トランプ氏起訴、米大統領経験者で初 元ポルノ女優への「口止め料」めぐり

画像提供, Getty Images
アメリカのドナルド・トランプ前大統領(76)が、2016年大統領選挙直前に元ポルノ女優に「口止め料」を支払った問題をめぐり、起訴された。検察当局が30日、明らかにした。同国で大統領経験者が起訴されるのは初めて。
ニューヨーク・マンハッタン地区検事アルヴィン・ブラッグ氏の事務所は、トランプ氏の「出頭を調整する」ため、同氏の弁護士に連絡したことを明らかにした。罪状は明らかにしていない。
トランプ氏をめぐっては、2016年大統領選まで2週間を切った時期に、当時の顧問弁護士マイケル・コーエン氏に指示して元ポルノ女優ストーミー・ダニエルズ氏(本名ステファニー・グレゴリー・クリフォード)に13万ドルを支払い、トランプ氏との不倫とされる関係について発言させないようにした疑惑が持ち上がっており、捜査が進められてきた。
口止め料の支払いを担当したとされるマイケル・コーエン弁護士は2018年12月、選挙資金法違反を含む複数の罪状を認めて有罪となり、禁錮3年の実刑判決を受けた(すでに刑期終了)。トランプ氏は2018年5月、自分の顧問弁護士がポルノ女優に払った口止め料を返済したと認める発言をツイッターでしていた。
検察に起訴を勧告する役割をもつニューヨーク州の大陪審(無作為に選ばれたニューヨーク市民23人で構成)が、この事件を1カ月以上にわたり審理してきた。評決により、トランプ氏を起訴すべきだと決定した。
トランプ氏は現在フロリダ州在住。初出廷と罪状認否のため、近くニューヨーク市に移動するとみられる。BBCが提携する米CBSは関係者2人の話として、トランプ氏が週明け4月3日にニューヨーク市に移動し、4日に出廷の予定だと伝えた。
トランプ氏は不正行為を一貫して否定し、捜査を政治的な「魔女狩り」だとしてきた。
「無実の人を起訴」と反発
トランプ氏は30日夜、声明を出し、捜査に当たってきたニューヨーク・マンハッタン地区検事のブラッグ氏(民主党)を激しく非難。「恥ずべき」検事だとし、「ジョー・バイデン(大統領)の汚れ仕事を手がけている」と批判した。
また、「民主党は『トランプを捕まえよう』という強迫観念にかられ、うそをつき、ごまかし、盗みをはたらいてきた。そして今回、考えられないことをやってのけた。全く無実の人物を露骨な『選挙干渉』行為で起訴したのだ」と主張した。
トランプ氏の弁護士スーザン・ネクレス氏は30日夜に声明を出し、トランプ氏が起訴されたことを認めた。
ネクレス氏は、「彼はなんの犯罪も犯していない」、「私たちはこの政治的起訴に法廷で激しく争う」とした。
週明けに出廷か
来週にも予定される前大統領の初出廷では、罪状認否が予定される。手続きは10~15分程度で、起訴内容が読み上げられる。出廷の際には、現元大統領の警護を担当するシークレットサービスが警護に当たる予定。
トランプ氏は、刑事事件のすべての被告と同様、指紋を採取され、顔写真を撮られる見込み。
重罪で起訴された被告は通常、一時的に手錠をかけられる。だがトランプ氏の弁護団は、そうした事態を避けようとすることが予想される。
起訴手続きが完了し、担当する判事が決まれば、裁判の日程や渡航制限、保釈の条件などの詳細も続いて決定される。
軽犯罪で有罪とされた場合は、罰金刑で済む。しかし、重罪で有罪となれば、最長4年の禁錮刑を受ける。
法律の専門家らは、トランプ氏は罰金刑となる可能性が大きく、禁錮刑はほぼないだろうとみている。
<関連記事>

ダニエルズ氏がツイート
トランプ氏側から支払いを受けたとされるダニエルズ氏は、トランプ氏が現在の妻メラニア氏と結婚した翌年の2006年に、ネヴァダ州タホ湖のホテルでトランプ氏と性的関係をもったと話している。

ダニエルズ氏はトランプ氏の起訴を受け、「みなさんの応援と愛に感謝する」とツイート。グッズやサインの注文が「殺到している」とした。
トランプ氏の元弁護士のコーエン氏は法廷で、「前大統領と調整し、指示を受けて」13万ドルの解決金を支払ったと証言している。コーエン氏は選挙資金法違反など複数の罪状で有罪となり、2018年から2020年まで収監されていた。
こうした事案での金銭の支払い自体は合法だが、トランプ氏はそれを事業費として計上したとされる。事業記録の改ざんはニューヨーク州では違法だ。ただ、トランプ氏がそれを理由に起訴されたのかは不明。
与野党の反応
トランプ氏は現在、2024年大統領選の共和党候補指名争いで先頭を走っている。
アメリカの法律では、犯罪に問われて有罪とされた人物でも、大統領選に立候補して選挙運動ができ、当選すれば職務に就ける。これは刑務所に収監されていたとしても同じだ。
トランプ氏の選挙運動チームは30日夜、起訴について伝え、寄付金を募るメールを送信した。
議会共和党の最高幹部らは、そろってトランプ氏への支持を表明している。
トランプ政権で副大統領を務めたマイク・ペンス氏は、起訴は「暴挙」で、「国に対する大きな不利益」だとCNNの番組で述べた。
ペンス氏は同時に、抗議デモに打って出るよう国民に呼びかけるべき理由はないと指摘。トランプ氏について、「法廷で自分の面倒は自分で見られるはずだし、今はそれに集中すべきだ」と述べた。
ケヴィン・マカーシー下院議長は、「アルヴィン・ブラッグは、大統領選に介入しようとして、この国に回復不能な損害を及ぼした」と地区検事を批判。
「彼は日常的に凶悪犯罪者を自由にし、国民を恐怖に陥れている一方で、この国の神聖な司法制度を武器にしてドナルド・トランプ大統領を狙った」と述べた。
一方、民主党は起訴を歓迎。何者も法の上に立つものではないことを示したとした。
アダム・シフ下院議員は、「大統領経験者の起訴と逮捕は、米国史を通して類を見ないことだ。それと同時に、トランプ氏が嫌疑をかけられているような内容で、大統領経験者が不法行為を問われるなどという事態も、アメリカの歴史で類を見ない」とツイッターで書いた。
トランプ氏は、他のいくつかの事件でも捜査対象となっている。2021年1月の連邦議会襲撃事件での役割、2020年大統領選でジョージア州での敗北を覆そうとした取り組み、退任後の機密文書の取り扱いなどだ。
トランプ氏は2017~2021年の大統領在任中、下院で2度弾劾された。上院ではいずれも無罪となった。








