【米大統領選2024】 トランプ前大統領の出馬、収監回避が目的なのか
サラ・スミス北米編集長

画像提供, US Pool
2020年米大統領選をめぐり四つの罪で起訴されたドナルド・トランプ前大統領が、自分がこの先収監されるかもしれないことをはたしてどれくらい、心底心配しているのかを知るのは不可能だ。
トランプ前大統領は「左翼の魔女狩り」のせいで、合わせて561年の禁錮刑に処される可能性があると主張している。大げさに聞こえるが、現在直面している三つの刑事裁判のいずれかで有罪となれば、おそらく実刑判決を受けるだろう。
出廷時はほとんど何も語らないトランプ前大統領だが、法廷外で世論に訴えかける時には冗舌になる。12人の陪審員ではなく、数千万人の有権者による評決を期待している。法廷ではなく投票箱に届けられる評決だ。
7月28日にアイオワ州デモインで開かれた共和党の会合では、2024年米大統領選の共和党候補指名を争う、知名度の低いウィル・ハード元下院議員(テキサス州)がブーイングを浴びた。トランプ前大統領が出馬した唯一の理由は、刑務所から逃れるためだと発言したからだった。しかし、ハード氏の主張は完全に間違っているのだろうか。
前大統領はすでに、自身の選挙キャンペーンと法的問題を密接に織り交ぜている。
自身が直面する起訴を選挙キャンペーンの主要な柱としている。演説では支持者に対し、起訴されたのは政界の既成勢力、あるいは「ディープ・ステート」(闇の政府)が自分の再選を恐れているからだと語っている。
資金集めのための電子メールには、こう書いている。「これらの違法な迫害行為が成功し、法律に火をつけることが許されるのなら、私に対する動きにはとどまらないだろう。彼らの支配は、あなたたち(原文では大文字で強調)をさらにきつく締め付けるだろう」。
トランプ前大統領はすでに、選挙活動に対する寄付金から少なくとも4000万ドル(約57億円)を、裁判費用の支払いに充てている。
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前大統領はまた、いかなる評決や判決も自分の選挙キャンペーンを停止することはできないと明言している。そうせざるを得ないなら、獄中から続けるとしている。
仮に当選すれば、大統領職権を行使して進行中の起訴事案を握りつぶしたり、有罪となった場合には自らに恩赦を与えたりするだろう。
一方で、大統領選に出馬して法的問題から逃れようとすれば、スケジュール上の悪夢が生じることになる。
すでにトランプ前大統領は、来週にニューハンプシャー州で選挙戦イベントを開催すると発表している。その2日後には、遠く離れたフロリダ州で法廷審理が行われる。
ホワイトハウスから持ち出した機密文書をめぐり、新たに加えられた3件の罪状に関する審理だ。ただ、前大統領は出廷しなくてもいい。

しかし、2024年3月にニューヨークで、同年5月にフロリダ州で、そして今後設定される日程においてワシントンで審理が開始されれば、最後まで出廷を求められる。
自家用機を自由に使える立場の人であっても、裁判と並行して選挙活動を行うのは難しいだろう。
これまでのところ、トランプ前大統領は起訴されるたび、世論調査の支持率は上がり、共和党における支配力も強まっている。
だが、本選挙に突入し、前大統領が共和党内のライバルとではなく、ジョー・バイデン氏(民主党)と対決する段階になれば、話は違ってくるかもしれない。
さらに、毎日のように法廷で前大統領に不利な証拠が公開されるようになれば、また違うだろう。
とはいえ、議論のテーマを設定するのは、またしてもトランプ前大統領だ。
そしてその議題すべてを、彼自身にしようとしている。
トランプ前大統領の裁判で街が騒がしいときに、経済政策の議論に耳を傾ける人などいないだろう。












