金正恩氏、「南北統一」の目標を放棄 韓国を「第1の敵国」に定めるべきと

画像提供, Reuters
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は15日、最高人民会議(国会に相当)で、韓国との統一はもはや不可能であり、憲法を改正して韓国を「第1の敵国」に定めるべきだと述べた。国営の朝鮮中央通信(KCNA)が16日に報じた。
KCNAによると、金総書記は南北統一を所管する3機関を閉鎖するとも述べた。
韓国の尹錫烈(ユン・ソンニョル)大統領はこれに対し、北朝鮮からのいかなる挑発にも「何倍も強力に」対応すると述べた。
朝鮮戦争が1953年に停戦となって以降、南北は分断されたままになっている。平和条約は締結されておらず、北朝鮮と韓国は形式上は戦争状態にある。
韓国は「第1の敵、不変の主敵」
KCNAによると、金氏は最高人民会議での演説で、憲法を改正し、韓国は「第1の敵、不変の主敵」であると、北朝鮮国民を教育すべきだと語った。
また、朝鮮半島で戦争が勃発した際には南を「占領」、「奪還」し、北の領土に「編入」することを、憲法に反映させるべきだとした。
さらに、北朝鮮は「戦争を望んでいないが避けるつもりもない」と述べた。
そして、南北統一に関連する全機関の解体を含め、南北関係について「新たな立場」をとるとした。
韓国の尹大統領は16日、韓国軍の「圧倒的な対応能力」に言及し、北朝鮮が挑発行為を行えば韓国は「何倍も強力に報復する」と述べた。
英ケンブリッジ大学の地政学センターで日本と朝鮮半島の研究を率いるジョン・ニルソン=ライト博士は、今回の金氏の発言は「前例がないもの」で、北朝鮮指導者が統一政策から離れるのは「極めて異例」だと指摘した。
「南北関係が冷え込むのはめずらしくはないが、今回の件で両者の関係はこれまでとは別の方向に進んだ」と、同博士はBBCに語った。
さらに、金氏の反欧米姿勢は、2019年にヴェトナムで開かれたドナルド・トランプ米大統領(当時)との首脳会談までさかのぼると付け加えた。
この両者にとって2回目の会談は決裂に終わり、「金氏にとって大きな失望となり、面目を失わせた」と、ニルソン=ライト博士は述べた。
<関連記事>
高まる緊張
南北関係はここ数カ月で著しく悪化している。そうした中で、金氏は統一政策の転換に言及した。
韓国は昨年11月、北朝鮮が軍事偵察衛星を打ち上げたことを受け、南北間の緊張緩和を図り2018年に締結した軍事合意の一部効力を停止すると発表した。
すると、北朝鮮は同月、この南北軍事合意を全面的に破棄すると発表。「地海空を含むすべての領域で軍事衝突を防ぐためにとられていた」全措置を撤回し、境界線周辺に「より強力な軍隊と新型の軍備」を配備すると述べた。
以来、北朝鮮の挑発的な行動や発言はエスカレートする一方となっている。
金氏は昨年末に開かれた、国家の重要政策を決める朝鮮労働党中央委員会拡大総会で、南北関係と統一政策に対する北の姿勢を「新たに打ち出す」必要があるとし、「敵」に関連する「決定的な政策転換」を行うと述べていた。
また、韓国への核攻撃を警告するとともに、自国の軍備増強を指示した。
北朝鮮はこの数週間、ミサイルを複数回発射し、韓国領土の近くで実弾演習も行っている。
米国務省の元高官ロバート・カーリン氏と米核科学者ジークフリート・S・ヘッカー氏は、朝鮮半島が1950年の朝鮮戦争の開戦以来「かつてないほど危険」な状況にあると、米拠点の北朝鮮分析サイト「38ノース」が先週発表した報告の中で指摘している。
両氏は、「大げさに聞こえるかもしれないが、1950年に祖父(金日成、キム・イルソン)がしたのと同様に、金正恩氏が戦争に踏み切るという戦略的決断を下したのだと、我々は考えている」と説明。
「金氏がいつ、あるいはどのように、その引き金を引くつもりなのかは我々にはわからない。しかしその危険性はすでに、北朝鮮政府の『挑発行為』に対する米政府、韓国政府、日本政府の日常的な警告をはるかに超えている」とした。
さらに、北朝鮮メディアが報じる「戦争準備のテーマ」を、「典型的な大言壮語」だと見てはいけないと付け加えた。
前出のニルソン=ライト博士もこの指摘に同意し、「エスカレーションが起きるリスクを真剣に受け止めるべきだ」と述べた。
こうした中、北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外相は14日、ロシア・モスクワに到着し、16日にはウラジーミル・プーチン大統領と面会した。
西側諸国から孤立している北朝鮮とロシアはこのところ、関係を強めている。昨年9月には金氏がロシアを訪問し、プーチン氏と会談した。









