ロシアのウクライナ侵攻、正確な死者数は BBCが検証
サラ・ヘイバーション、ロブ・イングランド、ベッキー・デイル、オルガ・イヴシナBBCニュース

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ロシア軍が攻勢を強めるウクライナ東部で犠牲者が増えている。ルハンスク州リシチャンスク市では、ロシアの空爆で、空爆を行い、被弾した建物に隠れていた4人が死亡した。近隣のセヴェロドネツク市ではロシア軍による砲撃が丸1日続き、さらに2人が犠牲になった。ウクライナ軍がドネツク市郊外を空爆した際には、1人が死亡した。さらに、北東部スーミ州サディウスカでは、ロシア軍の砲撃で4人が亡くなった。
これらの攻撃は先月、たった1日の間に起きた。そして、犠牲者全員が民間人だったと考えられている。
政治的暴力を記録しているアメリカの非営利調査団体ACLEDのデータをBBCニュースが分析したところ、冒頭で書いたような民間人死者は、2月24日の侵攻開始以降ウクライナで記録された死者の3割以上を占めていることが分かった。
記録されている死者の総数は、実際の死者数よりも著しく過小評価されている可能性が高いと、複数の専門家が指摘している。
ウクライナとロシアは共に、死者数は数万人に達していると主張している。しかし、双方の言う人数は一致していないし、独立した検証もできていない。
この戦争における人的損失を理解するには、国連や各国政府、独立監視機関など、複数の情報源のデータを見る必要がある。
どこで人が死んでいるのか
この地図は6月中旬までの時点で、死者が報告された場所を示している。
ウクライナ南部と東部地域や、主な地上侵攻が始まったロシアとの国境沿いが暴力行為の矢面に立たされているのがわかる。
このデータはACLEDによるもので、ウクライナ国内での武力衝突や空爆などの暴力行為の発生とその場所について、地元メディアやパートナー組織の確認が取れた時点でカウントしている。つまり、死者数をほかの情報源よりも控えめに見積もっている。
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ACLEDは侵攻開始以降のウクライナでの総死者数を1万人以上と報告している。
特に多くの死者数が確認されているのは、南東部マリウポリや北東部ハルキウ、東部ビロホリウカなど。
何人の民間人が死亡したのか
戦闘が激化する中での情報確認は困難なため、ACLEDと国連はいずれも、これらの人数は実際の死者数を大きく下回っていると説明している。
国連は、警察や病院などの市民記録をもとに死者1人1人を確認している。
一方でACLEDのデータに含まれている死者は、確認されている特定の出来事と関連するものに限定されており、飢餓や医療不足など戦争が直接の死因ではない人は含まれていない。


こうした死者の集計方法は、マリウポリのように長期間ロシア軍に包囲され、多くの民間人が閉じ込められていた場所に関しては特に重要と言える。
「(確認された死亡者数に加えて)少なくとも3000人の民間人が、包囲された都市や戦闘が続く都市で医療を受けられず、敵対行為による健康へのストレスが原因で死亡したと推計している」と、ウクライナの国連人権監視団のマティルダ・ボグナー団長は指摘する。
民間人はどう殺されているのか
国連の報告や、ACLEDのデータをBBCニュースが分析したところによると、ウクライナの民間人の主な死因は砲撃と空爆だ。
ただ、1000人近い民間人が至近距離からの攻撃で死亡している。その多くはウクライナの首都キーウが包囲された時期に確認されていると、ACLEDのデータが示している。
戦争に関する国際法のジュネーヴ条約などでは、民間人や、生存に不可欠なインフラを故意に攻撃することは戦争犯罪とされている。
ウクライナの検事総長は、民間人を直接標的にするなど、ロシアが何千件もの戦争犯罪を犯していると非難している。
ロシア側はこうした指摘をすべて否定している。
何人の兵士が死亡したのか
死亡した兵士の数は、戦争が双方にとってどのように進んでいるかを物語る機密情報にあたると、死傷者数の記録を行う団体「Every Casualty Counts」のギャヴィン・クロウデン氏は言う。
「このことを、(ロシアとウクライナの)双方は非常に意識している」
ウクライナ側は、この戦争で死亡した兵士の総数を公式に発表していない。
しかし、6月上旬、ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領顧問はBBCニュースに対し、ドンバス地方で毎日100〜200人のウクライナ兵が死亡していると語った。
ロシアは4月、約2万3000人のウクライナ兵を殺害したと主張した。

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ロシアは自軍の死者数をほとんど公表していない。
前回の公式発表は3月25日で、侵攻開始以降1351人のロシア兵が死亡したとしていた。
英政府は4月、約1万5000人のロシア兵が死亡したと発表した。
ウクライナは定期的にロシア側の死者数を発表しており、6月下旬の時点で約3万5000人が死亡したと主張している。
これらの主張はいずれも検証できていない。
国連は、紛争当時者が発表する数字は信用できないとしている。


しかし、少なくとも4010人のロシア兵が死亡していることをBBCニュース・ロシア語が独自に検証した。BBCニュース・ロシア語は侵攻開始以降に死亡した兵士の名前を記録している。
死亡が確認された人のうち685人が将校で、4人が将軍だった。
大半は、下士官や一般の兵士だった。


遺体がロシアに送還された兵士については、国営メディアやソーシャルメディア、地元当局の公式報告、兵士を知る人々への聞き取りを通じて名前が特定されている。
ウクライナに遺体が残っている、あるいは今も身元が判明していないロシア兵の数は分かっていない。
「戦争は毎日、何十人もの民間人の命と戦闘員の命を奪っている」と、ウクライナの国連人権監視団のボグナー団長は言う。
「人の命は大事だと言うなら、犠牲者の数字が状況をおのずと物語っている」
(追加データ・ジャーナリズム:ヤナ・タウシンスキ、リビー・ロジャース/追加取材:カテリナ・キンクロワ)









