ミサイル攻撃されたマリウポリの劇場、死者は推定300人=市当局 ウクライナ侵攻30日目

ロシアのミサイル攻撃で大破したマリウポリの劇場

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ロシア軍による包囲攻撃が続くウクライナ南東部マリウポリで、16日にミサイル攻撃を受けた劇場の死者は推定300人に上ると、市当局者が25日、明らかにした。ロシア軍幹部は同日、ウクライナにおける「特別軍事作戦」の第一段階が完了したと発言した。他方でウクライナの外相は、ロシアとの和平協議に進展がないと述べた。

港湾都市マリウポリの副市長顧問、ペトル・アンドリュシェンコ氏はBBC番組に対して、ロシアのミサイル攻撃前には600人近くが劇場内にいたと話した。劇場地下のシェルターには約300人が避難していたという。劇場には女性と子どもを中心に数百人が避難していたとされ、建物の近くの地面には2カ所、空からも分かる大きさのロシア語で「子供たち」と書かれていた。

劇場周辺で戦闘が続き、ロシア軍の爆撃も続いていたため、市当局は救助作業を開始できずにいた。

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アンドリュシェンコ氏によると、市当局はミサイル攻撃の前に劇場内にいた人たちの名簿を持っており、攻撃後には生存者の安否を確認し、何人が助かった確認したため、約300人が死亡したのは確かだという。

市中心部では戦闘が続いているものの、ロシア軍はマリウポリを完全制圧はしていないと、アンドリュシェンコ氏は話した。

mariupol theatre
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Mariupol theatre

ロシア軍はマリウポリを制圧することで、ロシアが後押しする分離派が実効支配するウクライナ東部のドンバス地方と、ロシアが2014年に併合したクリミア半島を一気につなぐことができるほか、黒海に面するウクライナ南岸の8割を支配下に収めることになる。そのためこの港湾都市は、ロシアにとって極めて重要な戦略上の要衝となっている。

マリウポリの集団墓地に約200人、全土で民間人1000人以上死亡=国連

マリウポリ陥落はロシア軍の士気にとっても重要な成果となるだけに、ロシア軍は民家にも激しい爆撃を展開している。

国連は民間人への被害の規模を把握しようとしており、ウクライナ人権監視団のマチルダ・ボグナー団長は25日、「衛星情報を得たひとつの集団墓地について、約200人が埋葬されていると推定している」と明らかにした。ただしその全員が民間人かどうかは分からないとした。

マリウポリのウクライナ軍司令官たちはこれに先立ち、マリウポリの死者数は3000人以上に達するおそれがあると述べていた。砲撃で死亡した人の遺体は多くが、収容することも危険なため、路上に放置されており、やがて集団墓地に埋められている。

ボグナー氏はさらに、ウクライナ全土ではロシアの侵攻開始以来少なくとも1035人の民間人が戦闘で死亡し、1707人が負傷したと明らかにした。ただし、戦地での情報を入手して確認するのが困難なため、実際の人数はこれより「かなり多い」はずだという。

「第一段階」完了=ロシア軍幹部

Russia positions
Presentational white space

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が「特別軍事作戦」と呼ぶウクライナ軍事侵攻の開始から1カ月たった同日、ロシア軍のセルゲイ・ルドスコイ第1参謀次長はモスクワで記者会見し、作戦の「第一段階」はほぼ完了したと発表した。

ルドスコイ将軍は、ロシア軍は今後「ドンバスの完全解放」に注力していくと述べた。ドンバスとは、ウクライナ東部でロシアが後押しする分離派が実効支配する地域のこと。

ロシア軍は、一方的な独立宣言をロシア政府が承認した「ドネツク人民共和国」および「ルガンスク人民共和国」と、ドンバス地域でもウクライナが支配する地域との境界線を、さらに西へ移動させようとするものとみられる。

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ロシア軍の死者1351人、負傷者3825人=ロシア国防省

ロシア国防省はこの日、ウクライナでの自軍の戦死者は1351人、負傷者は3825人と発表した。国営RIAノヴォスチ通信が伝えた。ロシア政府がウクライナでの犠牲者数について発表するのは、開戦以来2度目。前回の公式発表は3月2日で、ロシア兵498人が死亡したというものだった。

ウクライナ軍筋はこれまでに、ロシア軍の死傷者は1万5000人に上ると推測していた。米情報機関は、死者数はその半数だろうとみていた。

3月21日にはロシア政府寄りのコムソモリスカヤ・プラウダ(KP)紙が一時、ウクライナ侵攻によるロシア軍の死者は9861人に上るとする記事を掲載していた。記事中のこの表記は後に削除され、KPの編集者はBBCに対して、この数字を掲載したのはハッキングされたからだと話していた。

