ガザ停戦実現は 仲介役は合意推進も、イスラエルとハマスの要求に大きな隔たり

ラン・ネル、BBCニュース(エルサレム)

昨年10月7日にハマスに拉致された人質の解放を求める張り紙(24日、イスラエル・テルアヴィヴ)

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画像説明, パレスチナの情報筋は、エジプト政府がハマス側に対し、人道的停戦から始まる5段階の新たな枠組みを提示したとしている。写真は、ハマスに拉致された人質の解放を求める張り紙(24日、イスラエル・テルアヴィヴ)

ガザでの紛争をめぐり、新たな停戦の実施と残る人質の解放を求める圧力が激しく高まっている。パレスチナ自治区ガザ地区の住民の苦しみ、そして人質の苦しみを和らげるためだ。

ガザ地区で続くイスラエルとイスラム組織ハマスの戦いについて、数週間にわたるカタールとエジプトの仲介と、アメリカの介入はこれまでのところ、何の突破口にもつながらなかった。

ところがここ数日の間に、イスラエルとハマス双方の代表団による間接的な協議で、「かなりの」進展があったことを示唆する報道が増えている。

他方、イスラエルのメディアは、双方の間には根本的な問題で「非常に大きな」隔たりがあると、慎重さを促す複数のイスラエル当局者の話も匿名で伝えている。

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BBCの取材によると、一番の隔たりとなっているのは要するに、完全な戦闘終結の実現方法をめぐる食い違いのようだ。

イスラエル軍の空爆で死亡した人々が埋葬されたガザ地区南部ハンユニスのナセル病院の敷地で、顔を覆い座り込む女性(22日)

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画像説明, ガザ地区南部ではイスラエル兵とハマス戦闘員の激しい戦闘が続いている。写真は、イスラエル軍の空爆で死亡した人々が埋葬されたガザ地区南部ハンユニスのナセル病院の敷地で、嘆く女性(22日)

「5段階の新たな枠組み」提示と

現在進行中の協議に詳しいパレスチナ自治政府の高官は、エジプト政府がハマス側に対し、5段階の新たな枠組みを提示したと、私たちに語った。

提示された枠組みは、まず人道的停戦から始まるとされる。その間にハマスは、女性や子供、高齢者を含む、人質となっている民間人を解放することになる。

その見返りとして、イスラエルの刑務所に収監されているパレスチナ人受刑者の一部が釈放され、ガザ地区で切実に必要な援助物資の搬入量も増えるという。

最終的には、長期停戦と敵対行為の完全な停止につながるという内容だという。

情報筋によると、残りのイスラエル人人質の引き渡しとあわせて、パレスチナ人受刑者がさらに釈放されることが提案されている。

加えて、捕虜になっているイスラエル兵の解放と引き換えに、これまでより高名なパレスチナ人受刑者の釈放が求められているようでもある。

ガザ地区で活動するイスラエル兵(21日)

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画像説明, イスラエル国防軍がどの時点でガザ地区から撤退するかが、主な対立点となっていると言われている。画像は同地区で活動するイスラエル兵(21日)

パレスチナ自治政府関係者によると、イスラエルはこの停戦プロセスの最終段階まで、自軍をガザ地区に駐留させると主張している。

ハマス側はイスラエル部隊の完全撤退と、家を追われたガザ住民の帰還をもっと早く実現できるよう要求しているという。

複数の外国メディアは、ハマスが完全停戦を要求しているのに対して、イスラエルの交渉担当者は、受け入れ可能なのは数週間の一時停戦のみだという姿勢だと報じている。ただし、イスラエル側は、状況の進展に応じて停戦期限の延長はあり得るとも示しているという。

カタール外務省のマジェド・アル・アンサリ報道官は23日の記者会見で、「我々は双方にアイデアを提示し、絶えず返答を得ている。返事が来ること自体、事態を楽観視できる材料だ」と述べた。

