【解説】 トランプ氏支持者、なぜ今回は抗議の呼びかけに慎重なのか

マイク・ウェンドリング、BBCニュース

A small group of Trump supporters rally near the former president's Mar-a-Lago Club in Florida on Tuesday

画像提供, Getty Images

画像説明, フロリダ州にあるトランプ氏の私邸兼リゾート施設「マール・ア・ラーゴ」付近では、小規模なトランプ氏支持者らの集会が開かれた(21日)

アメリカのドナルド・トランプ前大統領が、近く刑事訴追される可能性があるとして抗議デモを呼びかけたことを受け、主要都市では警察が騒ぎに備えている。だが、トランプ氏の熱烈な支持者の間でさえ、今回はじっとしていようとの空気が広がっている。

この食い違いは、インターネットの親トランプ派の空間を調べると納得がいく。

主要なソーシャルメディアやメッセージアプリ、トランプ氏自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」では、うわさが渦巻いている。

その内容は、二重スパイと「偽旗」作戦(敵に暴力の責任を負わせるための攻撃)に関するものだ。

トランプ氏の強固な支持者の多くは、2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃について、トランプ氏の支持者や「プラウド・ボーイズ」、「オース・キーパーズ」などの極右団体ではなく、トランプ氏の信用低下を狙った連邦捜査官や左翼の「アンティファ」(反ファシスト活動家)が引き起こしたと考えている。

その根拠として、当日の群衆の中に連邦捜査局(FBI)関係者がいたとする、裁判文書を挙げている。

しかしそれは、連邦当局が暴力の誘発を図ったということにはならない。そうした証拠はなく、議会襲撃に関連して逮捕された1000人以上がトランプ氏支持者だったという膨大な証拠がある。それでも、非主流のニュースサイトは「ディープ・ステート」(闇の政府)の陰謀だとする乱暴な推測と示唆をどんどん発信している。

その一部は、FOXニュースなどの主流メディアが取り上げるまでになっている。

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Presentational white space

ただ、トランプ氏逮捕の可能性に抗議して街頭に出そうな人たちの多くは、今回はうわさや、議会襲撃の再現となることへの懸念から、抗議行動を思いとどまっている。

議会襲撃に至った抗議行動を組織した極右活動家アリ・アレクサンダー氏は、抗議行動の予定はないと表明。陰謀論者でウェブサイト「インフォウォーズ」を所有するアレックス・ジョーンズ氏についても、自宅でじっとしているとツイートした。

トランプ氏への忠誠で知られる共和党のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員(ジョージア州)は、トランプ氏逮捕に対する抗議デモを連邦機関が暴力的なものにしようとしているとして懸念を表明した。

消極姿勢の背景

トランプ氏支持派のフェイスブックのグループや、テレグラムのチャンネル、「4chan」などのサイト、トゥルース・ソーシャルでも、同様の空気が広がっていた。

「QAnon(Qアノン)」と呼ばれる極端な陰謀論に関する著書のあるマイク・ロスチャイルド氏は、「私が見た抗議行動に関する発言のほとんどは、FBIがうようよしているとか、ディープ・ステートが偽旗作戦によって『平和的な抗議者』を悪者に仕立てようとしているなどといったものだ」と話す。

ロスチャイルド氏によると、ニューヨークの共和党グループが20日に行った抗議デモには、数十人しか参加しなかったという。

「逮捕されることへの恐怖もあれば、議会襲撃の時にいたようなトランプへの狂信的な献身さを示す人が少なくなったということもあるだろう」

トランプ氏は今回、議会襲撃とは対照的に、抗議行動の場所やタイミングを具体的に示していない。

対立相手への暴力が話題に

一方で、トランプ氏の対立相手に対する暴力の話が盛り上がっているとの指摘もある。超党派の調査団体「アドヴァンス・デモクラシー」は、トランプ氏が18日に逮捕されると明言し、支持者に抗議デモを呼びかけて以降、トゥルース・ソーシャルでの暴力への言及が3倍に増えたとしている。

警察当局は、そうした脅威や大規模抗議デモの可能性を、真剣に受け止めているようだ。

ニューヨークの警察は、トランプ氏の逮捕が想定される裁判所の周辺警備を強化している。米紙ロサンゼルス・タイムズによれば、ロサンゼルスの警察は21日に連邦ビル前で行われるトランプ氏支持派の抗議デモに備えている。

首都ワシントンの警察は、トランプ氏支持派の抗議デモに関する具体的な情報はないとしている。だが、騒乱に対応する警官らは待機しているという。

トランプ氏は25日、テキサス州中部ウェイコで集会を予定している。同市では1993年、キリスト教系カルト教団とFBIの間で銃撃戦があり、教団メンバー82人と連邦捜査官4人が死亡した。この事件は、反政府・反警察を掲げるグループがよく取り上げる出来事となっている。