【解説】 トランプ前大統領の3度目の起訴、なぜこれまでより深刻なのか
サラ・スミス北米編集長

画像提供, Getty Images
米連邦議会への襲撃は「うそを燃料としていた」。米司法省のジャック・スミス特別検察官は、短い記者会見でそう述べた。ドナルド・トランプ前大統領がついたうそのことだ。
45ページに及ぶ詳細な起訴状は最初から最後まで、「不誠実」というテーマを繰り返し強調している。「選挙不正に関する数多くのうそ」を取り上げ、「これらの主張は虚偽であり、被告は虚偽だと知っていた」としている。
裁判所で審理が始まれば、明らかにこれが重要なテーマとなるだろう。ただ、有罪判決につながるのかは不明だ。一部の法律専門家は、これは最強の起訴内容ではないと話す。
しかしこれらの罪状は、トランプ前大統領がこれまでに直面した中で最も深刻で、最も重大な結果をもたらし得るものだと私は見ている。彼が現職大統領だったときに起きたことに関係していることを考えれば、なおさらだ。
3月のニューヨークでの起訴は、彼が大統領になる前に、ポルノ女優ストーミー・ダニエルズ氏への口止め料の支払いを隠すため、業務上の詐欺を働いたという疑惑に絡むものだった。マール・ア・ラーゴの邸宅に機密文書を置いていたことをめぐる連邦レベルの起訴は、彼が大統領を退任した後の出来事に関するものだ。
しかし今回の起訴は、2020年大統領選挙の結果を覆そうと共謀したというもので、彼がまだホワイトハウスに住んでいた時に起こったことが中心となっている。大統領だった間に、国民に繰り返しうそをついていたというのだ。
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今回の起訴は、他の起訴では見られなかった現実的な影響も含んでいる。2021年1月の連邦議会襲撃における暴力は、誰もが目にした。スミス特別検察官は、暴徒を扇動した罪でトランプ前大統領を起訴することは避けた。しかし記者団への声明で、関連性があると見ていることを明確にした。
アメリカのコメンテーターらは、今回の起訴が最も深刻だと考える、もう一つの理由を語っている。前大統領がしたとされる行為が、アメリカの根幹を支えている理想を脅かすものだと感じているのだ。
米紙ニューヨーク・タイムズのピーター・ベイカー記者は、「議会における暴力につながるような偽りと脅迫を入念に計画することで権力を保ち続けようとしていると非難され、議決によって退任に追い込まれた」大統領は、建国以来一人もいないと書いている。
そのうえで、「口止め料や機密文書も深刻ではあるが、4カ月間で3度目となった今回の起訴は問題の核心に迫るものだ。アメリカの民主主義の将来を決めるものになる」とした。
スミス特別検察官も起訴状で、同様の主張を展開。前大統領について、「不信と怒りの張り詰めた雰囲気を全国で作り出し、選挙管理に対する国民の信頼を損なった」とした。
だが、こうしたことを有権者は気にするのだろうか?
「信仰」は揺らぐのか
私はアメリカ全土で、数えきれないほど多くのトランプ前大統領の支持者たちに会ってきた。そうした人たちは本当に、前大統領がジョー・バイデン氏より多くの票を獲得し、だまされて退任に追い込まれたと信じているように見える。
これは、前大統領の支持基盤を強固にしている信仰のひとつだ。
これらの人たちは、前大統領が選挙不正の証拠がないと知っていたことを示す詳細な証拠について耳にしたとき、どう反応するのだろうか? 前大統領が信頼する側近たちから、選挙に負けたと繰り返し聞かされていたと知ったときには、どんな反応を示すのだろうか?
支持者たちの信仰は、検察が法廷に持ち込む証拠の重さに持ちこたえられるのだろうか?
スミス特別検察官は、迅速な裁判を求めるとしている。となると、次の大統領選の真っただ中に、裁判が開かれる可能性もある。トランプ前大統領は今も、共和党の大統領候補選びで大差をつけてトップを走っている。
これはつまり、有権者たち(前大統領の支持層だけでなく、穏健な共和党員や鍵を握る無党派層も)が、前大統領の復帰のために一票を投じるよう頼まれる一方で、彼の「不誠実、不正、偽り」に関する疑惑の詳細を聞くことになることを意味している。
トランプ前大統領が関係する出来事を「前代未聞」と表現するのは、あまりに陳腐だ。
しかし、米大統領候補が再選を目指して選挙運動を展開すると同時に、前回の選挙結果を覆そうとしたとして起訴されるという見通しを表現するのに、他にどんな言葉があるだろうか?











