【解説】 中国の軍事パレード、トランプ氏のハイリスク貿易政策の危険性も映す

画像提供, Getty Images
アンソニー・ザーカー北米特派員
中国の軍事力が、3日に行われた第2次世界大戦の終戦80年を記念するパレードで、全面的に披露された。
一方、数千キロ離れた米首都ワシントンのホワイトハウスでは、ドナルド・トランプ大統領がその様子に注目していた。
「彼らは私が見ていることを望んでいた。そして私は見ていた」とトランプ氏は語った。
トランプ氏は、天安門広場を埋め尽くした大規模な祝典について詳細な見解は示さなかったが、「とても、とても印象的だった」と述べた。中国からトランプ氏、そして世界に向けたメッセージは、明確だと見られている。
それは、世界で新たな勢力の中心が台頭しており、過去1世紀にわたってアメリカが主導してきた秩序に対する新たな選択肢が存在する――というものだ。
トランプ氏はこの日、ホワイトハウスの大統領執務室でポーランドのカロル・ナヴロツキ大統領と会談した。その際には、この式典に関する具体的な言及はなかった。
しかし一連の発言は、ここ数日に中国で起きた出来事に対する、トランプ氏に典型的な堂々めぐりの思考の集約であり、あいまいさと不満、そして懸念が入り混じった内容となっている。
トランプ大統領は、2日に出演したポッドキャスト番組で、中国がロシアのウラジーミル・プーチン大統領や北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記など20人以上の国家元首の前で軍事力を誇示したパレードについて、「懸念していない」と述べ、軽く受け流す姿勢を見せた。
しかし、同日夜には自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、中国が第2次世界大戦におけるアメリカの支援に対して感謝を示していないことに不満を表明した。
トランプ氏はまた、習氏に向け、「ウラジーミル・プーチンと金正恩に、あなた方がアメリカ合衆国に対して共謀している最中であることを踏まえ、私の心からのあいさつを送ってほしい」と投稿した。
陰謀論はさておき、トランプ氏は軍事パレードや武力の誇示に対して特別な関心を持っている。8月にプーチン大統領をアラスカに迎えた際には、ステルス爆撃機による儀礼飛行と、アメリカ軍の戦闘機が並ぶレッドカーペットで歓迎した。
また、第1期政権でフランスの革命記念日の式典に参加したことを良い思い出として語っているほか、2カ月前にはアメリカ陸軍創設250周年を祝う軍事パレードをワシントンで主催している。
北京のハイテク兵器と精密な行進による洗練された演出とは対照的に、トランプ氏のパレードは、第2次世界大戦の戦車やアメリカ独立戦争時代の兵士がホワイトハウス近くのコンスティテューション・アベニューをゆったりと歩く、控えめな軍事史へのオマージュだった。
この式典は、トランプ氏の「アメリカを再び偉大に」という過去志向のスローガンや、19世紀の重商主義に基づいた経済政策にふさわしい、郷愁を帯びた内容となっていた。トランプ氏はしばしば、アメリカが最も偉大だったのはこの時代だと話している。

画像提供, Reuters
未来的な兵器が並んだ中国の軍事パレードも当然、歴史的な文脈を含んでいた。共産党政権は、第2次世界大戦におけるファシズムと帝国主義の打倒において、中国がより大きな役割を果たしたと主張しようとしている。
この大戦が「アメリカの世紀」の幕開けとなったとされるなか、中国は自国の貢献に対する新たな評価が、今後の中国主導の未来への移行を円滑にすると期待しているのかもしれない。
第1次トランプ政権下で退役軍人問題担当長官を務めたリチャード・ウィルキー氏は「これは世の中のルールを書き換えるための組織的な取り組みの第一歩だ」と述べ、「そのためにはまず歴史を書き換える必要がある」と語った。
現在はトランプ派の「アメリカ・ファースト外交政策研究所」で米安全保障共同議長を務めるウィルキー氏はさらに、日本のアジアにおける敗北には、中国のナショナリストとアメリカ軍が大きく関与していたと指摘し、共産党軍の役割は限定的だったとの見方を示した。
ただし、今週中国から発信された映像は、このパレードだけではない。アメリカ主導の国際秩序の維持を目指す政策担当者にとって、懸念材料となり得るものが他にも存在している。
「アメリカ第一主義」へのリスク
式典に先立つ1日、習主席とプーチン大統領は、インドのナレンドラ・モディ首相と天津で開催された上海協力機構(SCO)首脳会談で会談した。トランプ政権による関税政策の影響が中印両国に大きな打撃を与えているなか、両国間の冷え込んだ関係が緩和に向かっている兆しと見られている。
トランプ氏の「アメリカ第一主義」による貿易政策は、世界の経済・政治の枠組みを混乱させている。中国とロシア、インドの首脳間に見られる新たな関係性は、地政学的なパズルの主要なピースが、困難ながらも予測可能な形で結びつきつつあることを示している。
トランプ氏はもちろん、関税がアメリカの産業を保護し、連邦政府の歳入を増やすための重要な手段だと見ている。外交的な代償があるとしても、現時点では、それを受け入れる構えを見せている。
前出のウィルキー氏は、「韓国と日本、フィリピン、ヴェトナムは、アメリカとの通商関係の不調よりも、中国の軍事力の増大こそが真の脅威だと認識している」と述べた。
トランプ氏はまた、遠方の外国の紛争や懸念にはあいまいな姿勢を見せる一方で、グリーンランド、パナマ、カナダ地理的に近い「勢力圏」には強い関心を示し続けている。
しかし、トランプ氏にとっての懸念は、広範囲にわたる関税政策が、リスクばかりで見返りがない結果に終わる可能性があることだ。新たに構築されたアメリカ中心の貿易体制が、今後、アメリカ司法によって解体されるかもしれないことが、いっそう強く示されている。
米控訴裁判所は8月29日、トランプ氏が導入した多くの関税が、連邦法の誤った解釈に基づいているとの判断を示した。トランプ氏は、最高裁判所にこの判断を覆すよう求める意向を示している。保守派が多数を占める同裁判所は、トランプ氏に有利な判決を下すことが多いものの、大統領が議会の明確な承認なしに、大規模な新政策を実施することには否定的な見解を示してきた。最高裁が、大統領権限に関するトランプ氏の緩い解釈を支持する保証はない。
貿易政策に関して、トランプ氏は独自の路線を歩んできた。アメリカを劇的な新路線へと導き、わずか数カ月で新たな国際的な関係を築いてきた。
トランプ氏は、この野心的な戦略が「アメリカの第2の黄金時代」につながると約束している。しかし、その危険性は、天安門広場の式典会場でも、アメリカの法廷でも、現実のものとなっている。













