米控訴裁、「トランプ関税」を違法と判断 下級審に続き

部ルーツのスーツに黄色のネクタイを着けたトランプ大統領が、ホワイトハウスの大統領執務室に座っている

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マックス・マッツア記者(BBCニュース)、アンソニー・ザーカー北米特派員

アメリカの連邦控訴裁判所は29日、ドナルド・トランプ大統領による関税措置の大半について、違法との判断を示した。トランプ氏の外交手段に影響しかねない法的対立につながる可能性がある。

今回の判決は、トランプ氏が世界各国に課した「相互主義」に基づく関税のほか、中国、メキシコ、カナダに対して発令された関税にも影響し得る。

首都ワシントン連邦巡回控訴裁判所は7対4の多数決で、関税導入は「国際緊急経済権限法(IEEPA)」に基づき正当なものだというトランプ政権の主張を退け、「法に反する無効な措置」だと判断した。

この判決は、政権側が最高裁判所に上告するための猶予期間として、10月14日まで効力を保留される。

トランプ氏は自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」でこの判決を批判し、「この判決が確定すれば、文字通りアメリカ合衆国を破壊することになる」と述べた。

トランプ氏は「極めて党派に偏った控訴裁判所が本日、我々の関税を撤廃すべきだと誤って判断した。しかし、最終的に勝つのはアメリカ合衆国だ。それを(控訴裁は)理解している」と投稿した。

「この関税がなくなれば、国家にとって完全な大惨事になる。我々は財政的に弱くなってしまう。我々は強くなければいけない」

関税発令は大統領権限ではないと判断

トランプ氏が関税措置の根拠として挙げた1977年制定のIEEPAは、「異常かつ並外れた脅威」に対処する権限を大統領に与えている。

トランプ氏は貿易に関する国家非常事態を宣言し、貿易不均衡がアメリカの国家安全保障にとって有害だと主張している。しかし裁判所は、関税の発令は大統領の権限には含まれないと判断し、その決定は「議会の中核的な権限」だと結論づけた。

そのうえで、トランプ大統領が主張した緊急経済権限に基づく関税措置は、「法に反する無効なものだ」として退けた。

127ページにおよぶ判決文で判事たちは、IEEPAが「関税(またはその類義語)について一切言及せず、大統領が関税を課す権限に明確な制限を設ける手続き的な保障も存在しない」と指摘している。

このため、課税および関税の賦課権限は依然として議会に属するもので、IEEPAはこの議会権限を覆すものではないと裁判所は判断した。

さらに、議会が1977年に同法を制定した際に、「従来の慣行を逸脱し、大統領に無制限の関税賦課権限を与える意図があったとは考えにくい」との見解を示した。

判事らは、「議会が大統領に関税を課す権限を委任する場合には常に、関税や税率といった明確な用語を用いるか、あるいは関税に関するものであることが明白な法構造を通じて明示的に行っている」と記している。

今回の判決は、アメリカの中小企業および複数の州が提訴した訴訟2件に対するもの。訴えは、トランプ大統領が4月に発令した大統領令を受けて起こされた。

トランプ氏の大統領令は、世界のほぼすべての国に対して一律10%の関税を課したほか、数十カ国に対して「相互主義」に基づく関税も導入した。トランプ氏はこの4月2日を不公正な貿易政策からのアメリカの「解放の日」だと宣言していた。

今回の判決は、これらの関税に加え、カナダ、メキシコ、中国に課された関税も無効とするもの。トランプ氏は、これらの関税が薬物の輸入を阻止するために必要だと主張していた。

ただし、今回の判断は、別の大統領権限に基づいて導入された鉄鋼やアルミニウムに対する関税には適用されない。

ホワイトハウスの弁護士らは判決を前に、一連の関税を無効にすれば1929年型の金融崩壊、すなわち世界恐慌を引き起こす可能性があると警告していた。

大統領の法務顧問らは書簡の中で、「IEEPAに基づく大統領の関税権限を突然撤回すれば、国家安全保障、外交政策、経済に壊滅的な影響を及ぼす」と述べた。

「大統領は、他国がすでに支払うことを約束している数兆ドルの返済が不可能になり、国家の財政破綻につながると考えている」

今回の判決は、アメリカと一部の国々との間で合意された関税引き下げ協定にも疑問を投げかける内容となっている。

連邦最高裁に持ち込まれるのか

控訴裁の判断を受けて、この件は連邦最高裁判所に持ち込まれる可能性が極めて高くなった。近年、最高裁は議会が明確に承認していない大統領の広範な政策実行に対して、懐疑的な姿勢を示している。

ジョー・バイデン政権下では、最高裁が「重要問題の法理」を拡大解釈し、既存の法律を用いた民主党の政策、たとえば発電所による温室効果ガス排出の制限や、数百万人のアメリカ人学生のローン債務の免除といった取り組みを無効とする判断を下してきた。

9人の最高裁判事が今回の関税訴訟をめぐる上告を受理した場合、トランプ氏の大規模な関税政策が大統領権限の逸脱にあたるのか、それとも法的根拠に基づいた正当な措置なのかが、争点となる見通し。

控訴裁判所が大統領に不利な判断を下したものの、ホワイトハウス側は、同裁判所の判事11人のうち、共和党政権が指名したのは3人だけだったという点を、今後の安心材料にしている可能性がある。

連邦最高裁では、判事9人のうち6人は共和党政権が指名。そのうち3人はトランプ氏自身が指名している。