アメリカ国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報担当調整官はこの後、ブレット・マガーク中東政策調整官がエジプト・カイロに滞在中で、人質の帰還と人道的な一時停戦へ向けた新たな取り決めについて、この地域で「活発な」話し合いを続ける方針だと明らかにした。

「非常に冷静で真剣な話し合いをしている」と、カービー氏は記者団に語った。

双方の隔たりは

イスラエル国防省での閣僚会議に出席したベンヤミン・ネタニヤフ首相(7日、テルアヴィヴ)

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画像説明, イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相(左から2番目)はガザ地区での「絶対的勝利」以外は受け入れられないと述べた。画像は国防省での閣僚会議(7日、テルアヴィヴ)

ハマスは昨年10月7日、ガザ地区での戦闘の引き金となった衝撃的な越境攻撃を行い、イスラエル側から250人以上を連れ去った。昨年11月下旬から1週間続いた戦闘休止合意では、このうちイスラエル人105人と複数の外国人の人質が解放された。

その見返りとして、イスラエルの刑務所に収監されていたパレスチナ人受刑者約240人が釈放された。

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イスラエルとハマスは、パレスチナ人受刑者と引き換えに人質が解放されるごとに、戦闘休止を1日延長するという条件を拒否し、戦闘休止の崩壊を招いたと、互いを非難した。

いまでは双方の側に、公的に宣言されている内容と、交渉可能な事柄の間に大きな相違があることは必至だ。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は今週、ガザ地区での「絶対的勝利」以外は受け入れられないと繰り返し主張している。

しかし、10年半にわたりガザ地区を支配してきたハマスを、完全に壊滅させることは現実的ではないと、多くの論者は指摘している。

ただ、ガザ地区を実効支配する立場からハマス幹部を排除するという目標について、イスラエルと西側の同盟国は譲歩しそうにない。約1200人が殺害された3カ月前の攻撃を、確実に繰り返さないようにするためだ。

興味深いことに今週には、停戦と人質解放をめぐる提案の一環として、イスラエルがハマス指導者たちの他国への移住を認める提案をしたという未確認の報道もあった。ハマス側はそのような提案を拒否したと主張した。

ガザ地区南部ハンユニスから立ち上る煙(22日、南部ラファの避難民キャンプから撮影)

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画像説明, 国連はガザ地区の人道状況は「ぞっとする」ほどで、220万人のパレスチナ人が「非人道的で劣悪な環境」で暮らしているとしている。画像は同地区南部ハンユニスから立ち上る煙(22日、南部ラファの避難民キャンプから撮影)

ハマスが運営するガザ地区の保健省によると、同地区ではこれまでに2万5000人以上が死亡するなど、壊滅的な人道的状況となっている。イスラエルにとっては、国際社会からの停戦を求める声を無視し続けるのが難しくなりつつある。

こうした中、イスラエル人人質の家族は大規模な抗議行動や集会を行っている。それを通じてイスラエル国民は、人質の家族に強く同情・共感している。そして、大切な人を取り戻すのだという家族の要求は今や、イスラエル国内政治における優先課題だ。

それだけに、人質解放交渉に進展はないとするイスラエルでの最新報道は、イスラエル国民の間に不安を引き起こすだろう。

様々なイスラエル報道で引用されている匿名の外交当局者は、前向きな進展があるかのように思わせる情報は「フェイク」だと一蹴。交渉が進まないのは、ハマスが譲歩しないからだと非難している。

交渉を仲介する側は間違いなく、大急ぎでこのプロセスを後押ししようとしているはずだ。イスラエルもハマスも現時点では、現在の間接的な協議をまだ放棄しようとはしていない。それこと自体が現時点での、一番の前向きな材料なのかもしれない。

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【訂正】2024年2月13日:この記事は発表当初、ハマスは昨年10月7日のイスラエル攻撃で約1300人を殺害したと伝えていましたが、これは当日殺害された約1200人に、負傷のため後日亡くなった方々を含めた人数でした。このため記事本文を修正し、当日殺害された人数を「約1200人」にあらためました。この人数について、イスラエル政府は確定的な人数ではないと説明しています。