。
また、ジョンソン氏は「不名誉な首相」であり、「議会の近くにいるべきでない」と語った。
野党・自由民主党は、首相経験者の議員活動に与えられる年間11万5000ポンドの配当をジョンソン氏からはく奪するべきだとしている。
COVID-19の遺族を代表する団体はジョンソン氏について、「二度と公職に就くことを許されるべきではない」と述べた。
特別委を占い師に例え……
報告書の公表を受け、ジョンソン氏はあらためて特別委への批判を繰り返した。
ジョンソン氏は、特別委が「自分を有罪にし、議会から追放するという唯一の政治的目的」によって動かされていると警告されていたと述べた。
また、3月に特別の前で行った主張の多くを繰り返した。その中には、自分が出席したすべての行事が「合法的」で「業務上必要」だったと信じているという主張も含まれている。
議会を意図的にミスリードしたという疑惑については、これは「くだらない」もので、「明らかに不合理な一連の事柄」に基づくものだと述べた。
さらに、特別委が2020年12月に首相官邸の報道室で数十人のスタッフが参加した集まりをジョンソン氏が「知らなかったとは考えにくい」と結論づけたことを、占星術師の故ミスティック・メグ氏になぞらえた。
「どうして私が見たことを知っているのか。私が全く知らない網膜の像を、委員会はどうにかして発見したのだろうか」
「パーティーゲート」問題は2021年末に初めて報じられ、大きなスキャンダルに発展した。
2022年5月には、ジョンソン政権(当時)の依頼で独自調査を進めた地域活性化・住宅・コミュニティー省のスー・グレイ第二事務次官が報告書を提出。感染対策に沿わない数々のパーティーを許した官邸内の風潮について、官邸幹部に責任があると指摘した。
また、英ロンドン警視庁もこの件について捜査を行い、感染症対策の法律に違反したとして、ジョンソン氏や当時財務相だったスーナク氏に罰金を科した。ジョンソン氏は違法行為で処罰される同国初の現職首相となった。
ジョンソン氏は一連のスキャンダルを受け、7月に保守党党首を辞任した。










