ハンガリー、現金と金を輸送のウクライナ銀行員を拘束 ウクライナが抗議し釈放

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ヘレン・サリヴァン記者、ポール・カービー欧州デジタル編集長
巨額資産を輸送中のウクライナ銀行員7人をハンガリーが拘束した問題で、ウクライナは6日、銀行員たちの釈放を確保し、全員がウクライナ国内に戻ったと明らかにした。ウクライナとハンガリーの関係は、ロシアによるウクライナへの全面侵攻の中で悪化しており、最近ではウクライナを通るロシア産原油の供給停止をめぐり厳しく対立している。
ハンガリーは5日、現金輸送車で8000万ドル(約126億円)相当の現金と金9キロをウクライナへ運んでいた、ウクライナ国立貯蓄銀行(オシュチャドバンク)の職員7人を拘束した。
ハンガリーの税務当局は、マネーロンダリング(資金洗浄)の疑いで拘束したと述べたが、ウクライナのアンドリィ・シビハ外相は、ハンガリー政府が銀行員たちを人質にして資金を盗んだと非難していた。
外相は6日夜、7人は釈放され、ウクライナ領内に無事に戻ったとソーシャルメディア「X」で明らかにした。
オシュチャドバンクは、行員たちはオーストリアとウクライナ間の定期的な資金輸送に携わっていたとして、「不当に拘束された」と批判した。
ハンガリーの税務当局は、行員たちを捜査の上、国外追放するとしていた。また、資金輸送を監督していたのは、ウクライナ情報機関の元将官だったとも主張した。
ハンガリーの国家税関・税務局は6日、「今年だけで、少なくとも900億ドルと4億2000万ユーロと重さ計146キロの金の延べ棒が、ハンガリー領内を通じてウクライナに運ばれた」と述べた。
ハンガリーが5日に押収した巨額の現金と金がどうなったのかは、まだ明らかになっていない。ポーランドのラデック・シコルスキ外相は、「(ハンガリーが)盗んだ」と述べた。
報道によると、ハンガリーの対テロ機関TEKの黒い服を着た当局者が5日、ウクライナ登録の車両を急襲した後、車列はブダペストへ向かったという。
ウクライナのシビハ外相は、ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相がウクライナをハンガリーの「国内政治と選挙運動」に引き込んでいると非難。ウクライナは「この国家的山賊行為」を容認しないと述べた。
対するハンガリーのシーヤールトー・ペーテル外相は、なぜこれほどの巨額が現金で運ばれていたのかと疑問視。「もしこれが本当に銀行間の取引なら、なぜ送金で行われなかったのか」と述べた。
ウクライナ経由でロシア産原油を東欧へ運ぶドルジバ・パイプラインの停止について、ウクライナとハンガリーは舌戦を繰り広げている。
ハンガリーでは4月に総選挙が行われる。選挙運動が佳境に入る中、オルバン・ヴィクトル首相の支持率低迷が報じられている。
原油供給停止で対立 4月にはハンガリー総選挙

オルバン首相は6日の定例ラジオ出演で、ウクライナの銀行職員7人については触れなかったが、ウクライナにとって重要な「輸送」はロシア産原油の供給をめぐる論争が解決するまで停止されると述べた。
欧州連合(EU)の指導者で最もロシア寄りと見られるオルバン首相は、ウクライナがパイプラインを意図的に停止していると非難している。
ウクライナは、パイプラインは1月のロシア空爆で損傷したと主張しているが、オルバン首相はパイプラインが稼働できない理由が人工衛星画像で確認できないと反論。ウクライナに「供給再開を強制する」と脅した。
オルバン首相はさらに、ウクライナの財政維持に不可欠な900億ユーロ(約16兆5000億円)のEU支援パッケージを、石油供給再開を強いるために阻止している。
オルバン首相は、EUによるウクライナ支援に繰り返し反対し、支援は戦争を長引かせると主張している。4月の総選挙に向けては、主に反ウクライナ的メッセージを展開している。
同首相は2月、ハンガリーのエネルギーインフラの安全強化を指示。根拠を示すことなく、ウクライナが「いっそうの破壊行動」を準備していると主張した。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、オルバン首相がEUの財政支援パッケージを阻止していることを批判。5日には、ドルジバ・パイプラインが再稼働するまでにまだ4〜6週間はかかるかもしれないと述べた。
ゼレンスキー大統領は記者会見で「正直に言って、私だったら再開しない。これが私の立場だ。欧州の指導者たちにもそう伝えた(中略)これはロシア産の石油だからだ」と述べた。
「ロシア人がウクライナ人を殺しているのに、我々はオルバン首相に石油を渡さなくてはならない。気の毒なことに彼が、この石油なしでは選挙に勝てないからだ」
ウクライナ大統領はさらに、もしハンガリーの首相がEUによる財政支援を阻止し続けるなら、ウクライナ軍にオルバン首相の住所を伝え、「彼らの言葉で首相と話をするように」指示すると警告した。
ゼレンスキー大統領のこの発言については、オルバン政権を強く批判する新興野党「ティサ(尊重と自由)」のマジャル・ペーテル党首も批判した。ティサは現在、総選挙を前に世論調査でリードしている。
欧州委員会もゼレンスキー大統領の発言を批判した。「そのような言葉遣いは受け入れられない。EU加盟国を脅してはならない」と、同委のオロフ・ギル報道官は記者団に述べた。
ギル報道官は、欧州委員会は全ての関係者と積極的に協議しており、「皆が少し落ち着き、言葉遣いを自重し、侵略戦争を終わらせるようロシアに圧力をかけるという(取り組みを)実施する」ことを目指していると述べた。
オルバン首相は、ハンガリー政府は「政治的および財政的手段」を使って、ロシア産石油をハンガリーの製油所に運ぶパイプラインを、ウクライナに無理やりにでも再開させると述べた。
ドルジバ・パイプラインは、ロシア産石油をハンガリーとスロヴァキアに供給する主要ルート。ハンガリーとスロヴァキアへの石油輸送は、1月27日以降停止している。
今週の別の動きとして、ハンガリー外相はモスクワを訪れ、ハンガリー系の戦争捕虜2人の解放を確保した。
ハンガリー側は、この2人はウクライナのザカルパッチャ地方出身で、ハンガリーとウクライナの二重国籍者だが、ウクライナが徴兵したのだと非難している。
ウクライナは、この2人のハンガリー移送を「国際人道法の重大な違反」と呼んでいる。