和平協議に進展なし=ウクライナ外相

ウクライナのドミトロ・クレバ外相は同日、ロシアとの和平交渉は困難だと述べ、主要課題6点のうち4点について進展があったとする一部報道を否定した。

ロシア側の交渉団はこれに先立ち、交渉は副次的な課題については妥結に近づいていると発言。仲介役を務めるトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領も、協議に進展があったと述べていた。

しかしこれについてクレバ外相は、「4つの点についてロシアと合意はない」とフェイスブックに書いた。「交渉プロセスは非常に困難だ。ウクライナ代表団は確固たる姿勢で臨んでおり、要求を撤回していない。我々は何もよりもまず、停戦と安全の保証、ウクライナの領土一体性の保全が不可欠だと主張している」。

外相はさらに後に、「交渉ではまだ合意は得られていない」とツイートし、「ロシアは最後通牒(つうちょう)にこだわっている」と不満をもらした。外相は加えて、「もっと建設的な姿勢を引き出すため我々が必要なのは2つ。追加制裁と、ウクライナへの軍事支援拡大だ」とも書いた。

バイデン米大統領、ポーランドの米軍基地へ

ウクライナとの国境に近いポーランド南東部の米軍基地を訪れたバイデン米大統領(25日、ポーランド・ジェシェフ)

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北大西洋条約機構(NATO)首脳会議などのためベルギー・ブリュッセルを訪れていたジョー・バイデン米大統領は同日、ウクライナ国境に近いポーランド南東部ジェシェフの米軍基地を訪問した。

NATO加盟国のポーランドには、米陸軍の第82空挺(くうてい)師団が駐留している。師団の兵士たちに大統領は、「君たちは世界史上最も優れた戦闘部隊だ。君たちがしていることは、きわめて重要な意味を持つ」と語りかけた。

大統領は兵士たちと並んで座り、「みんなが食事をするなら、僕もそうしよう」と、雑談しながら一緒にピザを食べた。口にしたペパロニとハラペーニョのピザが辛かったためか、ナプキンで目元をふくなどした。

米兵たちと共にピザを食べたバイデン米大統領(25日、ポーランド・ジェシェフ)

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ポーランドでバイデン氏はマリウシュ・ブワシュチャク国防相などと会談した。アンジェイ・ドゥダ大統領を乗せてジェシェフへ向かっていた飛行機が機械不良のため、いったん首都ワルシャワへ戻ったものの、ドゥダ大統領は無事という。

両大統領は26日にも会談する予定。

バイデン氏はさらに、ウクライナからポーランドに入った200万人以上の避難民とポーランドの対応について、説明を受けることになっている。

ポーランド南東部の米軍基地を訪れたバイデン米大統領

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バイデン大統領のポーランド訪問に合わせて、ワルシャワでは米軍幹部が匿名で記者説明を行った。その主な内容は次の通り。

  • 開戦当初にロシアが制圧した南部ヘルソンを、ウクライナ軍が奪還する可能性がある
  • ロシアは開戦から30日間で1250発のミサイルを発射した
  • ロシアは軍用機の飛行回数を増やしており、最近の飛行回数は1日平均300回
  • ロシア占領下の南東部ベルディヤンスクでウクライナ軍がロシア軍の戦車を運ぶ揚陸艦を破壊したという情報を、米政府としても確認
  • 首都キーウ周辺のロシア軍は位置を固めており、地上部隊が首都侵攻の準備をしている様子はみられない
  • キーウ西郊のマカリウで両軍の戦闘が激化している
  • 北東部ハルキウでロシア軍が前進している様子はない
  • 南部ヘルソンに近い南西部ミコライウから15キロ離れた地点にロシア軍部隊が駐留し、ミコライウへの物資補給路を断とうとしている
  • ロシア軍は東部イジウム近くでウクライナ軍を突破し、ドンバス地方へ向けて南進した

ロシア国営テレビで抗議の編集者には罰金刑

Anti-war protest on Channel One

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画像説明, 看板ニュース番組の最中にキャスターの背後で抗議したオフシャニコワさんは、直後に逮捕された

一方、ロシア国営テレビで14日夜の生放送中に反戦のプラカードを掲げたジャーナリスト、マリナ・オフシャニコワさんは、厳しい刑事罰を免れ、行政法違反で5万ルーブル(約6万円)の罰金刑を科せられた。

オフシャニコワさんはすでに、放送中の抗議の前にソーシャルメディアに投稿した反戦メッセージ動画について、3万ルーブルの罰金を科せられていた。看板ニュース番組の最中に抗議したオフシャニコワさんは、直後に逮捕され、14時間にわたる事情聴取を受けた。

ロシアでウクライナ侵攻後に成立した改正刑法では、ロシア軍について「偽情報」を広めると最高15年の禁錮刑が科せられることがあるため、オフシャニコワさんへの処罰がどのようなものになるのか、広く懸念されていた。

独立系メディア「メドゥーサ」に対してオフシャニコワさんは、「刑事罰の対象にならないのは、ありがたい。おかげで私は引き続き、真実のために闘い続けられる」と述べた。